近年、Jリーグではシーズン途中の戦力流出、すなわち、夏の海外移籍が頻発している。 それがどの程度事前に見込まれていた…

 

 近年、Jリーグではシーズン途中の戦力流出、すなわち、夏の海外移籍が頻発している。

 それがどの程度事前に見込まれていたかは、それぞれのケースで事情が異なるだろうが、いずれにせよ、クラブにとって大きな痛手であることは間違いない。

 今季は新型コロナウイルス感染拡大の影響でヨーロッパの移籍市場も動きが鈍く、それほど影響は受けないかに思われたが、決して例外とはならなかった。

 この夏、海外移籍が相次いだのは、FC東京。しかも、MF橋本拳人、DF室屋成と、現役・日本代表クラスの連続流出である。その穴を埋めるのは容易ではないだろう。

 というより、簡単に埋められないからこそ、彼らは日本代表選手なのである。

 橋本はJ1第5節、室屋は同第10節での出場を最後にクラブを離れたが、J1で現在3位につけるFC東京に、成績が降下した様子は見られない。

 しかしながら、シーズンは折り返し地点を過ぎたばかりで、先は長い。厳しい残暑のなか、中2、3日での連戦が続いたJ1第24節の大分トリニータ戦は、ピッチ上に空いた穴の大きさを、改めて思い知らされる試合だったのではないだろうか。

 この試合は、FC東京がAFCチャンピオンズリーグとの日程重複を避けるため、変則的に前倒しで行なわれたものである。いわば、急遽組まれた予定外の試合だった。

 そんな試合にFC東京は、20歳以下の3選手、右サイドバックのDF中村拓海(19歳)、右センターバックのDF木村誠二(19歳)、アンカーのMF品田愛斗(20歳)を同時に先発出場させた。単純にポジションで言えば、室屋の穴を担当するのは中村拓、橋本の穴は品田である。

 この試合を前に、3人のJ1通算出場試合数は全員分を足して、ようやくふた桁。まだまだ経験に乏しい若い選手たちだったが、過密日程とチーム状況を考慮すれば、やむを得ないところだっただろう。

 試合結果を言えば、FC東京は2-3で敗れた。U-20トリオにしても、無難に役割をこなしてはいたが、軽率なプレーでボールを失ったり、前にボールを持ち出してほしい場面でためらったりと、やはり物足りなさがあったのも事実だ。



よくも悪くも目立っていたFC東京の品田愛斗

 とりわけ、よくも悪くも目立っていたのが、アンカーの品田である。

 前半こそ低い位置にとどまり、セーフティーなパスを出すことが多かったが、1点を先制されて迎えた後半16分、バイタルエリアに立つMFアルトゥール・シルバに絶妙な縦パスを打ち込むと、そこからFW永井謙佑、レアンドロとつながり、同点ゴールが生まれた。

 落ち着いた状況判断が生んだ貴重なゴールを、品田が振り返る。

「最初は浮き球で(相手の)DFとGKの間に落とそうと思ったが、一瞬ギャップができて、ゴロで通せると思った。(アルトゥール・シルバの周りにいた)永井選手とレアンドロ選手の立ち位置の関係も見えていた」

 だが、その一方で、20歳のMFは痛恨のミスも犯している。

 FC東京は、「(同点に追いつき)1-1になって、ホームなので、さらに畳みかけたいと4トップ(4-2-4)みたいな形にした。行って来いのなかで、先に(点を)取れてれば......」(長谷川健太監督)と勝負に出たが、右サイドを破られ、先に失点。それでも、まだ1点差なら試合の行方はわからなかった。

 ところが、そこで起こった品田のミスが「3点目の失点の起点になった」(長谷川監督)。

 後半40分、相手のロングボールを拾った品田は、シンプルに前線へ蹴り出せたはずだが、1点ビハインドの状況だけに、より確実につなぎたいとの思いがあったのだろう。

 小さく左へドリブルをし、少し時間を作ってから縦パスを出そうとした瞬間、相手にボールを奪われ、そのまま失点につながった。

 その後の品田は必死だった。ロスタイムを含めた10分あまり、自らのミスを取り返そうと、果敢に大分ゴールへと向かった。

 システム変更によりダブルボランチになっていたことで、品田が「あそこまでしっかり詰めることができた」と振り返ったのは、後半45分のシーン。FW田川亨介のシュートがGKに止められたボールを、勢いよく頭で押し込んだ。

 品田にとっては、記念すべきプロ初ゴール。だが、まだ1点負けているとあって、笑顔も見せずにゴールの中に転がるボールを拾うと、すぐに走って自陣へ戻った。

 試合終了直前にも、FW原大智のシュートがGKに止められたところに、体ごと飛び込み、あわや同点ゴールという場面を作っている。

 必死さと、そして拙さと、よくも悪くも20歳らしさが出ていた90分間だった。

「はじめはバランスをとっていた。(リードされて)行かなきゃいけないということで、ゴール前に積極的に入って行ったのではないか」

 試合後、長谷川監督が口にした品田評には、どこか物足りなげなニュアンスが含まれていた。

「元来、得点センスはある。自分らしさを出せばもっとよくなる」

 指揮官は、そんな言葉に期待も込めた。

 もちろん、数試合に出場したくらいで、すぐに先輩たちと同じレベルでプレーできるはずはない。橋本や室屋にしても、はじめから今のように堂々たる存在感を発揮できたわけではなかった。

 すぐに代わりは務まらない。だが、言い換えるならば、穴を埋めることを意識するより、今は自分にできることをやる。そして、それを続けていくしかないのだろう。品田はひとしきり反省の言葉を口にしてから、こう語る。

「アンカーは広範囲を守ることが求められるが、体力には自信がある。そこは監督からも評価されているのかなと思う。そこが自分の特徴だし、他の選手とは違ったアンカーの働きができると思う」

 記念のゴールよりも先に、失点に直結したミスを指摘した賢明な指揮官も、こんな言葉で品田を称えた。

「試合ごとに存在感を示してくれている」

 次代を担う若い力は、たっぷりの苦みと少しの甘みを味わいながら、日々成長中である。