全日本学生個人選手権(インカレターゲット)が、大阪府豊中市の服部緑地陸上競技場で開催された。大学生ナンバーワンアーチャーを決めるこの大会。早大からは計11人が出場し、17日に行われた決勝ラウンドには、予選を勝ち抜いた男子3名、女子4名が進…

 全日本学生個人選手権(インカレターゲット)が、大阪府豊中市の服部緑地陸上競技場で開催された。大学生ナンバーワンアーチャーを決めるこの大会。早大からは計11人が出場し、17日に行われた決勝ラウンドには、予選を勝ち抜いた男子3名、女子4名が進出した。男子は関東王者の棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)を含む実力者3名が、揃って1回戦で姿を消すという波乱の展開。悔しい結果に終わった。一方で輝いたのは女子陣。エースである中村美優主将(スポ3=北海道・旭川北)が、安定した行射を見せ2位。矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)も実力者相手に奮闘しベスト16に入るなど、早大が目標としてきた大舞台、18日に行われる全日本学生王座決定戦(王座)へ向け、弾みをつける結果となった。

 早大女子から決勝トーナメントに進出したのは中村、矢原に加え、初のインカレ出場となった高橋優(社2=岐阜・聖マリア女学院)、髙見愛佳(スポ1=東京・エリートアカデミー/足立新田)の4選手。早大は1回戦から中村と高橋が対戦するという不運にも見舞われ、高橋、髙見の2選手が初戦で敗れた。「(高橋と対戦した)1回戦が一番緊張したかもしれない」と語った中村は、その1回戦を勝ち上がると流れに乗った。9点、10点を連発する安定した行射でセットを取り続け、危なげなく駒を進める。迎えた準決勝では今大会で初めて相手に先制を許したが、乱れることはなかった。すぐに第2セットを取り返すと、3、4セットも連取。6-2で勝利し、決勝進出を果たした。しかし決勝では、風が強く吹く難しいコンディションのなか対応しきれず惜敗。中村にとっては手応えもあり課題もありと、実り多き大会となった。矢原は1、2回戦ともにオリンピック選考に残った実力者と対戦。そのなかで1回戦に勝利し、自信をつけた。「負けたけど手応えがあった」と語った矢原。王座でも、勝利への貢献に大きな期待がかかる。


準々決勝で中心を射抜き、笑顔を見せる中村主将

 男子からは市川遼治(スポ4=群馬・高崎商大付)、棚田、浦田大輔(基理2=東京・早大学院)の3選手が出場。中でも棚田は予選を全体3位の好成績で通過し、決勝でも活躍が期待された。迎えた1回戦、その棚田は1セット目から相手に得点を許す苦しい展開。「追われる立場に感じて攻められなくなってしまった」と語ったように、格下の選手相手にうまく流れをつかむことが出来なかった。2、4セット目は取り返したが、最終の5セット目を落とし惜敗。1回戦で姿を消すこととなった。合計点を競う予選ラウンドとは異なり、1対1のトーナメントで行われた決勝ラウンド。一発勝負の難しさを痛感する結果となった。市川、浦田の両選手も、ともに最終セットまでもつれる接戦の末1回戦で敗退。市川の試合はシュートオフでも同得点、中心への近さによって勝敗が決したという紙一重の争いだった。王座に向け、不安が残る結果となってしまった早大男子。この悔しさを糧に、王座では実力を発揮することを期待したい。


1回戦で敗退となり、肩を落とす棚田

 男女で明暗が分かれる結果となった早大。悔しさの残る選手も多く見受けられた。しかし、今年はインカレの翌日に団体戦である王座が行われるという変則日程。これまで照準を合わせてきた大会である王座は、この悔しさを晴らすにはうってつけの舞台だ。「チームを信じて頑張っていきたい」(中村)、「心強い4人で協力し合って優勝を目指したい」(棚田)と選手たちが語るように、チーム力には自信を持っている早大。目標の王座制覇へ、ついに勝負の時だ。

(記事 横澤輝、写真 山床啓太、朝岡里奈)

結果

▽男子RC 予選ラウンド

棚田 3位  657点

市川 18位 643点

浦田 46位 619点

中野 71位 597点

相木 89位 571点


※64位以内が決勝進出


▽女子RC 予選ラウンド

中村 4位  641点

矢原 16位 613点

髙見 26位 597点

高橋 29位 593点

高木 42位 578点

横塚 63位 545点


※32位以内が決勝進出


▽男子RC 決勝ラウンド

市川 ベスト64

棚田 ベスト64

浦田 ベスト64


▽女子RC 決勝ラウンド

中村 2位

矢原 ベスト16

高橋 ベスト32

髙見 ベスト32


コメント

遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)

――今日のトーナメントの結果を振り返っていかがですか

個人の戦いですので全体として、ということよりも一人ひとりのことかなと思っています。やはり一番大きいのは女子の主将の中村美優がメダルを取ってくれたことで、このことは彼女自身にとってモチベーションや次へのプレーに絶対繋がります。アーチェリーは1個の成功体験や試合の成績がそのあと、今までのレベルから上がるきっかけになったりするので、それはすごくありがたいです。さらにそれをチームメイトが一緒に体験していることで、「自分もやれる、自分もやらなきゃ」という自分の中での「これが当たり前、これぐらいやりたい、これぐらいできる」という意識に繋がると思うのでそれはすごく期待しています。そういう意味では大きな収穫が今日の個人トーナメントで得られたと思います。例年とは違う試合日程で、明日が団体戦になりますので、今日の中村も含めて最後は負けて終っているわけですよね。そう意味でいろいろな課題や悔しさも持ちながら明日にどう活かしてくれるのか楽しみです。

――昨日の予選の結果については振り返っていかがですか

関東(関東学生個人選手権)での、ここ(全日本学生選手権)に来るまでと比べると昨日のランキング乱動ですよね。ランキング乱動については必ずしも実力通りにいかず、悔しいだろうなと思います。そういう意味では、コロナの影響もあって今日、決勝トーナメントの会場入りできていない面々ですよね。それなりのレベルで残念ながらカットラインに届かなかったというのは、それはそれで仕方なかった、よくやったね、という話になりますが、たぶん自分自身が打てるであろう地帯に比べてだいぶ届かないという不本意な形の子も一方でいるのかなと思います。そこはそこで反省材料を見つけてほしいなと思いますね。基本的には競技でのうまくいった、いかなかったの話です。後付けで考えればいくらでも反省材料はあるんですけど、後ろ向きに捉えずに、もったいなかった何かをつぶすことで次の試合では、もったいなかった何かが出なくなり、自分がこれぐらいと思っているスコアがそのことによって上がります。昨日の総括で言うともう少し点数を出してその結果としてカットラインを通る人数ももう少しいてほしかったし、届かないなりにもせめて関東(関東学生個人選手権)で打っていた点数を服部緑地でも出してほしかったなという、そこのもったいなさがあります。その一方で、それは強烈に出ているはずなので、そこからもっと良くするためには何ができるか、という方向に転換してほしいなというのが僕としての思いですね。材料はそれぞれにあったのではないかと思います。

――昨日、できなかった人はいい反省材料として、そして今日の中村さんが結果を残したことが他の人にとっていい刺激になるということですね

そうですね。これが今日で大会終わりとなってしまうと、今日のモチベーションや刺激が、時間が経って薄れてしまうのですが、明日に強烈に仲間を意識する団体戦があるので今日の新しい材料を活かせるということで本当に明日が楽しみです。

中村美優主将(スポ3=北海道・旭川北)

――決勝を終えて今の気持ちは

 疲れたなという感じです。決勝の相手の大橋選手(朋花、近畿大学)はもともとU20で同じチームで、インターハイの決勝でも当たっていて、格上だと思って臨んだので、そんなに悔しかったなというよりかは、勝負できて良かったというか。でも自分が弱かったなという感じです

――決勝までの当たりが良かったようでしたが、調子はどうでしたか

 調子自体は普通だったんですが、風がやむか少し右から吹くかくらいで、真ん中を狙ってしっかり射つか少し右を狙って射つかというだけだったんですが、昼休憩を挟んでセミファイナルくらいから風が強くなったり方向が変わるようになってしまって、決勝は風がどちらから吹いているか分からないまま射ってしまったので、そこを改善できなかったのが残念だったという感じです。

――決勝では風が強かったですね

 風強かったですね(笑)。私の方がポンドも弱くて流されてしまったので、どうしてもふわふわっといっちゃいます。

――中盤では5点や6点も出ていましたが

 あの射はけっこう(クリッカーが)切れなくて、長いな切れないなと思いつつ、風もどっちから吹いているか分かんないなと思いながら射ったら、風に流されたという感じでした。

――昨日も調子は良かったのですか

 ここ(大阪)に来る前の最後の練習ですごく調子が良くて、来てからは毎日少しずつ風はあるんですがそのなかでも普通に射っていて、風が一定のなかだとエイムオフがうまくできていたので、そこそこかなと思っていました。

――今日の最初は高橋選手と当たりましたね

 昨日の平射ちが終わった時にすぐ教えてもらって、終わったーと思いました(笑)。トーナメントはもともと苦手なんですが、知り合いの部活の後輩とやるんだと思ってすごくどきどきしました。1回戦が一番緊張したかもしれないです(笑)。

――緊張はされましたか

 ここに来る前の練習が調子良くてその時に緊張したんですが、来てからは普通に射てたかなと。調子がすごくいいわけではなかったんですが、王座の予選だと思ったら普通にちゃんと集中して臨めたかなと思います。

――決勝でのポイントの取り方についてはいかがですか

 2ポイント取ったのも全然知らなくて。点数コールでは同点と言われてたんですが、あ、勝ってたんだ、という感じでした。

――ポイント面で焦りはなかったですか

 そんなに焦りはなかったですね。他の試合でも相手に取られて始まったというのもあったので、決勝だけ交互射ちで間違えずに射ちきれるかだけ心配でした(笑)。

――決勝だけ方式が大きく異なりますよね

 時間内に射てるかなって(笑)。でも交互射ちが、北海道ではあるんですが、個人戦の全国大会ではやったことがなかったので、そんなに緊張するというわけではないんですが、大丈夫かなと不安ではありました。

――明日に向けて一言お願いします

 明日は団体戦でずっと目指してきた王座なので、チームを信じて頑張っていきたいと思います。

棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)

――昨日の調子は悪くないように感じましたが、いかがでしたか

 昨日の予選は、順位的にも点数的にもそんなに悪くない、いい順位で終われたので良かったかなと思っています。

――今日は緊張されましたか

 すごく緊張していたわけではないんですが、やっぱり予選順位が3位で、相手が言ってしまえば点数的にも格下の相手だったので、逆にそれを意識してしまって、追われる立場に感じて攻められなくなってしまいました。

――今日の調子はいかがでしたか

 今日もそれこそ本当に、普通なら決められるところを決めきれないような感じで、向こうが決めた時に自分は怖じ気づいて余計外してしまうみたいな、完全に焦ってました。

――今の気持ちは

 悔しいです。

――明日の王座に向けて一言お願いします

 個人戦は不甲斐ない結果だったんですが、団体戦は仲間がいるので心強い4人で協力し合って優勝を目指したいと思います。

浦田大輔(基理2=東京・早大学院)

――今日の試合を振り返っていかがですか

1回戦敗退ということで、終わった瞬間は結構ショックで。男子3人負けてしまいましたが、今は明日の王座に向けて切り替えています。

――昨日の試合について調子はいかがでしたか

昨日も調子が悪いというか、集中できなくて。当たりのどこがいいのかなどがふわふわした感じで、未熟さを実感しました。

――昨日の悪い調子が今日にも影響してしまったのでしょうか

今日としては切り替えたつもりで、予選で(自分より順位が)上だった方とあたったんですけど、実力の差で負けたという感じで昨日とは別だと思います。

――対戦相手との差を感じた部分はあったのでしょうか

相手が安定していたのに対して、自分が不安定だったのがもろに出てしまったのが影響しました。向こうが技術的にも上だったと思いますし、もっと練習量を増やしていかないといけないと思いました。

――明日に向けての意気込みをお願いします

明日は4年生の方々の大事な試合なので、絶対に勝てるように精一杯がんばります。

高橋優(社2=岐阜・聖マリア女学院)

――昨日からの調子はいかがでしたか

 万全ではなかったですが、全国大会に出るのが2年ぶりなので、雰囲気を楽しみながら自分の実力が発揮できたらいいなという感じで2日間臨みました。

――結果はいかがでしたか

 昨日は、個選本選(関東学生個人選手権)から引き手の肩を痛めていて、本数が50~60本くらいしか射てないのが1カ月くらい続いていたので、緊張して引き戻したりとかして、残りの3エンドくらいですごく下がってしまって。体力的に追いついていなくてミスしてしまうこともあったんですが、今日は本数も少ないので気持ちを切り替えていこうと決意して、途中良かったんですが雰囲気にのまれたりしてしまいました。

――やはり全国大会の雰囲気は違いますか

 コロナ期間になってから1人で練習することが多かったので、対戦形式などに慣れていなくて、一本の大事さを感じました。

――射っている感覚はいかがでしたか

 思い切って射つしかなかったので、強く、途中良い射も何本かあったので、ミスもあったんですがすごく楽しんで射てたかなと思います。

――中村選手との対戦でしたね

 まさかの1回戦で当たってしまって。やっぱり先輩強いなと思いましたね。あまり対戦相手のことは意識していないんですが、やっぱり全国大会に出たので違う地区の人と戦いたかったなという気持ちはありつつも、すごく強い選手なので、立ち向かうしかないなという感じでした。

矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)

――調子はいかがでしたか

昨日もなんですが、最近は結構普通です。よくもなく悪くもなくという感じで、めっちゃいい時の感覚とは違うなと思っていて。2回戦の最初の方とかも結構迷って、外したのもありましたが、バシッと自信を持って強く押すようにしたら当たるようになったので、負けたけど手応えのある、次につながる試合だったかなと思います。

――昨日長く残っているなと思いましたが

なんかクリッカーが切れなくて、緊張したのかな。軸がぶれた気がします。まっすぐ射てなくて、引く時に体も一緒についてきてしまったので、引き戻しが多かったです。

――今日はそんなにありませんでしたね

そんなにしてないですね。風を選んでの引き戻しはあったけど、フォームに関しての引き戻しはなかったかなと思います。

――昨日の風は気になりましたか

女子の午後は風があったので。この会場は射つ方と的前が逆もあって向かい風は苦手です(笑)。体感では右に流れるだろうなと思っても(的の上についている)旗は逆を向いていたりとかあって。それは大変でした。

――今日の相手は強かったですか

どちらもオリンピック選考に残っている方々なので。昨日の夜から諦めたわけではないし、勝ちたい気持ちもあったけど、「まじか」みたいな感じでした。逆に緊張せず楽しんで射てたかなと思います。相手が強すぎてもう。オリンピック選考に残っているのがすごすぎて。でも耐えられたという感じですかね。負けたけど手応えがあったので、そこは良かったかなと思います。

――明日に向けての意気込みをお願いします

明日はみんなが一番目指してる団体の試合なので、中村さんはすごく調子いいですし、それに続けるよう点数で貢献していきます。

高見愛佳(スポ1=東京・エリートアカデミー/足立新田)

――今日の試合を振り返って、調子はいかがでしたか

今日はそんなに悪くなくて、試合にしては珍しく10点に入る感覚がつかめていました。正直今回の個人戦とかも負けるとは思っていなかったんですけど、最後に少し焦ってしまいました。

――セットカウントは3-7でしたよね

相手が9、8、7点で、こっちが8、8点で9点に打てば勝ちでした。10点には入れなくてもよかったし、普通に打てば入るはずだったんですけど、最後の最後で無駄に焦って勢いで打ってしまって。悪い癖が出ました。

――昨日から調子はそれほど悪くなかったのでしょうか

昨日は本当に緊張していて、いつも出だしが悪いんですけど、案の定出だしがすごく悪くて。3エンド目から急にふっと落ち着いて持ちこたえたんですけど、昨日も後半1エンド目がよくて「いいじゃん!」と思っていたら、最後でやっちゃいました。

――そんなに感覚は悪くなかったんですね

今日は引き戻しが多かったです。緊張して硬くなって、クリッカーが切れなくて引き戻していました。

――明日に向けて意気込みをお願いします

明日は先輩方もいるので、団体戦だし楽しんでやりたいです。団体戦はしっかり勝ちます!