生まれ育った宮崎の陽光のように、いつも明るい笑顔を周囲に振りまいて、場をほんわかとした空気にさせる"日向娘(ひなむすめ)"が、永峰咲希だ。 国内メジャーとなる日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月10日~13日/岡山県・JFE瀬戸内海ゴ…

 生まれ育った宮崎の陽光のように、いつも明るい笑顔を周囲に振りまいて、場をほんわかとした空気にさせる"日向娘(ひなむすめ)"が、永峰咲希だ。

 国内メジャーとなる日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月10日~13日/岡山県・JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部)で、2018年のフジサンケイレディスクラシック以来となる自身2度目のツアー優勝を飾った。表彰式のスピーチでは公式戦覇者としての責任を口にした。

「この大会の優勝者として、恥じないプレーを続けていきたい」



国内メジャーの日本女子プロ選手権を制した永峰咲希

 最終日を通算9アンダーの4位タイでスタートした永峰は、8番で首位を走っていたペ・ヒギョンに追いつくと、10番、11番と連続バーディーを奪って後続に3打差をつけた。その後、12番と16番で3パットのボギーを叩くも、2位に1打差(通算12アンダー)で逃げ切った。

「初優勝の時は、風もなく、天候が穏やかで、(フジサンケイレディスの舞台となる川奈ホテルGC富士コースの)高麗グリーンは、しっかり打てれば入る感じだった。リンクスコースの今回は、風も強いし、グリーンではタッチとストロークを合わせていかないと入らない。(この2年間の)パッティングの上達を感じました。

(ボギーの2ホールは)どちらもカップをオーバーして、返しのパットを外してしまった。ショートしたわけじゃないので、前向きに捉えていました。2年前の初優勝の時も、18番で3パットして、プレーオフになった。(後半に入ってからは)あの時のことを思い出しながら、落ち着いてプレーすることができました」

 表彰式を終えてから臨んだリモート会見で、生きていくうえで大事にしていることは――と訊ねられた永峰の回答は、彼女の人柄を端的に表すものだった。

「感謝の気持ちを忘れないこと。でも一番は、人に迷惑をかけないこと」

 初優勝の直後、初めてインタビューをしたが、彼女からはその言葉のとおり純朴で、誠実な印象を抱いたものだ。

 ゴルフを始めたのは、小学校5年生の時。初ラウンドは、両親と一緒に回った宮崎の河川敷コースだった。それから本格的にゴルフに打ち込み、祖父が働くゴルフ練習場まで、母の香奈子さんが送り迎えをした。永峰が高校を卒業するタイミングを迎えると、香奈子さんは勤め先を辞め、プロゴルファーを目指す娘のサポート役に回った。

 プロとなってからも、香奈子さんは永峰がラウンド中に口にするおにぎりを作り、洗濯や旅券の手配などを行なった。永峰親子のように、ツアーを転戦する女子ゴルファーに母親が帯同しているケースは多いが、その理由を永峰はこう話していた。

「私を含め、一人っ子の女子プロが多いからではないでしょうか。私と同世代で、九州でがんばっていたジュニアは、一人っ子率がとても高かったですから。やっぱり、小さい弟や妹がいたら、その面倒を見なくちゃいけないじゃないですか。

 私は田舎町に育って、近所にお祖父ちゃんやお祖母ちゃんがいた。今、父親には寂しい思いをさせていると思うんですが、家族の支えがあったからこそ、ゴルフを続けられたし、今も母に帯同してもらえているんだと思います」

 初優勝から2年が経過し、25歳となった現在も、永峰の傍らには香奈子さんがいる。だが、コロナ禍における今年のトーナメント会場では、いくら家族でもラウンドに帯同できず、クラブハウスにも入れない。

「去年までは、私のラウンドにずっとついてくれていたんですけど、今年は私を車で送って、ラウンドが終わるまで待っていてくれる。その時間がありすぎて......。そばにいてプレーを見られないから、母も歯がゆかったと思う。この優勝で、日頃の感謝の気持ちを伝えたいです」

 一方で、父親の賢一さんに対しては、また違った感情を吐露した。

「ジュニアの頃から、どちらかというと嫌われ役になってくれて、ネチネチ、ネチネチ(ゴルフに関する)嫌味を言ってくれた(笑)。私は"何くそ精神"みたいなのが出ないほうだったので、父がそうやって嫌味を言うことで、私の闘争心に火を付けてくれた。『次、ラウンドする時までにこれをできるようになっておこう』と見返そうとする、原動力にもなっていた。今振り返ってみると、父に言われたことで間違っていたことは一個もないです」

 渋野日向子をはじめとする1998年度生まれの「黄金世代」や、安田祐香ら2000年度生まれの「プラチナ世代」、さらには2001年度生まれの「新世紀世代」まで登場して、その代表格である笹生優花はすでに今季2勝を挙げている。若い世代が台頭する現在の女子ゴルフ界だが、永峰もプロテストの同期には、柏原明日架や堀琴音らがいる「花の14年組」だ。

 とりわけ柏原は、同じ宮崎の出身で、小学生の頃からしのぎを削ってきたライバルであり、大切な仲間だ。永峰は、柏原のようにスケールの大きなゴルフではなく、精度の高いショットで堅実なゴルフを持ち味とする。また、ビジュアルも、派手な柏原と比べれば、木訥(ぼくとつ)な印象を受ける。しかし、プロとなって永峰は同期で最初に優勝を遂げ、メジャー制覇も一番乗りだ。

「闘志を出す子もいれば、陰で努力する子もいる。(同期から)すごくいい刺激をもらっていたと思いますし、先に勝つことを競っているわけじゃないけど、きっとこの私の優勝で、同級生もエンジンをかけてくると思う。それに押されないように、私もまたがんばっていきたい」

 次々と台頭する若い世代に抵抗するように、25歳ながら中堅に位置づけられる永峰が、今季初の公式戦で優勝を遂げた。

 まさに百花繚乱の女子ゴルフ界を象徴するような出来事だった。