世界トップ8によるエリート大会「バークレイズATPワールドツアー・ファイナルズ」(イギリス・ロンドン/賞金総額750万ドル/室内ハードコート)第7日のシングルスは準決勝2試合を行い、第1試合で世界ランキング1位のアンディ・マレー(イギリ…

 世界トップ8によるエリート大会「バークレイズATPワールドツアー・ファイナルズ」(イギリス・ロンドン/賞金総額750万ドル/室内ハードコート)第7日のシングルスは準決勝2試合を行い、第1試合で世界ランキング1位のアンディ・マレー(イギリス)は同4位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を5-7 7-6(5) 7-6(9)で振り切った。マレーは8度目の出場で初の決勝進出。試合時間3時間38分は、3セットマッチでは記録の残る1991年以降の最長となった。

 第2試合では同2位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が同5位の錦織圭(日清食品)を6-1 6-1と圧倒した。錦織はサービスゲームを一度しかキープできない完敗だった。

 現地時間20日の決勝では、今年の最終ランキング1位をかけてマレーとジョコビッチが対戦する。マレーが勝てば初、ジョコビッチが勝てば3年連続通算5度目の最終ランク1位となる。ATPファイナルズがランキングポイントの対象になったのは1990年からだが、決勝に最終ランク1位がかかるのは初めてとなる。

 第1試合はラオニッチの健闘で大熱戦になった。エースこそ10本だったが、グラウンドストロークでマレーと互角に打ち合った。また、積極的にネットを奪い、61回ネットプレーを試みて41回ポイントに結びつけた。

 しかし、最終ランク1位獲得に意欲を燃やすマレーも譲らなかった。ファーストサービスの確率61%、ファーストサービス時のポイント獲得率62%と苦しみ、3セットで4度のブレークを許したが、要所を締めた。ファイナルセットのタイブレークもブレーク合戦となり、ラオニッチにマッチポイントを握られるピンチもあったが、マレーの執念がまさった。

 マレーは「今季、自分が戦った中でもっともタフな試合の1つだった」と胸をなで下ろした。敗れたラオニッチは「決勝の結果に関係なく、アンディこそ16年の世界一のプレーヤーだ」と称えた。マレーの連勝は23となり、自己最長を更新した。

 第2試合の錦織は序盤からショットの調子が悪く、本来の速い動きも見られなかった。最後まで集中を切らさず力を振り絞ったが、好調のジョコビッチは簡単にゲームを取らせてくれなかった。

「とてつもなく調子が悪かった。体が――今ひとつ反応が遅れたので――疲れは残っていないと思っていたが、多少なりは作用したと思う。でも、今日の彼は強すぎた。何もできずに終わった」と錦織は絞り出した。

 ジョコビッチとは今季6度目の対戦。マスターズ1000のローマではファイナルセット・タイブレークまで追いつめたが、今回は100%の状態で対戦を迎えられなかったことが惜しまれる。ジョコビッチには10連敗となった。

 ジョコビッチは「いいときに今大会最高のパフォーマンスが発揮できた。出だしからボールのペースがよく、いい集中でゲームを支配できた。ケイは明らかにベストではなく、疲れているように見えたが、それとは別に自分の存在を誇示したかった」と胸を張った。

 ジョコビッチは決勝の直接対決でマレーを破れば王者の椅子を奪還し、3年連続最終ランキング1位でシーズンを終えることができる。調子を戻し、わずか66分でこの試合を終えられたことは、決勝に向けてのアドバンテージとなりそうだ。

 最後までもつれた最終ランキング3位争いは、ラオニッチがスタン・ワウリンカ(スイス)と錦織を制し、初のトップ3入りを確定させた。トップ3入りは来季に持ち越しとなった錦織だが、「結果的に一番いい年だった。(来年以降)4位、3位に入っていける能力はある」と話した。ラウンドロビン(総当たり戦)第2戦から3連敗を喫して憔悴した様子も見られたが、シーズンを通してつかんだ手応えが失われることはないだろう。

(テニスマガジン/ライター◎秋山英宏)