アーチェリー特集の最初を飾るのは、矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)と髙見愛佳(スポ1=東京・エリートアカデミー/足立新田)。下級生ながら全日本学生王座決定戦(王座)のメンバーにも選ばれている2人に、自粛期間中の生活や今後の意気込みを伺った。…

 アーチェリー特集の最初を飾るのは、矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)と髙見愛佳(スポ1=東京・エリートアカデミー/足立新田)。下級生ながら全日本学生王座決定戦(王座)のメンバーにも選ばれている2人に、自粛期間中の生活や今後の意気込みを伺った。

※この取材は9月8日にオンラインで行われたものです。

「自分の初めての試合で髙見がいた」(矢原)


全日本学生室内個人選手権(インカレインドア)で行射する矢原

――お互いの印象について教えていただきたいのですが、面白いエピソードがあれば教えてください

矢原 出会いが中学生の頃なので、ずっと九州で一緒でした。自分が初めての試合でこの子(髙見)がいたので、競技歴は髙見の方が先輩です。自分はおどおどしていたんですが、リードしてくれました。いつもニコニコしていて、真面目でしっかりしているけど、どこか抜けてるところもあって。何かは分からないんですけど(笑)。今日は先輩の卒論の実験に参加していたんですけど、みんなが集まっているのに集合場所を通り過ぎて気づかなかったんです!

髙見 なーさん(矢原)は初対面でもいつも明るいんです。中2の時初めて会った試合が異常に記憶に残っていて、「今日初めてなんだよねー」が最初の一言なんですよ(笑)。「これどうすんの?」とかたくさん言っていて、フレンドリーな人だなというのが第一印象です。そこから結構一緒になる機会があって、再会すると「愛ちゃん!」って声かけてくれました。(出身が)同じ九州というのもあってテンションが一緒で、方言とかにも引っ張られます。

――部や学年の雰囲気はどうですか

矢原 自分は結構いい方だと思っています。上下関係が厳しくないですし。同期がすごく仲が良くて練習終わりにごはん食べに行きます。ほとんど男子校出身なので、しゃれた店じゃなくてだいたい行くのはラーメンなんですけど(笑)。去年の大阪遠征では最終日の朝解散だったので、同期を誘ってユニバに行ってきました。

髙見 私だけ午前と午後に分かれた時にだいたい(ほかの1年生と)練習時間が違って最初は寂しかったんですが、その分先輩方と話す機会が多かったです。同期も話せば個性的で仲が良くて、コロナの影響でごはんには行けていないんですけど、みんなでBBQしたいねと話しています(笑)。

――矢原さんは2年生として後輩を持つにあたり、何か意識の変化はありましたか

矢原 いや、入ってきたのが髙見なので仲いいし(笑)。本当はタメ語で話すくらい仲いいけど、同じ学校に入ってしまったので一応敬語を使ってもらっています。だから後輩という感じがしないし、他の1年生も気さくなので上下関係が厳しくない感じですね。自粛中に2年生になったのですが、試合がないから余計に(2年生という)実感があまりないですね。自粛明けて同期ともっと仲が良くなったように感じます。連絡はそんなに取っていなかったんですけど、久々に会ったらなんか「わあー!」って。自分だけかもしれませんけど(笑)。

――髙見さんは部の先輩方についてどんな印象を持っていますか

髙見 私は高校の時けっこう厳しい寮生活で、その先輩方に大学が大変だと聞かされていたからとても不安だったんです。でも来てみたらみんなすごく優しかったです。強豪校出身だったのではじめはあまり話しかけてもらえなかったのですが、もともと知り合いのなーさんとか美優さん(中村女子主将、スポ3=北海道・旭川北)に話してもらったり、自分から話しかけたりしました。

――お二人はとても仲良しですね

髙見 付き合い長いですもんね(笑)。

矢原 確かに! 今日の対談もとっても楽しみにしていました。

髙見   なーさんがタメとか方言で話そうって言っていたので大丈夫ですって会話していました(笑)。なーさん全然方言抜けませんよね。

矢原 髙見愛佳といるだけで強くなっちゃうんですよね。止まんなくなっちゃう(笑)。

「アーチェリーは全部自分のせいになるのが魅力」(矢原)


明るくインタビューに応じる矢原

――自粛期間中に限られたトレーニングしかできない中、何を意識して取り組んでいましたか

矢原 自分の練習場所が高校だったんですが、コロナの影響で練習時間が決められていたり、授業中は使ってはいけないというルールがあったので時間が限られていました。日数的にはあまり行けなかったので、その分たくさん射た(うた)なければと思っていました。本当は70メートルを射ち込まなきゃいけない時期ですが、フォームを直すための近射をして、体力が落ちないように気をつけながら本数を射つように意識していました。

髙見 射場が1カ月閉まっていたので、その間素引きや筋トレをひたすらしていました。高校ではもともと週2でトレーニングをしていてその分の筋力が落ちてしまったので、とりあえず射たなきゃと思って近射から始めました。授業があって練習時間が少なかったですが(射場に)行けるだけ行って射つという生活でしたね。それから肩を壊さないようにストレッチはしていました。

――自粛期間だからこそ伸ばすことができた点はありますか

矢原 アーチェリーに対する考え方ですかね。始めたきっかけが福岡県のタレント発掘事業で、そこで受かった人がいろいろなスポーツを体験して適性を見つけるというもので、アーチェリーに向いてるよと言われて始めました。そうやって好きというよりも向いているから始めたので、点数が下がったりしたら「ほんと嫌い!」と思っていました。でも自粛期間で射てなかったら恋しくなったんです。そうやって恋しくなったことが今のやる気につながっているなと思います。あれ、やりたいのかなって(笑)。今でも好きかどうか分かりませんが、その経験があるから頑張れるし、自粛前より競技に対する姿勢が変わりましたね。

髙見 私も似たような感じで、アーチェリーに対する考え方とか練習に対する意識が変わりました。高校3年間オフがなくて、ありえないくらい射っていたのでアーチェリーのことが嫌いだったんですよ。プレッシャーが大きくて点数出ないと落ち込むし。やめたいと思うくらいでしたが、離れたら射ちたいと思って、私からアーチェリーをとったら何が残るんだろうとか考えました。高校ではただひたすらコーチの言うことをやっていたのですが、大学でいない状況になって、じゃあどうするかということを自粛期間中に考えることができました。考える時間がたくさんあったので、空いた時間で今までを振り返ったりできたので成長したと思います。

――逆に苦しんだ点はありますか

矢原 自分は高校の時も1週間くらいまともに射たなくても逆に点数が上がったりして、体で覚えたことを適当にやっていたので余計なことを考えずにプレーしていました。自粛期間中に体力は少し落ちていたんですが、苦しかったことはあまりないですね。2カ月射たなくても意外といけたなと思っています。指が痛いとかはありましたが、弓の重さもそのままで射っていますし。もうちょっといい感覚があるなとは思いますが、あまり苦しんでないですね。

髙見 私はめっちゃ苦しみました。筋力が2、3キロ落ちて、こんなに簡単に落ちるんだなと実感しました。もともと強い弓を使っているのできつくて、射っているというより弓に射たされてるみたいな感覚で全然だめだと思って。射っても当たるか当たらないか分からないという感じで、点数出ないしミスの原因もわからないし・・・という負のスパイラルを戻すのに1カ月はかかりました。正直結構しんどかったです。

矢原 髙見のいた高校の環境(エリートアカデミー)が本当にすごくて、弓の整備もしっかりしているし、体脂肪やコンディションを管理しているところなんです。自分も当て感がないけどノリと勢いでやってきたので、そこが苦しんだか苦しまなかったかの違いですね。

――向き合う時間ができたからこそ、改めて気づいたアーチェリーの魅力は何だと思いますか

矢原 もとからアーチェリーのいいところは自分との闘いというところだと思ってるんです。応援で頑張ろうというのはあるけれど、当たっても自分のおかげだし外しても自分のせい。サッカーみたいに相手の戦略で負けることもないし、ラグビーみたいに射ってる最中に誰かがぶつかってくることもないし。自分が当てれば勝つスポーツなので。風とかの環境的要因があったとしてもそれを読めなかったのは自分の責任になるので、全部自分のせいだし自分のおかげなところが魅力だと思います。私はここしかないと思っとるけん。

髙見 極論、絶対同じ射ち方をしていれば同じところに当たるんですよ。でも人間はロボットじゃないから難しいじゃないですか。骨格によっても違うと思うので、自分に合うスタイルを見つけて射ち続けられるようになったら点数が出るというのが魅力かなと思います。フォームがきれいだったら力も入らないしやりやすいからみんなそれを目指すんですが、無理やりそれに合わせて肩を壊すのではなく、自分にあった型を信じてやり続けることが魅力です。

「早稲田のアーチェリー部を有名にしたい」(髙見)


1年生ながら力強い決意を語る髙見

――8月末に集中練習がありましたが、伸びた点や見つかった課題があれば教えてください

髙見 私は死ぬほどプレッシャーに弱いんですが、それが悪い意味で出ましたね。大事な場面でミスするんですよ。そこミスしちゃダメでしょという場面でミスして、そこミスしても大丈夫という場面でミスしないんですよ(笑)。正直伸びた点が思いつかなくて、自分のフォームの課題をひたすらやっている時期でした。ただ、集中練習期間で的番や一緒に射つ人も変わっていたのでいろんな人とたくさん話せて、先輩方と仲良くなるいいきっかけだったなと思います。

矢原 いろんな気づきがありましたね。自分はフォームはおかしくないと思っていたけど、いろんな人から教えてもらって気づくことも多かったし、少し意識したら変えられることを実践したりして、新しい感覚をつかめました。あと一緒にインタビュー受けているからではないのですが、髙見愛佳が堂々としていて(笑)。外しても堂々としているんですよ。自分は外したら顔に出やすいし、声にも出してしまうので、相手に当たっていないことがバレやすいんです。髙見愛佳のようなポーカーフェイスを目指しているんですけどなかなかできないので、そこは伸びていないと気づけました。王座前に気づけて良かったなと思います。

――ポーカーフェイスであることによって心理戦で優位に立てるのですか

髙見 相手にどう思わせるかですね。10点に3本入れたらほぼ勝ちなんですけど、8点だと致命的になることがあるんです。その時にやばいという表情をしてしまうとプレッシャーから解放されて緊張がなくなって、そういうときって当たるんですよね(笑)。8点でもいいよという顔をしていれば当たっているのかなって(相手は)思うじゃないですか。同じようなレベルの人と対戦する時に極端に緊張に弱い人がいるので、大事ですね。

矢原 高校の時からポーカーフェイスを目標にしているんですけど全然できなくて。自分もそうなんですが、雰囲気から強ければ相手もびくっとしちゃう。「え、当たってますけど?」って顔されると「え、当たってるのかな」と思っちゃうんです。自分が当てればいいだけなんですけどね。やっぱりアーチェリーは心理戦もあるのかなと思います。王座までに身につけたいですね。

――王座や全日本学生個人選手権(インカレ)を目前にしていますが、今の心境を教えてください

矢原 自分は去年インカレで予選落ちを経験して。アーチェリー始めてから今まで予選落ちを経験したことがなかったので、こんなに悔しいことがあるんだと思いました。全日本(全日本ターゲット選手権)とか、インカレより(レベルが)上の試合では通るのにと、自分の中でもやもやしているので、今年こそ通りたい、通らなければいけないと思っています。王座は、制覇を目指せるメンバーだし、雰囲気も良くて調子が上がってきているのでチャンスだと思います。勝ちたい欲が今高まってます。あと、大阪なのでおいしいものが食べたいです(笑)。

髙見 今年は異例の無観客で寂しいのですが、せっかく選ばれたからには王座制覇したいです。高校の時から観ていて、王座って一番盛り上がるんですよ。勝ちたいし、先輩方と王座制覇したいです。女子主将の方に死ぬほどお世話になっているということもありますし、早稲田のアーチェリー部を有名にしたいというのが一番あって。大学のアーチェリー界は東は日体、西は近大と言われがちですが、それを変えたくて、早稲田にずっと入りたいと思っていたんです。さっきなーさんも言っていましたが、十分目指せるメンバーなので、1年生ながらそれに貢献すべく練習あるのみです(笑)。インカレは全日の申請点がかかっているのでそれも頑張って、個人戦は王座で勝つために私がやるべきことは何かちゃんと決めて入ろうと思っています。それをやっていれば次の王座に絶対結びつくと思うので、雰囲気や緊張感の中でどれだけ自分が射てるのかということを試したいと思います。全力投球で頑張ります。

矢原 個人としては点数と雰囲気づくりで貢献することが目標です。今年は王座とインカレが一緒ということで、インカレ予選がだめだったら全部だめになってしまうので、そこは慎重にいきたいと思います。楽しい雰囲気の緊張感を作れるように頑張ります。

――今の状態を100点満点で表すとどれくらいですか

矢原 個人だったら60点くらいです。点数は上がりつつあるんですが、もっとできるって自分でも思いますし。楽しんだ結果勝つということが多くて、まだまだできるなというところがあるので半分より上ですかね。団体は80点くらいだと思います。誰が何番で射つかが安定して決まってきて、取り組む姿勢はできているので気持ちも高めです。自分としては一人ひとりに声掛けを考えていて、この人にはこの声掛けがいいかなというのを探っています。

髙見 私も60点です。やっと最近当たる感じが分かってきて感覚と点数が一致するようになってきたのですが、筋力不足なのでトレーニングを頑張っています。それが生きてくるのを信じてやっていますが、急にミスすることもあるのでそれをなくしていきたいです。団体は雰囲気がすごくいいんですよ。みんながみんな自分がやらなきゃという感じじゃなくて、みんないるし、みんながいるから一緒に頑張ろうという感じです。背負いすぎずにできているのでチームとして成り立っているなと思いますし、声掛けも統一されて盛り上がっていて、いいチームですね。団体戦にかける思いはみんな強いので、点数が出るタイミングがそろうように改善していけたらなと思います。

矢原 早稲田の練習方法がみんなで教え合うかたちなので、みんなで勝ちたいという団体戦にかける思いがほかの大学よりも強いんじゃないかなと思います。

――最後に、大舞台に向けた意気込みを一言でお願いします

髙見 王座制覇します!!

矢原 全部全力がモットーなので、それで!!

――ありがとうございました!

(取材・編集 手代木慶、朝岡里奈)

◆矢原七海(やはら・ななみ)

2001(平13)年2月21日生まれ。福岡・柏陵高出身。スポーツ科学部2年。いつも明るくインタビューに応じてくれる矢原選手。ポーカーフェイスが課題とのことですが、王座本番ではその素敵な笑顔を隠すことなく見せてほしいですね!

◆髙見愛佳(たかみ・あいか)

2001(平13)年6月5日生まれ。東京・エリートアカデミー/足立新田高出身。スポーツ科学部1年。エリートアカデミーに所属していたこともあり、アーチェリーに関する知識が豊富だと多くの選手から声が上がっていました。持ち前の明るさと知識で、早稲田に新たな風を呼び込みます!