テニスのグランドスラム(四大大会)、全米オープンテニスの熱戦の模様を、アメリカのニューヨークより連日生中継の準備が進められている。大会を前に日本テニス協会強化副本部長でテニス解説者の松岡修造氏…

テニスのグランドスラム(四大大会)、全米オープンテニスの熱戦の模様を、アメリカのニューヨークより連日生中継の準備が進められている。大会を前に日本テニス協会強化副本部長でテニス解説者の松岡修造氏が、大会の見どころについて語った。全米オープン男子ドロー表全米オープン女子ドロー表

新型コロナウイルスの感染を防ぐために完全無観客での開催。ジャーナリストの立ち入りも制限され、コーチなど選手関係者の会場入りも最小限に抑えられるという、異例の大会になる今回の全米オープンテニス。まずは、松岡氏は大会全体をどのように見ているのだろうか。

「2万人以上収容のスタジアムの観客がゼロになるのですから、今回の全米オープンは“新しい大会”になるということです。テニス界にとっては本当に重要な大会になると思います。そしてこの大会は世界中から選手が集まってきます。来年の東京オリンピックをどのように開催したら良いのかを探る、大きなチャンスでもあります」と、コロナ禍での国際的なスポーツ大会の在り方のモデルになる大会だと言う松岡氏。全米オープンテニスは、テニス界だけでなく、他のスポーツ界からも大きな注目を浴びる大会になりそうだ。

今回の大会は、男子ではナダル、フェデラーといったビックネームが、女子でもランキングトップのバーティ、昨年の優勝者であるアンドレスクが不参加となった。また、特例として、欠場しても昨年のポイントがそのまま残り、出場した選手は成績の良いほうのポイントが反映されることになっている。

「ナダルやフェデラーの不参加は寂しいですが、昨年振るわなかった選手にとっては、今回は大きなチャンスです。また、若手や例年だと優勝争いに加わらないような選手にとっても、絶好の機会と言えると思います。僕が現役選手だったら、こんな機会はめったにないので、出場しないという選択肢はないですね。」

そんな中で、世界ランキング第1位のジョコビッチは出場を予定している。自身が主催したエキシビションの大会で新型コロナウイルスに感染したことは記憶に新しいが、その彼が出場することには大きな注目が集まりそうだ。

「新型コロナウイルスに感染したことで、彼に対する評価はマイナスになったのは確かでしょう。だからこそ、彼がどのようなメッセージを発信するのかにも注目しています。これで優勝したら、彼は本当にメンタルが強い選手だと思いますね」

日本人選手では、錦織圭は欠場を発表しているが、男子では西岡良仁、杉田祐一、内山靖崇、ダニエル太郎、添田豪の出場が予定されている。

「6月の『チャレンジテニス』で西岡選手の試合を見たのですが、すごく良いテニスをしていました。何が良いかと言えば、自分から攻撃しているところです。メンタルも強いので、ドローにもよりますがベスト8に進出してもおかしくはありません」と、期待する選手として西岡の名前を挙げた。

さらにダニエル太郎に関しては「コーチが変わったこともあり、何かのきっかけでブレークスルーすることができると思います。全米ではそのチャンスがあるのではないでしょうか」と大きな飛躍を期待していると言う。また、内山には「このような状況になったことは、彼には大きなチャンスだと思います。大会では彼の魅力であるネットプレーやサービスを生かしてほしい」と攻撃的なテニスを期待していると語る。

女子選手では、ランキングトップ10のうち、カロリーナ・プリスコバ、ケニン、セレナ・ウイリアムズ、大坂なおみの4名が出場する。そんな中でやはり一番の注目は、一昨年の覇者、大坂だ。

「なおみさんのテニスは、ステイホーム期間中も自宅のテニスコートでトレーニングをしていて、状態はいいと聞いています。ただ、試合をやっていないとメンタル面は鍛えられません。試合から長く遠ざかっていたので、メンタルの部分が心配でもあります。」

一昨年、全米で優勝したときのようなメンタル面の強さが出ることを期待していると松岡氏は語る。

今回の全米オープンテニスは異例尽くしの大会になるが、試合はどの点に注目すればいいのだろうか。松岡氏は、まずは選手の“体力”だと指摘する。

「コロナ禍でツアーが開催されなかった時期も、選手は練習でフィジカル面での調整はしていたと思います。しかし、練習と試合で大きく違うのは消耗する体力の質です。試合では緊張感やプレッシャーによって、練習以上に、体力が奪われるからです。久しぶりの大会ということもあり、1、2回戦は接戦が多くなるとも思います。最終的には、試合での体力を持っている選手が強いと思います。特に男子の5セットを戦い抜くには、練習では養うことができない体力が必要です」

そして、松岡氏はそれぞれの試合だけでなく、大会や選手の姿勢にも注目してほしいと言う。

「テニス界が今、どのような状況に置かれているかということを見てほしいですね。そして、そんな中でどのようにこの大会が開催されているか、選手がどのような姿勢で戦うかにも注目してもらいたいです。きっとその中には、コロナ禍でどのように生きていけばいいのか、どのような考え方をすればいいのかという、大会を見ている方々への今後のヒントも隠されていると思います」

さらに、「どんな状況でもエネルギッシュにプレーしている選手の姿に、まずは感動してほしいです」今回の全米オープンを見て勇気をもらってほしいと、松岡氏は最後に熱く語った。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2020年全米オープン解説を行う松岡修造

(Photo by WOWOW)