今回の対談は昨年の秋に早稲田大学に入学した高浪歩未(国教1=ケイ・インターナショナルスクール東京 ※7月17日取材当時)。パートナーであった池田喜充(日大)とともに「あゆみつ」として注目され、昨シーズンは国際試合にも出場し、全日本ジュニア選…

今回の対談は昨年の秋に早稲田大学に入学した高浪歩未(国教1=ケイ・インターナショナルスクール東京 ※7月17日取材当時)。パートナーであった池田喜充(日大)とともに「あゆみつ」として注目され、昨シーズンは国際試合にも出場し、全日本ジュニア選手権では、自己ベストを更新して、さらに成長した姿をみせた。コロナウイルスの影響で、アメリカから急きょ日本に帰国した後の自主隔離中の過ごし方や学校生活、アイスダンスの魅力やスケートのこれまで、これからを伺った。 ※この対談は7月17日に行われたものです。

「2つとも好きなので」


優しい笑顔で質問に答える様子

 

――スケート以外のことから伺います。コロナウイルスの影響で大変な状況ですが、自粛期間中はどのように過ごされましたか

 

実は、その前はアメリカで1人練習していて、3月中旬から末頃に帰って来れないとやばいなと思ったので、帰ってきました。やはり、帰ってきて最初の2週間は自主隔離ということで、家でずっと過ごしていて、その間は暇で仕方なかったんですけど、その際に絵を描いてみようかな、塗り絵をしてみようかなということで、やってみたりしました。あとは、マスク作り。マスクを作って、お父さんが働いているところの社員の方、またおばあちゃんおじいちゃんに送って、喜んでもらえてすごく嬉しかったです。隔離が終わってからは運動もしたいと思って、ランニングをしたりしました。あと、スケートや学校で忙しくてアルバイトというものをあまりしてこなかったのですが、お父さんお母さんの経済面でもやっぱりスケートはお金がかかるスポーツなので、なにかできたらなと思って、まずオンラインを通じて家庭教師を始めました。あと、ウーバーイーツも運動にもなるしちょうどいいかなと思い始めました。 自粛期間の最後の方なのですが自分が持っているスキルで、何か世界、社会に貢献できないかなと思い、高校時代の友達と一緒に無料で英語を子供さんや親御さんに教えることを始めました。週1、2回1人の生徒に教えるということを、まず最初はトライアルとして1ヶ月間やってみて、その際は小さくて7人くらいの生徒だったのですが、今でも続けていて、十何人の生徒ができました。

 

――趣味が料理(フィギュア部門公式インスタグラムより)と伺ったのですが、自粛期間中何かお料理を作りましたか

 

料理もしました。あとお菓子作りもしました。どうすれば、カロリー、糖質を低くできるのかなと考えたり、バランスが良い食事を心がけて作りました。

 

――秋入学ということですが、大学生活は慣れましたか

 

だいぶ慣れて、友達も少しずつ作れているかなと思います。秋に入学した当時は、シーズン中だったので、試合や練習があり、授業が終わったらすぐ練習とか、行けない授業などもあって、友達はいつも遊んでいて、悲しいなと思っていたのですが、春になって、その時に知り合った友達とも会話もあって、楽しくなってきました。

 

――スケート以外の面で早稲田大学を選ばれた理由はありますか

 

私は国際教養学部なのですが、日本語で勉強できる力がないので、そうなってしまうと大学が絞られてきて。1番勉強したかったことは、キネシオロジーという、スポーツ関係のことで、海外、カナダとかの大学も受験して、受かっていたのですが、その当時はパートナーもいて、日本にいないとスケートも大学もいけないという判断もあり、そこで何を勉強したいと考えたときにそれ以外の勉強ということをしたいと思っていなかったので、国際教養学部ならいろんなことを勉強できたり、考えたりできますし、留学というオプションもあるので、もしカナダだったり、アメリカだったりまた、その分野を学びたいと思った時に行けるので選びました。

 

――国際教養学部ではどのようなことを学んでいますか。面白い授業があれば教えてください

 

私は生物、人間に関することが好きなので生物学を取りました。これは大きな大きな夢なのですが、いつか社会に貢献できるようなビジネスを自分でも作り上げたいなと頭の隅っこで思っていて、本当はビジネス、経済学のようなものを取りたかったのですが、定員オーバーで落とされてしまって。それ以外には心理学を取っています。心理学は興味を持っていたことなので。あと面白い授業でいうと恐竜学を取っています(笑)。恐竜の授業なんですけど、取るのがなくて、友達に面白いよって教えてもらって。そこが国際教養学部の面白いところでいろんなことについて勉強ができて、この授業ではどんな恐竜がいたとか色々恐竜のことを勉強しているんですけど、正直、将来に役立つかといわれると(笑)。いろんなことが学べるので知識も広がって良いのかなと思います。

 

――学業とスケートの両立の面で、気をつけていることは何ですか

 

よく、大変じゃないのと聞かれるのですが、10年以上続けてきて難しいと考えたことがなくて、やっぱり両方やるということは大変なことかもしれないですが、2つとも好きなので。夜中の練習がアイスダンスは多いので練習に行く前だったり、練習に行く途中、車の中で課題だったり勉強を終わらせたりして、そのこともあって、睡眠時間は確保できていました。大学受験期間は何時間寝てるのと聞かれても、私は10時、11時に寝てると言っていました。もちろんスケートで深夜1時に練習が終わり2時に帰宅と言う時もあったのですが、他の日はだいたい10時、11時には寝ていて、時間を有効活用していました。

 

――入学する際に頑張られたことは何ですか

 

インターナショナルスクールの11年生、12年生、高校でいうと高2、高3の時期にIBというプログラムが始まってその成績が1番重要なのですが、11年生の時、成績がすっごく悪くて早稲田大学など全然という感じでした。その中で、少しずつアイスダンスが良い感じになってきて大変だったんですけど、自分の中で学業を1番という中でスケートをやる権利があり、ここで勉強を頑張らないとスケートをやめざるを得ないと思っていたので、家庭教師をつけてでも成績を上げたいと思って。1年間スケートも頑張っていましたけど勉強も頑張って成績もどんどん上がって、早稲田に入れることになりました。

「まずは、自分を磨く」

――スケートのことを伺います。高校時代、技術面や表現面で頑張ってきたことは何ですか

 

アイスダンスは技術といっても、1人ができていても2人ができてないとレベルが取れないので、日ごろやっていたのは、エッジワーク、2人でサイドバイサイドといって横になって、ターンやツイズルだったり、合わせるということも大事なんですけど2人のエッジが正確であることも大事なので。あとポジションやユニゾンの確認もしていました。先生がいない時や自主練の時間は、リンクサイドに携帯を置いて、自分たちで動画を撮って、ここは取れてそうだねとか、いま同じタイミングでターンができたねと言っていました。 表現面に関しては、似たようなことなんですが、陸上で鏡を使って自分たちのポジションや角度を確認していました。それも曲をかけて、何回もやり、動画も撮ってやっていました。

 

――先ほどのお話にもありましたが、家でのトレーニング方法について詳しく教えてください

 

アメリカにトレーニングの先生がいるので、トレーニングメニューをやったり、自分は、1つのことをずっとやると飽きてしまうので、次はユーチューブで探して、村上大介選手がトレーニングの動画をアップされていたものや女性のトレーナーさんの動画も見ながら、腹筋、腕、足などを全体的にやっていました。筋力面だけではなく、ピラティスを1年前くらいからやっていたのですが、通えなくなってしまったので、ヨガをやっているユーチューブを探して姿勢を整える、柔軟性を高めるということをやっていました。

 

――スケートの面で早稲田大学を選ばれた理由はありますか

 

もちろん、スケート部がある大学を選びたいと思っていて。しかし、まずやはり最初は学業を優先的に考えて、その次にスケート部がある大学という形でした。先輩方、荒川静香選手、羽生結弦選手、あとは永井優香(社4=東京・駒場学園)選手のスケーティングが好きで。ずっと小さい頃から見ていた選手なので。永井選手は一緒の部活のチームとして、出ることができるので嬉しいです。

 

――スケート部に入部された理由は何ですか

 

チームメイトという形で、お互い励まし合ったり応援したりすることが大事だと思っていて、自分が滑っているときも、ファンの方々に応援していただくのはうれしくて、感謝でいっぱいなので、自分も違う人に応援をして励まし合えたらなと思っています。

 

――大学生になって頑張りたいことは何ですか

 

大学生になったということで、小さい頃はかわいらしい曲しか踊れなかったのですが、大人になったということで新しい挑戦として、去年もそうだったのですが、フリーなどは力強い曲調、また滑らかな曲調を選んでみたり。例えば、タンゴとか大人っぽい曲調などいろんなものを滑ることができたらなと思います。

 

――部員の方々と交流はありましたか

 

1回試合に行って応援することができました。しかし、まだ、今年の1年生全員とは会っていなくて。試合に行った時はみなさん優しく接してくださいました。

 

――仲の良い選手はいらっしゃいますか

 

早稲田大学1年生の川畑和愛(社1=東京・N高)ちゃんはいま一緒の樋口(豊)先生チームで、彼女はシングルなので、あまり合う時間がないのですが、週1回、樋口先生の貸し切りの時は話したり笑ったりしています。

 

――憧れの選手、影響を受けている選手はいらっしゃいますか

 

自分がシングルをしていた時、シングルの選手では、パトリック・チャン選手とアリッサ・シズニー選手。パトリック・チャン選手は、スケーティングが言葉にできないほどすごいと思っていて、演技も早く終わっちゃうし、彼には影響を受けました。私もそこでスケーティングを磨きたいと思って、彼の動画を見たりまねをしたりして、それがアイスダンスにも生かせていると思います。 アリッサ・シズニー選手は私がアメリカで住んでいたころのリンクで滑っていて、コーチが帰国する時にパーティーを開いてくださって、そこにも来てくださいました。彼女も左利きで私も左利きで、コーチが佐藤有香先生だったので、左利きは日本でも大変だと聞いていて、その時に左利きでも頑張れるよなど励ましの言葉をいただいて、日本に帰ってきて左利きでリンクを探すのは大変だったのですが彼女の言葉を思い出して、頑張ろうという気持ちになりました。彼女のスピンも速くて軸がぶれなくて、そこも憧れています。 アイスダンスはたくさんの選手のここが好きというのがあって。ベースにしているのはテッサ(テッサ・ヴァーチュ)選手とスコット(スコット・モイア)選手、メリル・デイヴィス選手とチャーリー・ホワイト選手とシブタニ兄弟(マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ)。メリル・デイヴィスとチャーリー・ホワイトはすごくエレガントという意味ですごい好きで、テッサとスコットは力強さがあって、どちらにも違う魅力があります。特にスコットとテッサの最後の年のオリンピックのフリーダンスは本当にすごくて。シブタニ兄弟は日本人の血も流れていて、アメリカで出ていますが、日本のアイスダンスという感じが出ていて、ツイズルのユニゾンがずれないのですごいなと思っています。

 

――高浪選手にとってアイスダンスとはどのような競技ですか

 

アイスダンスはシングルと違って、もちろん2人という競技なので、良い時も悪い時もあるのですが、お互いに話せる、お互い話し合って、自分たちがどう2人の目標に一緒に向かっていけるか、どういう工夫をしたらそれが達成できるかという話し相手がいるので、効率よくいけるというわけではないのですが、助け合って自分たちが目標としているゴールによりいけるのかなと思っていて。そこはペアと似ているかもしれないんですけど、ペアと違うところはリズムダンスというものがあって、曲調やパターンダンスというものが決まっているんですけど、どうやって自分のものにするかというのが大事になってくるので、自分たちの個性だったり、表現したいものを出せるかという楽しみがあって。曲調や曲がかぶってしまう場合もあるのですが、自分たちの曲がどうすればかぶらないかということで、何時間か話し合って選曲することも楽しみの1つです。

 

――アイスダンスの魅力、注目ポイントは何ですか

 

いろんなことがあるんですけど、まずは、さっきも言ったように、リズムダンス。アイスダンスを知らなくても見て面白いと思っていただけるのは、同じステップを踏んでいても、違うストーリーが作り出されているというところが見どころなのかなと思います。フリーダンスではどんな曲を選んでもいいし、どのようなステップを組むのかというのも違ってくるので、そのギャップの差。多くの選手がリズムダンスとフリーダンスの曲調をガラリと雰囲気を変えてくるので、そこでどう大人っぽいからまた違う大人っぽさの表現を見せられるのかということも重要で、そこが魅力だと思います。

 

――昨シーズンの試合を振り返っていかがですか

 

まず、ジュニアグランプリ(ISUジュニアグランプリシリーズ)ではリズムダンスもフリーダンスもいつも失敗しないようなところで私が失敗してしまって、すごく後悔がありました。でも、後悔しても先に進めないということが自分の中でもあったので、踏ん張りどころだと思い、試合が終わって、練習を再開するときには全力の気持ちで全日本ジュニア(全日本フィギュアスケートジュニア選手権)に向けて、どのようにしたら同じミスをせず、点数を上げることができるのかということを考えて、日ごろ、ユニゾン、エッジの正確さもそうですけど、技術面じゃなく、表現面もどのようにすればよりファンの方、ジャッジの方に私たちが伝えたいストーリーが伝えられるのかなという思いで全日本ジュニアに臨みました。

 

――パートナー解消についてお話しできる範囲で教えていただけますか

 

もちろん2人でやっていく面で、経済面などもあって、自分たちも頑張ってどのようにすればよいかと工夫していて、その1つとして皆さんからサポートもいただいて、それはすごく感謝していて、でもこのような残念な結果になってしまって、本当に申し訳ないと思っています。もちろん、よしみつくんの将来、目標としているゴールをサポートしているし、お互いのことが嫌いになったということではないので、今後自分の目標に向かってがんばって、彼にも彼がゴールとしているものに向かって頑張ってほしいなと思います。

 

――今シーズンについて、お答えいただける範囲で教えていただけますか

 

今はパートナーがまだいないので、このご時世、トライアウトに行くのもなかなか厳しいのですが、目標としてはパートナーを見つけるということはあって。なるべく早く試合に出たいなと思って、試合の感覚、パートナーがいる感覚はうれしいことですし。いまは少し、相手役として男の子と滑ったりもしていますが、パートナーがいるとこのような楽しみがあるのだなと感じていて、より一層アイスダンスを頑張りたいなと思っています。そこで、組めるパートナーが見つかれば、先ほども言いましたが新たな挑戦として自分を磨いていって、いろんな曲調、ジャンルの音楽に挑戦できたらなと思っています。

 

――大学4年間の目標は何ですか

 

一番目標としているのは学業とスケートの両立。学校の勉強がしっかりとできていなければ、スケートはやるべきではないと自分の中で思っているので、そこはしっかりと両立しながら、勉強での目標、例えば、今後どういう仕事をしたいかということを考えて、それに合わせて科目も選んでいきたいです。また、スケートでは、国際試合に出たいと思っているので、それにむけて自分を磨かなければ、パートナーが寄ってきたり、一緒にトライアウトしようということにはならないので、まず自分を磨いて、より早くパートナーを見つけて、国際試合に出たいなと思っています。

 

――ファンの方々にメッセージをお願いします

 

いつも応援していただきありがとうございます。昨シーズンは解消という形になってしまいサポートして下さった皆さん、大変申し訳ございませんでした。自分たちがその時、目標としていたことを達成できたのは皆様のサポートがあったからです。本当にありがとうございました。今後も私はアイスダンスを続けるので、新たなパートナーが見つかるように、まず自分を磨いていきます。また、パートナーが見つかれば、国際試合を目標として、頑張っていくのでその際は応援よろしくお願いします。

 

――ありがとうございました!


今シーズンの目標

 

早スポプレゼンツ質問リレー

選手の方同士が気になることをリレー形式で次の選手に質問し、それを受けてお答えいただくというコーナーです。今回は、前回の対談でお話を伺った、西山真瑚選手(人通1=東京・目黒日大)から高浪選手への質問です。

西山 どうやったら英語が上達できますか?

高浪 なんだろう。でも、しんごくんもかなり上手だと思う(笑)。自分は小学2年生の頃行っていて吸収力も早かったので何とも言えないのですが、その際には学校の友達だったりスケートの友達に頑張ってでも話す。話せなくても言葉を繋げたり、ボディーランゲージ。しんごくんは表現力が良いのでそういう面では使えると思うんですけど、そのように少しずつ上達できるのかな!?と思います。

(取材・編集 岡すなを)

◆高浪歩未(たかなみ・あゆみ)

2001(平13)年1月19日生まれ。ケイ・インターナショナルスクール東京出身。国際教養学部1年(※7月17日取材当時)。笑顔で1つ1つの質問に対して丁寧に答えてくださいました。スケートはもちろん、それ以外のところでも先を見据えている姿が印象的でした。高浪選手ご自身のことだけではなく、他の方の力になりたいという優しい心、芯の強さが演技にも通じているのだと感じました。アイスダンスを愛する高浪選手の今後の活躍にも期待したいです!