関東学生個人選手権(個選)予選から2週間。個人の射に磨きをかけた早大男子からは、本選に11名が出場し、棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)が自己新記録で優勝。団体としても、強豪・日体大に8点差まで詰め寄る1913点で全日本学生王座決定戦(王…

 関東学生個人選手権(個選)予選から2週間。個人の射に磨きをかけた早大男子からは、本選に11名が出場し、棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)が自己新記録で優勝。団体としても、強豪・日体大に8点差まで詰め寄る1913点で全日本学生王座決定戦(王座)出場を決め、1か月後の王座と全日本学生個人選手権(インカレターゲット)に向けて弾みをつけた。

 個選本選は個人戦と同時に、団体戦として王座の選考も兼ねている。各校4人のチームメンバーのうち上位3人の合計点により王座出場権が争われた。男子の選考は2日目に行われ、前日よりは風がなく比較的コンディションの良い中での戦い。関東覇者となった女子に続いて1913点でBブロック2位となり、王座進出を決めた。同ブロック1位の座は日体大に譲ったが、8点差まで肉薄。遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)もこの戦いぶりを「1カ月前のことを考えると、よくここまでスコアを戻せたなというのが正直なところ。3人で8点差はあってないようなもので、非常に良い勝負ができた」と高く評価した。


安定感を見せ自己新記録で優勝した棚田

 躍進の立役者となったのが棚田だ。2位で通過した予選からの勢いはとどまるところを知らなかった。650点を目標として臨んだところ、前半で330点をマークする。その結果を受け目標値を上げ、より高得点を狙いに行く気持ちが強くなったという棚田。運も味方につけ、後半の36射中21本を10点に入れるという強さを発揮し、最終的には667点をたたき出す。自己記録も2点上回り、女子の中村美優主将(スポ3=北海道・旭川北)と共にアベック優勝を果たした。

 2番手として安定感を見せたのは市川遼治(スポ4=群馬・高崎商大付)。調子が悪い中で点数を出さなければいけないと気負った部分もあり、前半は「いつも通りの攻めるアーチェリーができなかった」(市川)と314点で折り返す。その後も点数は伸び悩み628点の7位で試合を終えることとなったが、後輩を引っ張る信頼感は健在であった。

 また早大の3番手として、2年生の浦田大輔(基理2=東京・早大学院)も輝きを見せた。自粛期間は家で筋トレや素引きを行い、本格的に射場で練習し始めたのは8月からだという浦田だが、試合では勝負強さを発揮。自身の目標としていた点数には届かなかったが、618点で王座進出に貢献した。


王座進出を決め笑顔を見せる選考会メンバー(左から市川、杉田蒼月・教2=東京・麻布、浦田、棚田)

 団体として日体大に肉薄したことだけでなく、本選出場者も多く輩出できた今大会。「難しい中でよく準備したな、頑張ってくれたな」と遠藤監督が語るように、練習や試合が思うようにできない状況を乗り越え、個人・団体ともに大きな収穫を得ることができた。

 王座を戦っていくにあたり4年生の棚田、市川という実力者の存在は大きい。上級生として、2人が点数面でも心理面でも信頼感があることは間違いない。ここからの1カ月で、どれだけ下級生が勢いをつけることができるか。上級生の安定感と下級生の勢いで、創部史上初の日本一の座を射抜きにかかる。

(記事 朝岡里奈、写真 部員提供)

結果


  ▽RC男子

 1位 棚田 歩  667点

 7位 市川遼治  628点

15位 浦田大輔  618点

29位 相木将寛  592点

38位 中野勇斗  579点

42位 藤澤博斗  577点

44位 杉田蒼月  574点

54位 駒崎友彰  563点

55位 篠原純弥  562点

67位 田邉正騎  550点

72位 山本治輝  536点


  ▽Bブロック

2位 早稲田大学  1913点



コメント


遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)

――今日の男子の王座選考を振り返っていかがですか

 今年の戦力的には連続して王座に駒を進めるつもりではいたのですが、拮抗していたので油断したら(負ける)というのも頭のどこかにありました。日体大が男子においても抜けた存在であるのですが、それ以外の上位校はどこも毎年いい勝負をしているので、試合のふたを開けるまでは正直分からない、絶対とは言えないという部分もありました。残念ながら及びませんでしたが、トータルで8点差ということで一人あたり2~3点で、本戦の72射の中で1射でひっくり返る非常に僅差で、互角というか。3人で8点というのはあってないような差なので非常に惜しいところまでいっていて、本当は男女そろって1位で抜けていきたかったのですが非常にいい勝負ができたと思います。

――個選本選の試合全体を振り返っていかがでしたか

 絶対的なスコアの相場が例年と違っていて、スコアとしては全体的に低調な大会だったと思います。男子は2週間前に関東個戦予選では上位100名が駒を進められたのですが、非常に人数多く進められたことは収穫だと思っています。今日とは違う形なのですがボーダーが今回537点ということで、例年とは60点以上違いました。ありえないくらいの格差で、逆立ちして射ってもそうならないだろうってくらい各自のコンディショニングが難しい状況でした。その中で早稲田の部員たちがやれる準備をしてチャレンジしてくれたというのは大きかったと思います。予選で終わらず本選に駒を進められる人間がそれだけいたというのは、他校の活動状況や大学生のモチベーション意地も非常に難しい話も聞こえてきているので、彼らもよくここまで準備をしてくれたなというのが大きいですね。


市川遼治(スポ4=群馬・高崎商大付)、棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

市川 この大会までの感覚は悪くなくて手ごたえを感じていたのですが、ここ2日3日ほど自分のアーチェリー的に調子のよくない日が続いていました。実際今日も試合でなんとかなるかなと思って臨んだのですが、結局点数的にも全然満足いくものではありませんでした。最後まであまり調子が良くないまま終わってしまったので、王座の出場を決めたことは非常に嬉しいことなのですが、1プレイヤーとして自分自身のプレーというものには悔いの残る試合になってしまいました。

棚田 結果的には関東として1位でしたし、試合の中での自己新(記録)を打つことができたので、結果だけ見るととても満足しています。ただ、フォーム的には試合新を出したいという気持ちから、いつもより狙いに行ってしまっていたので、うまく射(う)てていないなという印象はあります。嫌味っぽくなってしまうのですが(笑)、自分の実力で出た(記録)というよりは運で10点に入ったという射が多くて、それで点数が出せたという感じです。

――今日の試合の目標は何でしたか

市川 感覚は良くなかったのですが、試合になるとその前調子が悪くても前の点数に戻せる感じがあったので、それを過信していて640から50点はいけるだろうなと予想していました。実際はだめでしたが(笑)。

棚田 練習であっても650点を超えるようになってきていたので、試合でもその点数を超えることを目標として設定していました。今までの試合の最高記録は665点だったので、今回2点更新しました。

――今回の試合で良かったポイントを挙げるとすればどこでしょうか

棚田 10点に入る本数が多かったことですね。そこが自分の中で結構ポイントで、他の射で外しても10点があるおかげで結構帳消しにしてくれて、全体的にはミス射があってもミスにならなかったところが自分の良かったポイントです。自分でも初めてあんなに10点が取れたので、そういう意味でも運が味方してくれました。前半は650点を目標にしていたので半分の325点でよかったので、そのペースで射ちたいと思っていたら330点で終えることができました。そこで自分の中で660点を狙いたいなという気持ちになって、射形は良くなかったのですが10点を狙いに行こうという気持ちで射って後半10点を増やすことができました。

市川 良いところが今回少なかったのですが、個人的には前半が反省で後半は自分の中ではいい感じに射つことができていたのかなと思います。前半は点数を自分が出さなきゃと気負った部分があったのですが、前半終了時に棚田が高得点を出していて、他の学校の点数を聞いていても割と早稲田が王座に出場できるなという感じでした。自分は試合の中で試していくタイプなので、後半は「なんで悪いのだろう」「こういう引き方してみよう」「弓を持ち上げる高さを変えてみよう」などと積極的に感覚を合わせるような調整ができました。実際の点数は前半と変わらなかったのですが外しが収まりました。自分の中では試せたことは良かったのかなと思います。

――今日見つかった課題や次につなげたい反省点はありましたか

市川 感覚が良くても悪くてもその時の自分の感覚に合わせるように「攻めるアーチェリー」を強みとしているのですが、受け身で縮こまって射ってしまって今回はあまり発揮できなかったところがありました。今月にはあと2つ試合があるので、王座までにはしっかり試合勘を戻して、練習の時から積極的に射ってのびのびしたアーチェリーを意識してやっていきたいと思います。

棚田 点数を狙いに行った分、時間ぎりぎりまで射線に残って、何度も引き戻しては射ってというようなコストパフォーマンスの悪いアーチェリーをしていました。やっぱり王座の舞台になると今日より緊張して余裕がなくなっていくと思うので、そういうときこそ攻めるアーチェリーをしたいです。また、(王座出場)メンバーに後輩がいると思うので、彼らを支えるという面でもより余裕をもって試合に臨みたいと思いました。

――王座進出が決まりましたが、率直な気持ちをお聞かせください

市川 昨日女子の試合があって、日体大を制して関東1位通過を決めていて、それは当然だなという思いがありました。男子についても大学から始めたような子には70メートルという距離は厳しいかなと思ったのですが、今回のメンバーは高校の頃からやっていてそこに抵抗がなかったので、その点他大とショートハーフで戦うよりは70メートルの方が早稲田のチームとしていつも通りの実力が出せるかなと思っていました。実際1位の日体大と8点差で他の大学から見ても点差が開いていたので、今回の形式で王座進出は正直通って当然という思いがありました。進出は嬉しいのですが、8点という僅差は個人的には悔しいし、もう少し頑張れたかなと反省がある試合でした。

棚田僕も市川君と本当に同じで、普段通りの実力を出せば本戦に進めると思っていたので多くの心配はしていませんでした。日体さんは世界大会で活躍している人がたくさんいたので、そういう選手たちと早稲田が互角に戦えたのは自信になると思います。今までは勝てたら嬉しいなくらいなのですが、王座でもしっかり日体大と戦えるんだぞという自信をもって臨みたいと思います。

――王座への意気込み、目標を教えてください

棚田 このコロナ禍でもしっかり結果を残すために、他大と比べて練習をできる環境だったとは思うのですが、その成果を出したいと思います。創部以来達成されていない王座制覇を僕らの代で成し遂げたいと思っていますし、個人としても集大成として満足できる結果を残したいです。

市川 最後の王座ということで、自分自身としても最後楽しみたいなという思いもありますし、絶対に王座制覇したいと思っています。コロナで練習ができなかったと言われていましたが、王座で優勝争いをするような学校は個人個人ばらばらになってもしっかり練習するような質の高いチームなので、おそらく力としては例年と遜色ない実力で臨んでくるチームが多いと思います。その辺は言い訳にならないのであと1か月で時間としては短いのですが、個人個人でしっかりレベルアップを図り、かつ王座メンバーが決まったらその中でもコミュニケーションをとりたいです。今年は応援がいないということでどの大学も実力が試されるので、チャンスだと思ってポジティブに捉え、選手の中でチームワークを発揮して4年生最後に王座制覇していきたいと思っています。< /p>

杉田蒼月(教2=東京・麻布)、浦田大輔(基理2=東京・早大学院)

――今日の大会について、振り返ってみていかがでしたか

杉田 正直、感覚も点数も全然振るわなかったです。個人的には所沢の射場よりは涼しくて風もそこそこだったので、620、30(点)は出すべきでした。単純に自分の感覚と身体がかみ合ってなかったなという感じです。7月から試合が解禁されたので、感覚を取り戻すために立て続けに試合を入れてしまって、逆に毎週試合が続いたことでそれに追われてしまって感覚を崩してしまいました。8月に入ってから崩れた感覚を直そうとしたんですが間に合わなかった感じですね。

浦田 今日の試合はとても暑くて、コンディション的にはいい方ではあったんですが、自分の実力が少し及ばずまずまずの点数をうってしまって。欲を言えばあと10点、20点は欲しかったかなという感じです。体力的には戻ってきていて、夏練の練習の成果は出せたかなという感じです。

――今回の試合の目標は

杉田 今回の試合は早稲田大学の王座を懸けた試合であると同時に、王座本番の選手選考の一つでした。自分としては棚田さん市川さん浦田という信頼できてかつ点数を出してくれるであろうメンバーがいたので、王座通過自体へのプレッシャーはなかったんですが、部内選考のプレッシャーを感じてしまいました。確実に部内選考を通れるような620点、630点を目標としていたんですが、それを意識しすぎてしまって射形も気持ちが弱くなったときに押しが弱くなって、風に流されてしまったというのがありました。風はそんなになかったですが、たまにちょっと吹いて、波がある感じでした。

浦田 まずは早稲田大学の王座出場というのを第一に考えて、その次に選考がかかっているので選考を通過できる点を出したかったんですが、あまり点が及ばず、選考も怪しい点数を出してしまって。630か40(点)を目標にしていたんですが、及ばずといったところですね。

――今日の試合の反省点はありますか

杉田 すごく緊張してしまって、気持ちが弱くなってしまった時にまっすぐ押せなくなってしまったのと、射つのが怖くなったときに早く射ち終わりたいという思いが先行して焦って呼吸が整わないまま射ってしまったので、もう少し時間を使うべきだったなと感じます。焦って押し方がずれてしまうことがありました。

浦田 自分の場合は時間を逆に使いすぎてしまって、最後ぎりぎりになったりとか、逆に強く押しすぎて、楽しく射てたんですが、あまり感情にパフォーマンスが伴わなかったというか。もう少し冷静に一射一射うつことが大事だと思いました。

――良かった部分は

杉田 風に影響されてのミスは少なくて、風が来たら待ったりエイムオフをすることができました。また、自信をもって打って10点に入る射も5、6本あったので、それを次につなげていきたいかなと思います。

浦田 上の2人に引っ張ってもらって緊張せずに射てたのと、気持ちを強く持ってずっと射ち続けられたことですかね。

――王座進出が決まりましたが、今の気持ちは

杉田 王座進出が決まったのは自分にとっても嬉しいことですし、よかったなと思います。ただ自分としては王座選考に関わる上位3人に入れなかったということと、そもそも自分の射つべき点数とは遠く離れた点数を射ってしまったということで、がっかりした部分はあります。

浦田 まず王座出場が決まったことはとても嬉しくて安心しているんですが、一方で4年生の方々に点数を引っ張っていただいて出場が決まったということで、自分もそこに食らいついていけるような点数を射ちたかったなと思いますし、これから射てるようにならないといけないなと思いました。

――8月から新体制も始まりました。学年が上がって、心境の変化はありましたか

杉田 今までは4年生の方々がいらっしゃったので、点数面でも棚田さん市川さんにおんぶにだっこというか、2人がいるからなんとかなるだろうといった部分があったんですが、王座が終わったら2人も引退されてしまうということで、今後自分たちが引っ張っていかなければいけないというのは感じました。学年が上がって後輩が入ってきて、上手い子がいてすごく刺激ももらえています。また未経験の子が入ってきたことで一から教えるとなったときに新たな気づきがあって新鮮だなと感じたのと、自分のためにもなるなと感じました。

浦田 今まで主力だった先輩方が引退されてしまうと戦力的に厳しいところがあるので、自分が主力になれるよう、今までの棚田さん市川さんのポジションになれるよう努力していかなければいけないと思いますし、後輩にも技術的に教えられることがあれば共有できるように自分もレベルアップを図りたいと思います。

――これから王座に向けて課題にしていることは何でしょうか

杉田 とりあえず部内の選考を通過して王座の選手になれることを第一目標としています。次に自分は練習や部内選考では点数が出るんですが、緊張する場面では弱い部分が出てしまうことが多いので、そこをなんとか自信をつけるなり、ここだけ意識すれば外さないというポイントを見つけるなりして改善していきたいです。またもともと調子の波が激しくて安定感を高めるというのが課題だと思っているので、それに取り組んでいきたいと思っています。

浦田 まだ自分は射形が未完成なので、それを先輩に教えていただきながら王座までに直せるようにしたいのと、王座までにあわよくば棚田さん市川さんに食らいつけるように頑張っていきたいと思います。もともと射形がきれいな方ではなかったのですが、そのせいで外してしまうことが最近多くなってしまったので、そのために改善しなければいけないなと思いました。