専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第269回 ゴルフを趣味にして、毎週末メンバーコースに通うようになると、奥さんが「私もやりたい」と言い始め、クラブセット一式を調達するとしましょう。すると毎週末、奥さんまでコースに…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第269回

 ゴルフを趣味にして、毎週末メンバーコースに通うようになると、奥さんが「私もやりたい」と言い始め、クラブセット一式を調達するとしましょう。すると毎週末、奥さんまでコースに連れていくはめになったりします。

 そのうち、今度は子どもにも英才教育を施して、将来は宮里藍ちゃんのようなアスリートに育ってもらって、「ガッポリ稼いで、老後は悠々自適に過ごせれば」なんて、思ったりするじゃないですか。

 けど、現実はそんなに甘くはないです。

 お金も、手間もかかるし、レッスンをしてやったり、試合や練習の際には移動を手伝ったりと、面倒なことが多いです。

 今回は、そういった一見楽しそうに見える"家族ゴルフ"について。深みにハマると、しんどいことがどんどん増してくるという、悲喜こもごもの話を紹介したいと思います。

(1)婦人会の謎
 どこのゴルフ場にも、コースの名前を冠にした『○○婦人会』や『カトレア会』『すずらん会』などといった、女性専用のゴルフサークルがあります。そういう名前の会が本当にあったとしても、ここでは特定の会を指すのではなく、偶然の一致ということでお許しください。

 さて、この婦人会。メンバーであれば、別に入らなくてもいいのですが、やはり女性同士のほうが何かと都合がよろしいようで、女性メンバーの多くは入会しているみたいです。そもそも男性側のリクエストもあって、存在している会ですからね。

 当初、奥さんが「ゴルフをやりた~い」と言っている頃は、まだお互いに若くて、恋愛気分も抜けていないので、一緒にコースに行って「若くて、綺麗な奥さんですね」とか言われたいわけじゃないですか。

 実際、どのゴルフ場もメンバーには家族割引制度や家族会員制度を設けていて、奥さんや子どもは安くプレーさせてくれますから、そうした制度を利用して奥さんを連れていっても、最初のうちはデート気分で、確かに楽しいと思います。

 ただし、そんな家族ゴルフですが、次第に面倒になってきます。ラウンド中にスイングの話をしていると「教え方が下手」とか言われたり、些細なことで喧嘩になったりすることが多くなってきますから。また、他の男性メンバーとの会話がしづらくなったりして、いろいろと弊害が出てくるんですよね。

 けど、当の奥さんはどこ吹く風。どんどんゴルフにのめり込んでいきます。挙句には「私もゴルフ会員権がほしい。買ってよぉ~」と来たもんだ。

 これを断ることはなかなかできません。というか、断る理由がないですし、男女平等ですから。

 そこで、男は一計を案じるのです。むしろ、奥さんにもメンバーになってもらって、独り立ちしてもらおう、と。そのほうが楽じゃないか、と。

 というわけで、晴れて奥さんもメンバーとなり、その次いでに早速、倶楽部の婦人会に入ってもらうんですな。そうすれば、コースに行っても、一緒なのはフロントの受付まで。あとは、別行動でそれぞれラウンドを楽しみます。

 これで、本来の男同士の交流も復活。「いやぁ~、六本木にある店に可愛い子がいてさぁ~」などと語り合って、晴れて独身気分にも戻れるってものです。

 だいたい、女性とは打つティーも、プレーするペースも違います。お互いがのびのびとラウンドするには、家族の縛りを取っ払って、男女に分けたほうが都合がいいんです。

 こうして、婦人会のおかげで、パパからひとりの男に戻れてよかったねぇ~となるわけです。婦人会は、男性のためにも必要な存在なんですね。

(2)夫婦平等クラブ
 婦人会の存在によって、奥様からうまく逃げ切った旦那さんがたくさんいる一方で、逃げ切れず? というのは失礼ですが、ずっと一緒にゴルフをしている夫婦も、もちろんおられます。

 関東の某有名コースは、夫婦でメンバーになる人が多く、そこは"パートナーゴルフ"を望む方々にとっては、理想郷のような世界なんだとか。

 というのも、その倶楽部では宿泊施設も整っていて、週末となれば、宿泊棟にたくさんの夫婦が集い、ワインなどを飲みながらのパーティーが開かれているそうです。夫婦そろって、そこでワイワイやるのが楽しいみたいですね。

 ラウンドする際にも、どこぞの夫婦とペアとなり、2組の"ダブルデート"方式でラウンドすることが多いそうです。こういう倶楽部は、季節ごとにイベントが盛りだくさんで、新年会に始まり、桜を見る会、バーベキュー、七夕、夏祭り、夕涼み屋台イベント、ホタル観賞会、紅葉......など、例を挙げればきりがありません。

 出色なのは、何といってもクリスマスイベントです。イブの日は正装して、フルコースのディナーを食べ、それからバンケットでダンスパーティーが催されるそうです。いやぁ~、私にとっては拷問にしか見えませんが、"社交界ごっこ"をやりたい方は結構いらっしゃるんですな。

 面白いのは、こういう社交界型倶楽部は、奥さんの立場がかなり強くて、奥様方の強い意志によって、事を進めるケースが多いようです。言い方は悪いけど、旦那さんたちは尻に敷かれているんですな。まあ、それはそれで、生活が成り立っているのですから、問題はないんですがね。

(3)子どもの場合
 最近のコースは、どこもジュニアゴルファーを積極的に受け入れており、レッスンなどにも力を入れております。ただ、日本の場合は、親の期待が大きすぎるような気がします。みんながみんな、トッププロになれるわけではないのですから......。

 だいたい、ジュニアゴルフの基本的な考えは、託児所の延長ですから。つまり、夫婦間での決め事、当番で回ってきた子守りをゴルフ場にさせるのです。

 初めてゴルフをやらせる時、子どもがゴルフに向いているのか? そもそも興味があるのか? ということすら、わからないわけじゃないですか。ですから、まずはそこからなんですよ。

 東南アジアの某有名コースでは、週末には必ずジュニア教室があって、大人はそこに子どもを預けて、自らのラウンドを楽しんでいます。

 同コースではジュニア教室用に、子ども用のクラブ、小さいカートなど、さまざまな用具もそろっています。

 翻(ひるがえ)って、日本のジュニア教室って、まだまだイベント的にやっているケースが多いです。できれば、週末に定期的にやってくれれば、連れていく親御さんにとって都合のいい日程を探す必要もなく、無理なく行けると思うんですけどね。

 ですから、ジュニアゴルフについては、まずは託児所的な活用という考え方でいいのでは。子どもがゴルフに飽きたら、他のことをやらせればいいんです。そういう意味では、コース内にフットサル場とか、スポーツ&遊びの施設がさらに充実しているといいかもしれません。子どもには、いろいろなことを体験してほしいですしね。



子どもに対して、過度な期待を寄せるのはどうかと思うんですけどね...。illustration by Hattori Motonobu

 また、日本の場合、子どもがうまくなると、親がジュニアの試合に出場させようと、いろんなところへ連れていって、武者修行をさせます。すると当然、親の負担が増えます。

 まあ、時間やお金に余裕があって、好きでやっているならいいのでしょうが、後々、子どもに変な重荷を背負わすことはしないでほしいな、と思ってしまいます。

 なので、ジュニアが頭角を現したら、父親のホームコースで、普通に競技に参加させればいいんですよ。同じジュニアの中で競わせて、そこで現場力をつけていく。まずは、レディースティを使って、ですけどね。

 あとは、コース所属のレッスンプロが、試合の前後にフォローすればいいだけのこと。そうしたら、親の負担はすごく減るじゃないですか。そのほうが、ジュニアゴルファーの数が増えて、裾野が広がっていくと思います。

 もちろん、さほど成長しない子どももたくさんいるわけで、そういう子たちは、将来の倶楽部メンバーとして、親の会員権を受け継いでいけばいいのです。

 世の中、そう簡単にトンビが鷹を生みません。

 そんなわけで、奥さんがゴルフを始めようとしたら、「あんなしんどいものはやめたほうがいい」と言って、逃げましょう......って、一番言いたいことは、そこだったのねぇ~。