8月9日から11日にかけての3日間、岩手県盛岡市・岩手県営運動公園スポーツクライミング競技場において「スポーツクライミング第33回リードジャパンカップ」(以下、「LJC2020」)が行われ、男子は西田秀聖(奈良県山岳連盟)、女子は森秋彩(茨…

8月9日から11日にかけての3日間、岩手県盛岡市・岩手県営運動公園スポーツクライミング競技場において「スポーツクライミング第33回リードジャパンカップ」(以下、「LJC2020」)が行われ、男子は西田秀聖(奈良県山岳連盟)、女子は森秋彩(茨城県山岳連盟)が優勝を果たした。
男子では西田に続き吉田智音(奈良県山岳連盟)が2位となりルーキーの奈良勢がワンツーフィニッシュ。森秋彩は今回で第30回大会、第31回大会での優勝以来3度目の優勝となった。
地元でのジャパンカップ3冠達成が期待されていた伊藤ふたば(TEAM au)は決勝7位。野口啓代は決勝で完登したものの、同高度の場合に前ラウンドの成績が反映されるカウントバックで惜しくも2位となっている。

「スポーツクライミング第33回リードジャパンカップ」はスポーツクライミング・リード種目で日本一のクライマーを決める大会。新型コロナウィルス感染症の流行にともない延期となっていたが、舞台を岩手県盛岡市に移し、厳重な感染対策を実施することで大会の開催が実現した。
大会は無観客試合での開催となり、YouToube、SPORTS BULLでライブ放映が行われた。帯同者の入場制限や大会2週間前からの健康管理、会場での検温やマスクの着用など徹底した感染対策のもとに実施されている。

楢崎智亜、野口啓代らが決勝進出。野中生萌は惜しくも準決勝敗退。

9日に行われた予選男子では楢崎智亜(TEAM au)がBルートを唯一の完登でトップ通過。
予選女子では野口啓代(TEAM au)が貫禄のA、B両ルートを完登でトップ通過し、2位に森、3位に野中生萌(XFLAG)と続いた。

10日に行われた準決勝男子では9日の結果とは一転、予選13位であった西田がトップで準決勝を勝ち上がり決勝へ。藤井快(TEAM au)が2位につけ、楢崎智亜は5位で決勝へ進出した。
予選2位の本間大晴(埼玉県山岳・スポーツクライミング協会)や前回大会「スポーツクライミング第32回リード・ジャパンカップ」3位の清水裕登(愛媛県山岳・スポーツクライミング連盟)、「スポーツクライミング第15回ボルダリングジャパンカップ」で優勝している原田海(日新火災)は惜しくも準決勝で敗退となった。

11日に行われた準決勝女子では1位森、2位谷井菜月(橿原学院高等学校)が共に完登。野口は高度49+で3位、伊藤は高度47+で7位となり決勝進出を決める。野中は高度44+で惜しくも13位で準決勝敗退であった。

男子決勝は奈良勢がワンツーフィニッシュ!

男子決勝へは楢崎智亜、西田、藤井のほか、村下善乙(千葉県山岳・スポーツクライミング協会)、樋口純裕(佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟)、緒方良行、田中修太(新潟県山岳協会)、吉田の合計8名が進出。
競技順1番手の吉田が高度36+、2番手の田中が高度36とトップホールドに迫る勢いの登攀を見せる。楢崎智亜は惜しくも高度35+でフォール、藤井も28+でフォールし、アンカークライマーの西田の登りに大会の行方が左右される形となる。
藤井を始め多くの選手が苦戦した高度28+の壁を超えて西田は、堅実な動きでトップホールドに迫る。吉田、田中の高度を越えて見事トップホールドに手をかけ、しっかりと体勢を保持。17歳のニューカマー西田秀聖が堂々とした登りで「LJC2020」王者の座を獲得、2位の吉田智音とともに奈良勢がワンツーフィニッシュを決めた。


西田秀聖 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より

女子決勝では完登者続出

女子決勝へは森、谷井、野口、伊藤のほか、小池はな(埼玉県山岳・スポーツクライミング協会)、柿崎未羽(東京都山岳連盟)、阿部桃子(神奈川県山岳連盟)、平野夏海(国士舘高等学校)の合計8名が進出。野口以外は10代というフレッシュな顔ぶれとなった。
競技順1番手の平野がいきなりの完登を果たし、後続の選手にプレッシャーを与える展開となる。伊藤は残念ながら高度40+でフォール。柿崎が完登を果たし、カウントバックで暫定1位となり前半が終了。
後半、野口が完登を果たし順位は逆転、首位に躍り出る。続く谷井は惜しくも高度40+で体勢を崩しフォール。「LJC2020」の結末はアンカークライマーである森の登りに託される形となったが、森は見事トップホールドに達する。カウントバックで逆転優勝を飾り、森秋彩が3度目の優勝を果たした。


森秋彩 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より

優勝者コメント

男子優勝:西田秀聖

暑さもあり、頭がくらくらしています。苦手なムーブも多く、苦しい場面が多いウォールでしたがうまく対処することができました。
目標であるW杯での年間ランキング1位に向けて今後も頑張っていきたいと思います。
画面の向こうで応援してくださった皆さま、大会を開催してくださったスタッフの皆さま、ありがとうございました。


西田秀聖 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より女子優勝:森秋彩

久しぶりの大会だったので緊張しましたが、予選から高い結果を出せてよかったです。カウントバックを意識して予選からやってきました。決勝では雰囲気で完登が出ていることがわかってプレッシャーを感じましたが、それに打ち勝つことができて嬉しいです。
この時期に大会に出ることができて幸せです。これからは東京、パリとオリンピックやさまざまなイベントが控えているので、楽しんで登ることを忘れずに頑張っていきたいです。
今回の大会で、画面の向こう側で応援してくださった皆さま、今回は声援を聞くことはできませんでしたが、いつも会場での応援が力になっています。また大会でお会いできる日を楽しみにしているので、これからもたくさん応援してください。


森秋彩 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より

「スポーツクライミング第33回リードジャパンカップ」結果

男子

優勝:西田秀聖(奈良県山岳連盟) TOP (1)
2位:吉田智音(奈良県山岳連盟) 36+ (8)
3位:田中修太(新潟県山岳協会) 36 (7)
4位:楢崎智亜(TEAM au) 35+ (5)
5位:藤井快(TEAM au) 28+ (2)
6位:村下善乙(千葉県山岳・スポーツクライミング協会) 28+ (3)


左から2位吉田智音、優勝西田秀聖、3位田中修太 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より女子

優勝:森秋彩(茨城県山岳連盟) TOP (1)
2位:野口啓代(TEAM au) TOP (3)
3位:柿崎未羽(東京都山岳連盟) TOP (5)
4位:平野夏海(国士舘高等学校) TOP (8)
5位:谷井菜月(橿原学院高等学校) 40+ (2)
6位:小池はな(埼玉県山岳・スポーツクライミング協会) 40+ (4)

*高度は決勝成績
*( ) 内は前ラウンド順位


左から2位野口啓代、優勝森秋彩、3位柿崎未羽 / Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より

LJCとは

LJCはリード種⽬の⽇本⼀を決める⼤会。「第15回ボルダリングジャパンカップ」、「第2回スピードジャパンカップ」の2冠を達成している伊藤ふたばを含む、多くの有⼒選⼿が出場している。
歴史は古く今回で33回目の開催となり、歴代優勝者には平山ユージや安間佐千、小田桃花が名を連ねている。
前大会の「第32回リード・ジャパンカップ」では男子は藤井快、女子は野口啓代が優勝している。

リードクライミングとは

リードとはスポーツクライミングの一種目。高さ12メートル以上の壁を、安全のためのロープをクイックドローと呼ばれる器具に引っ掛けながら登り、6分の制限時間内に到達できた高度を競う。

開催概要

主催 :公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)
後援 :スポーツ庁/公益財団法人日本スポーツ協会/公益財団法人日本オリンピック委員会 
主管 :一般社団法人岩手県山岳・スポーツクライミング協会
企画・運営 :LJC2020 実行委員会
協賛 :KDDI 株式会社/三井不動産株式会社/住友商事株式会社/オリエンタルバイオ株式会社/日本航空株式会社/久光製薬株式会社/牛乳石鹸共進社株式会社/ キョーリン製薬ホールディングス株式会社/八海醸造株式会社/日新火災海上保険株式会社/ ニチハ株式会社
オフィシャルマーケティングパートナー:株式会社博報堂 DY メディアパートナーズ
期日 :2020 年 8 月 9 日(日)-11 日(火)
会場 :岩手県営運動公園スポーツクライミング競技場 (岩手県盛岡市みたけ 1-10-1) 
アクセス :厨川中央線運動公園口駅下車徒歩 7 分/東北自動車道滝沢中央スマート ICから 9 分 

Text by 金子修平
Photo by JMSCA Competition TV「第33回リードジャパンカップ 決勝」配信動画より