「織田がつき 羽柴がこねし 天下餅 座して喰らふは 徳の川」。江戸時代後期に生まれた落首にこんな歌がある。戦国時代は織田信長、豊臣(羽柴)秀吉を経て最後に徳川家康が天下を取ったことを意味している。これをF1に参戦するホンダの現プロジェクト…

 「織田がつき 羽柴がこねし 天下餅 座して喰らふは 徳の川」。江戸時代後期に生まれた落首にこんな歌がある。戦国時代は織田信長、豊臣(羽柴)秀吉を経て最後に徳川家康が天下を取ったことを意味している。これをF1に参戦するホンダの現プロジェクトに置き換えるとこうなるかもしれない。

「マクラーレンがつき、トロロッソがこねし、天下餅 座して喰らふは レッドのブル」

 

表彰台でトロフィーを掲げるレッドブル・ホンダのフェルスタッペン(ホンダ提供)

 

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 9日に英国のシルバーストーンサーキットで開催されたF1第5戦「70周年記念GP」でレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(22)=オランダ=が今季初勝利をマーク。開幕戦から続いていたチャンピオンチームのメルセデスの連勝を「4」で止めた。

 ホンダはレッドブルと組んだ初年度の昨季に3勝したが、他車が自滅する棚ぼたの展開だったり、ホンダのパワーユニットの特性に適していた高地でのグランプリだったりと完全にレースの主導権を握っての優勝とは言いにくかった。

 ところが今季はエースのフェルスタッペンが開幕戦オーストリアGPでリタイアした以外は、いずれも連続表彰台を獲得。今回の70周年記念GPではスタート時にグリッド上位勢では唯一、最も硬いハードタイヤを装着したことが的中し、圧倒的な速さを誇ってきたメルセデス勢を2台とも実力で打ち負かした。

 ホンダは2015年にF1に復帰するも当初は「劣等生」だった。既存のパワーユニットメーカーよりも1年、参入時期が遅く、開発で大きな後れを取った。初年度の供給先はマクラーレンだったが、上位争いに全く食い込むことができず、チームのエースだったフェルナンド・アロンソはあまりのパワーのなさに日本GPの決勝中に無線で「GP2!、GP2!」と連呼。F1の直下シリーズのGP2(現F2)並みの低性能だと言い放った。

 

トップでチェッカーを受けるフェルスタッペンのマシン(ホンダ提供)

 

 マクラーレンから3年で三くだり半を突きつけられ、18年からレッドブルのジュニアチーム的存在のトロロッソ(現アルファタウリ)が新パートナーとなったが、従来の提携相手だったルノーと継続して組む選択肢もあっただけに、トロロッソのフランツ・トスト代表は他チームから「あなた方は完全にどうかしている」と諭されたこともあったという。

ホンダではメルセデスやフェラーリに太刀打ちすることはできない。それが当時の業界内の考え方だった。「レッドブル・ホンダ」の新コンビが固まりかけると、所属選手だったダニエル・リカルド(オーストラリア)は勝ち目がないと見越して、ルノーへの移籍を決断したほどだった。

結果的にはマクラーレンと組んだのは正解だった。チーム側の強い要望でパワーユニットをコンパクトに作るという「サイズゼロ」のコンセプトが大失敗だったと気付かされ、設計を根本から変更。トロロッソと組んでからはは日本人技術スタッフを刷新する大なたを振るい、チーム側と一緒にトライアンドエラーを進めていく体制を敷いた。

ホンダの山本雅史マネジングディレクターも「マクラーレンの3年間では、F1に参加していなかった遅れを取り戻す勉強をさせてもらった」と貴重な試行錯誤の期間となったことを強調しており、開発のノウハウも培えたことで、レッドブルとのコンビ2年目となった今季は大きなトラブルがほとんど見られなくなった。

もともとレッドブルは現行のハイブリッドエンジン以前のV型8気筒自然吸気エンジン時代に4連覇した強豪。レース戦略も的確で勝ち方も心得ている。70周年記念GPではフェルスタッペンの同僚アレクサンダー・アルボン(タイ)も5位を獲得。2、3位だったメルセデスよりも獲得ポイントが1点多かった。これは今季で初めてのことだ。

レッドブルと組んだことで、ホンダの天下餅もそろそろ食べごろになってきたもようだ。次は3週連続開催の3戦目となる第6戦スペインGP(16日決勝)。メルセデスとのがっぷり四つの戦いが期待される。

[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)

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