立教大学陸上競技部男子駅伝チームは、7月から部の練習を再開した。 7月にはホクレン・ディスタンスチャレンジが開催され、東海大記録会にも多くの選手が出場した。関東インカレをはじめ、多くのレースが中止、延期となるなか、ようやくレースに参戦でき…
立教大学陸上競技部男子駅伝チームは、7月から部の練習を再開した。
7月にはホクレン・ディスタンスチャレンジが開催され、東海大記録会にも多くの選手が出場した。関東インカレをはじめ、多くのレースが中止、延期となるなか、ようやくレースに参戦できることになったのだ。
ホクレン士別大会、深川大会に出場した立教大1年の服部凱杏
「いろんな方のご協力があって開催されることになりました。学生はもちろん、指導者にとってもありがたいことです」
上野裕一郎監督は声を弾ませた。ただ、今回のホクレンはコロナ禍の影響で人数を制限するために出場できる設定タイムを厳しくし、誰でも出場できる大会ではなくなった。それでも立教大からは、士別大会3000mで関口絢太(1年)、1500mで服部凱杏(かいしん/1年)、ミラー千本真章(2年)が出場。深川大会は5000mに関口と服部が出走した。
「ホクレンは、立教大からも大会に出られる選手がいるんだと、ほかの選手に刺激を与えたかったのと、出場したのが1、2年の下級生なので上級生に檄を飛ばす意味も込めてエントリーしました。彼らが結果を出してチームの士気が上がればいいなと思ったのですが、簡単ではなかったですね」
士別大会は3人とも自己ベストを更新したが、深川大会の5000mは、関口が14分18秒55、服部が14分41秒10でともに自己ベスト更新はならなかった。
「1500m、3000mについては、3人とも走れていたので自己ベストは更新できるだろうなと思っていました。5000mは、中3日で押し込めるかなと思っていたのですが、調整の難しさが出ました。遠征に行くとまだ自分のペースを理解できておらず、つい人に合わせてしまうんですよ。そこに関しては、僕がちゃんと指示を出さなければいけなかった。
レースそのものについては、関口の5000mは決して悪くはなかった。もう1、2レース続けていけば、13分台に近づけると思っています。服部は、まだ力がなかったですね。吉居(大和/中央大1年)くんがあれだけ走った(13分38秒79)ので、本人も悔しかったと思いますが、2、3年で勝負できるようにやっていこうという話はしました」
関口も服部も力がある選手だけに、上野監督もタイムについては残念そうだったが、今年最初のレースであること、久しぶりの実戦ということを考えれば、致し方ない結果ともいえた。
また、7月11、12日には東海大で記録会が開催された。立教大からは1年生を中心に16名の選手が出走した。
「このレースは、自粛期間中も選手が一生懸命練習してきたので、なんとか試合に出させてあげたいと思ってエントリーしました。彼らの努力を見てきたし、最低限このくらいで走れるだろうと思っていたのですが......まさかの結果で、打ちのめされてしまいました」
16名中、自己ベストを更新したのは石鍋拓海(3年)のみ。上野監督がペーサーを務めた組もあったが、ほとんどの選手がついていけなかった。
「僕がペーサーをしてレースを引っ張ったんですが、蒸し暑かったので少し落としてもいいかなって思っていたんです。でも、主催者側からベストを狙いたいということでペースをあげたんです。きつくなるのがわかっていたので、うちの学生には『ついてくるな』と言ったんですが......みんなきてしまって、3000mを通過したらひとりしかついてきていない。
正直、レース前はもっとタイムが出ると思っていました。1年生についてはほぼ全員が自己ベストを出すだろうと。練習でいいタイムが出ても、レースでも同じというレベルには達していない。ただ、選手たちの今の状態を知れたことはポジティブにとらえています」
唯一、自己ベストを更新した石鍋は、自粛期間中も上野監督と自主練習についてのやりとりを頻繁に行ない、実践していた。
その一方で、キャプテンの増井大介(4年)、期待された中山凛斗(1年)は疲労の抜き方、調子の持っていき方にはっきりとした課題が浮き彫りになった。ただ、それがわかったことで「次につながる」と上野監督は言う。
今回、2つの大会を経て、上野監督は現状のチーム力を把握することができた。チームの目標は「箱根予選会で15番以内」だが、まだ少し高いと感じている。
「15番以内ということは、チームで平均すると約20kmをひとり65分ちょうどぐらいのタイム。昨年、うちは23番でひとり68分ぐらいのレベルだったんです。それでもよく健闘したなと思っていました。今年はレベルの高い1年生が入ってくることを見越して、上級生が目標を立てたんです。
1年生に『この目標でいいか』と聞いたら、『先輩たちが立ててくれたので、それを目標に頑張ります』ということになりましたが、現実的にはその目標を達成するだけの練習ができていないし、練習してきたものを出せなかった」
もし通常どおりシーズンに入っていれば、1年生も徐々にレースに慣れ、コンディションの調整も確立できていたはずだ。だが、コロナ禍により思うような練習ができず、あらためて調整の難しさを痛感したに違いない。ただ、レベルの高い1年生が入ったことで、上野監督は昨年までと異なるチームの雰囲気を感じている。
「1年生のなかには、上級生を上回るタイムを持つ選手がいますが、先輩を尊敬していますし、上級生にとってはいい刺激になっています。以前は、レベルの高い後輩が入ると上級生は敬遠してしまうところがあったのですが、今はすごくいい雰囲気でやっています。上級生のレベルも確実に上がっているので、お互い刺激を与える存在になりつつあるのかなと」
その1年生を中心とした立教大の夏合宿は8月からスタートし、1次、2次、3次まで続く。
「夏合宿は、まずケガをせずに乗り切るのがひとつの目標になります。そのうえで、1次合宿はふたつの大会の結果を踏まえて、ひたむきに歯を食いしばってスタンダードなことを淡々とやろうと思っています。それをこなすことで予選会が見えてくると思うし、学生たちも意欲的です。
本当は故障している選手も参加させたかったのですが、宿の関係で22名に限定しているので、どれだけレベルが高くても練習できない選手は連れていきません。今回はシビアにやろうと思っています」
1次、2次合宿は箱根予選会のための足づくり、3次合宿は質を上げていく予定だ。上野監督は、予選会のためのメニューづくりを進行しているが、まだ開催できるかどうかは決まっていない。感染防止のために出場校を減らす、設定タイムを上げるなど、さまざま噂は出ているが、まだ正式発表はない。
すでに出雲駅伝の中止が決まったように、今後のレースについても何が起きても不思議ではない。箱根予選会を控えている大学にとっては、早くレギュレーションを決めてほしいというのが本音だろう。上野監督は言う。
「出雲駅伝が中止になり、春のトラックシーズンにつづき学生たちにとっては厳しい状況になっています。箱根予選会は開催してもらえるだけでもありがたいと思いますが、現場としては詳細を早く決めてほしいですね。もし、昨年の(予選会)20番以内の大学限定ということになれば、秋のレースに向けての練習に切り替えないといけないし、例年どおりに実施していただけるのであれば、1年生のタイムを救済してほしいですね。
全日本大学駅伝は、昨年のタイムが反映され出場校が決定しましたが、なかにはホクレンでのタイムがまったく反映されずに落選した大学もありました。そういうことが起こると困るので......」
箱根予選会は14名までエントリーが可能で、当日は10〜12名の選手が走り、上位10人の合計タイムのいい上位校(昨年は10校)が本選出場権を獲得できる。
だが、今年は上半期にレースがなく、1年生は予選会出場に必要な大学での正式タイムを持っている選手がほとんどいない。そのため、有望な新人が入学してきた立教大をはじめ、1年生が予選会に出場できなくなると合計タイムに大きな影響が出てしまう。
「たとえばですが、9月中に各大学の1年生が10名ずつ参加できる記録会をやっていただけるとうれしいですね。もし出場選手のタイムが昨年の実績になると、1年生のタイムが反映されないことになる。それではレースにおける平等性が保てないと思うんです」
箱根予選会で上位10校に入ることは重要だが、その前に予選会に出られなければ箱根すら見えてこない。関東学生陸上競技連盟はコロナ禍の影響で難しい選択を迫られるが、無観客でトラックでの1万mの記録会を催すことは不可能ではないはずだ。すでにホクレンや東京都をはじめ、各都道府県で大会は開催されている。
箱根駅伝出場を目指す大学は、この予選会突破にすべてを賭けて、チームを動かしている。10月17日の箱根予選会のレギュレーションの発表を早く求めているのは、上野監督だけではないだろう。
「ただその前に、うちはまだ層が薄いので全体的にチームのスキルアップを図らなければならない。チームを強くするために何が必要かとよく聞かれるのですが、僕は"ひたむきさ"だと思っています。長距離は急には強くならないので、この夏はひたむきに努力して地力をつけていきたいですね」
箱根予選会の動向を睨みながら、立教大は夏合宿に入った。