昨年の12月に行われた対談で、蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)は「今年の冬が4年間の中で一番大事」と語った。体づくりを根本から見つめ直し臨んだ春季オープン戦、手首のけがから長期離脱を余儀なくされた。新型コロナウイルス拡大による活動自粛も…

 昨年の12月に行われた対談で、蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)は「今年の冬が4年間の中で一番大事」と語った。体づくりを根本から見つめ直し臨んだ春季オープン戦、手首のけがから長期離脱を余儀なくされた。新型コロナウイルス拡大による活動自粛もあり、グラウンドから遠ざかる。野球人生で初めての経験に自分を見失いそうになった。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)優勝には必要不可欠な戦力である蛭間に、ここまでの約半年を振り返り、そして春季リーグ戦に向けた意気込みを語ってもらった。

※この取材は8月4日に行われたものです。

「土台づくり」


オンラインで質問に答える蛭間

――12月に行った対談では今年の冬が勝負だと話されていましたが、冬の自主トレ期間を振り返っていかがですか

 冬の自主トレ期間はとにかく体づくりを心掛けてやっていました。体重も平均3キロから4キロ増え、打球も飛ぶようになり、(打球が)強くなりました。スイングも強くなったのですが、3月初めの練習試合で手首をけがしてしまったので、体づくりしたのを結果として残せなかったです。やったことが実際につながったのは分からないですが、自分なりにしっかりと取り組めたと思っています。

――体づくりをしていく中で目指していた体型はありましたか

 特に目指していた体型はなかったですが、スピード・瞬発系を速くすることを目指しました。一歩目、インパクトの一瞬に対する、瞬発力を特に鍛えました。

――打撃面で新たに取り組まれたことは

 新しくしたことはないですが、徳武(定祐打撃コーチ、昭36商卒=東京・早実)コーチに熱心に指導をしてもらいました。型にはめるのではなく自分に合ったやり方で教えてくださったので、結果としては出ていないですが、自分の感覚としては良くなってきています。あとは練習だけでなく、試合の打席でどれだけ教えてもらったことをできるかが問題だと思います。それができれば打てると思うので、春季リーグ戦までにどれだけ固めていけるかだと思っています。

――冬の期間に一番重点的に取り組まれた練習メニューは

 やはりバッティングですね。一球でボールを仕留めることや、速いボールや強いボールに対して振り負けないスイングを心掛け、取り組みました。

――春季オープン戦、けがする前までの自身のプレーを振り返っていかがですか

 冬はしっかり課題を明確にして取り組めていたのですが、それが自分の思っていることと差がありすぎました。今までやってきたことが全くつながっていなかったので、すごく悩みました。

――どの部分で自分の理想とのギャップを感じましたか

 スイング自体は速くなったのですが、いざ対投手となった時に全然思うように芯に当てることができず、ボール球にも手を出してしまいました。その時は、自分は練習をやってきたから大丈夫だと自信はあったのですが、早く結果を出したいばかりで、自分の形を見失い全てがバラバラの状態になっていました。それもあり、けがにつながったと思います。

――離脱するまでは5番で固定されましたが、意識されたことはありますか

 全然結果も出ていないですし、自分が早稲田の5番を打っていて大丈夫かと不安はありました。

――その中で、逆に手応えを感じるプレーなどはありましたか

 いや。満足できたプレーは一個もないです。

――自粛期間はけがでチームを離れましたが、けがした時の心境は

 けがしたことは何回かあったのですが、本当に3カ月間くらいバットを振れないことはなかったですし、自粛期間も人生の中で初のことでした。野手でやっている以上、トレーニング以外だとバットを振ることは当たり前のことだったので。ボールを取れないのでキャッチボールもできなかったですし、トレーニングしかできない状態でした。当たり前のことができない状態だったので、自分を見失いかけそうになりました。

――自分を見失いかけそうになった時、どこの部分を精神的な拠り所としましたか

 そこの部分では、1個上の徳山さん(壮磨、スポ3=大阪桐蔭)です。徳山さんは努力される方で、トレーニングもしっかりとやられる方。野手と投手で違いますが教えてもらいたかったので、徳山さんにトレーニングを一から教えにもらいに行きました。徳山さん自身がけがした時の経験も話してくれて、こんなところで落ち込むのではなく、けがしているなりにできることはたくさんある。自粛期間で野球はできないけど暇な時間は一切ないから、一日を充実させていけと言われました。すごく心に響きました。徳山さんのように1人でいる時も努力できる人になりたい。投手と野手で違いますが、人として学ぶことが多かったです。

――けがで抜けた時のチーム状況をどのように捉えていましたか

 オープン戦で自分は全然打ててなく、自分の代わりに出た選手が自分よりもコンスタントにヒットを打っていたので、自分がいなくなったからチームから何かが抜けた感じはなかったです。そこの部分ですごく危機感を感じました。このままだと終わってしまうと感じました。

――けがでチームを離れている間に、新型コロナウイルスの影響で部は一時活動自粛となりました

 今まで野球をやってきたことが当たり前じゃなかったことを感じました。これまでは野球をやっていない時間が少なかったので、これから一日をどうしていけばいいのか悩みました。

――自粛期間中はどのようなかたちでトレーニングをしましたか

 季節は違うのですが冬の延長だと思い、体づくりの面で一から土台をつくりました。下半身のトレーニングや、体幹のトレーニングを、自分の知識だけでなく、トレーナーや徳山さんに教えてもらい、見つめ直しました。

――ボールに触れるようになったのは、いつ頃ですか

 1回5月にキャッチボールを少し始めたのですが、まだ違和感がありました。結局、6月中旬にバットを振り始めました。

――バットを振り始めてからオープン戦が始まるまでの間、どのような準備をしましたか

 今まで振っていなくて、振ることでまた痛くなるのではと恐怖があり、思うようには振れなかったです。逆に今まで力の入っていた部分が、結構なくなってきたので、今までとは違う感覚で振れるようになった感覚はありました。

――徳山選手を除き、自粛期間中に他の部員とはコミュニケーションをとられましたか

 寮生とはコミュニケーションをとっていましたが、寮生以外の人とは話す機会はなかったです。

――大学ではオンライン授業のかたちで授業が再開されましたが、部活との両立はできましたか

 オンライン授業が初めてだったので、授業がしっかりできるか不安はありました。オンラインはオンラインで学べることもあったので、これはこれでいいなと思いました。

「絶対に目標を達成する」


昨秋の法大1回戦で右中間二塁打を放つ蛭間

――オープン戦が再開した時の自身の状態は

 調子自体は悪くなかったですが、結果を全然残せなかったです。感覚としては悪くなく、その部分で少し悩みました。

――3番を任された中で意識したことは

 3番に立てる実力も全然ないですし、自分がチーム状況的に3番に立つ感じだったので、打順は関係なく自分の役割をしっかりこなそうと意識しました。

――心理的な焦りはすごく感じましたか

 状態としてはそこまで悪くはなく、今までやってきたから大丈夫だと感じていたのですが、思っていたより結果が出ず、間違っていたんだなと思いました。自分に何が合うのか、いろいろ教えてもらったことをかたちとしてできなかったので、自分の中で追い詰めすぎた、考えすぎました。自分を少し見失いかけました。

――オープン戦何試合かありましたが、徐々に手応えを感じている部分はありますか

 ここ2試合で良かった時と悪かった時の原因が分かり始めたので、段々と自分の形、感覚が戻ってきました。あとはメンタル的な問題だと思うので、準備とかやることをやっていきたいと思います。

――守備面で意識されていることは

 外野なら守備はどこでも守れるので、言われた位置を全力で守るだけです。監督からずっと言われているように、守備だと送球の部分を意識して守っています。

――送球の部分を含めて、オープン戦では守備で自身の持ち味を発揮できていますか

 スローイングの部分では正確性が一番大切だと思うので、相手が取りやすい球を投げる。それとランナーを刺すことを意識して投げることができているので、今はいい感じだと思います。

――春季リーグ戦が1試合総当たり制となったことをどのように捉えていますか

 (従来の)リーグ戦とは違って総当たり戦になったのですが、試合でやることに変わりはありません。リーグ戦だから負けていいとかはなく、勝つことには変わりはないので、全部勝つ気持ちで臨みたいと思います。

――総当たり戦になったことで、各大学のエース格との対戦が増えることになると思いますが、そのことをどのように捉えていますか

 六大学のいい投手から打てなければ全国でも打てないと思うので、まずは自分のやってきたことをいい投手で発揮したいです。すごく楽しみな部分が多いです。

――その中で対戦の楽しみな投手はいますか

 明治だと入江さん(大生)、立教だと中川さん(颯)。法政だと三浦さん(銀二)。慶應だと関根さん(智輝)、木澤さん(尚文)などとプロも注目するすごい投手がいるので、特に誰とかはないですが、チームの柱の投手から打てるように頑張りたいと思います。

――冬の対談では春季リーグ戦の目標を打率3割5分以上、ベストナインと挙げられていましたが、その部分目標に変わりはないですか

 その部分では、絶対にその目標を達成するために今までやってきました。本当にそれができるかは分からないですが、それができるためにしっかりと準備して臨みたいと思います。

――本塁打について、目標にしている数字はありますか

 特に本塁打は意識していないです。とにかく安打を打つことを心掛けて、その延長が本塁打だと思っています。とにかく安打数を意識して、チャンスでの一打を意識したいと思います。

――春季リーグ戦ではチームの中でどのような働きをしたいですか

 チャンスで回ってきたら必ず打つ勝負強いバッティングと、守備だと送球のミスを一つもしないように。今の4年生と必ず優勝したいので、少しでも4年生の力になれればいいなと思います。

――最後に意気込みをお願いします

 4年生とできるのもあと少ししかないので、とにかく自分は明るく。4年生の足を引っ張らないように全力プレー。4年生のためにチームのために全力で頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠希)

◆蛭間拓哉(ひるま・たくや)

2000(平12)年9月8日生まれ。176センチ。82キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。外野手。左投左打。 春季オープン戦では5番、3番と打線の中軸を任されるなど、首脳陣からの期待の高さがうかがえます。目標の『打率3割5分以上、ベストナイン』を達成することができた時、2015(平27)秋以来のリーグ戦優勝があるはずです!