今年出場機会を大きく増やし、ブレークを狙っているのは3年生の丸山荘史(スポ3=広島・広陵)だ。主力のけがなどで中軸入りすると、春季オープン戦では5試合連続で打点を記録するなど大活躍を見せた。だが、その活躍の裏にはひたむきな努力の跡があった…

 今年出場機会を大きく増やし、ブレークを狙っているのは3年生の丸山荘史(スポ3=広島・広陵)だ。主力のけがなどで中軸入りすると、春季オープン戦では5試合連続で打点を記録するなど大活躍を見せた。だが、その活躍の裏にはひたむきな努力の跡があった。いよいよ開幕する東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)を前に、これまでの苦労とこれからの意気込みを伺った。

※この取材は8月5日に行われたものです。

「自分のスイングができた」


オンラインで質問に答える丸山

――現在のご自身の調子はいかがですか

 結果があまり出てきていないですが、調子は上がってきています。自粛中に取り組んだことがだんだんと結果に出てきていると感じています。

――5番一塁が定着されつつあります。大躍進の半年ですが、手応えはいかがですか

 自粛前の巨人の2軍との練習試合のオープン戦からちょっといい感覚をつかみ出して、自粛で(期間が)ちょっと開いたのですが、自粛中の取り組みで良い感覚がまだ残っています。

――春季オープン戦では、本塁打に加え5試合連続で打点を挙げるなど大活躍でした。振り返っていかがですか

 春季のオープン戦では自分のスイングができたのが一番結果に繋がっていると思っています。

――春季オープン戦の好調は「自分のスイングができた」ことが要因だったと分析されているのですね

 そうですね。自分のスイングをすることを、この冬に固めたフォームでどれだけ生かせるか試していて、それが春季オープン戦でのいい結果になったので、それが要因かなと思っています。

――今季長打が出るようになったのは、ご自身の中での打撃面で何か意識を変えられたのでしょうか

 自分のスイングをすることに加え、冬に取り組んだ体幹トレーニングによって、スイングスピードが速くなり、それが長打に繋がったと思っています。

――体幹トレーニングは1、2年生の頃に比べ、かなりハードな内容にされたのですか

 そうですね。1、2年生ではなかなか自分の思うような結果を残せなかった悔しさがあるので、その悔しさを取り返すつもりで、今まで以上に体幹トレーニングを強化して取り組んだ結果が、春季オープン戦だったと思います。

――昨季の出場は1試合に留まっていました。昨季を振り返っていかがですか

 大学1年生の頃はリーグ戦に出させてもらって、右も左も分からない状態で、自分がどうすれば結果を残せるのかをがむしゃらにやっていたので、自己分析ができないまま2年間が過ぎていきました。それではいけないなと思ったので、それが冬の取り組みに繋がったかなと思っています。

――1年生では先発出場も多かったですが、そこから苦労が多かったように見受けられます。これまでの早大野球部人生を振り返って、今どのように感じられていますか

 早稲田に来たからこそできている経験が多くあります。1年生の頃から出させてもらっていたのも早稲田に来たからこその経験でした。その結果は悪かったですが、それは今後に生かせるようにという面でも、早稲田大学に来てよかったかなと思っています。

――試合に臨むとき心掛けていることはありますか

 試合前のイメージを今までより具体的にすることを心がけています。いいイメージも含め、最低限どのようなことをするべきかというイメージを持って、それが具体的にできています。

――これまで苦しい時期も多かったと思いますが、「これのおかげで頑張れた」というエピソードを教えてください

 1年生の春の早慶戦で自分のミスで負けたことが、常に自分の脳裏にあります。自分のミスで4年生に迷惑をかけた、チームに迷惑をかけたという思いがあって。それを取り返すには、自分が成長して活躍するしかないと思ったので、それが常に自分の中に残っています。

――1年生で試合に出られていた経験が、今の大きな原動力になっているのですね

 そうですね。1年生は出られたことは嬉しかったですが、歯がゆさの方が大きかったです。

――今季はファーストにも挑戦されていますが、これまで経験はありましたか

 ほとんどなかったです。高校の時に少しだけやっていたくらいです。

――ファーストへのコンバートに関して、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)とは何かお話しされましたか

 監督には打撃を評価していただいていると思っているので、自分自身ではまだまだですが、それをチームに生かせるポジションというのが、采配の中でファーストが最適だったという評価だったと思っています。打撃を生かせるように頑張りたいと思っています。

――慣れないポジションでの苦労はありましたか

 セカンドと比べてバッターからの距離が近いので、打球判断を速くしなければいけなくなりました。他のポジションからの送球を受けるポジションとしては、ショートバウンドなど野手の少しのミスをカバーすることも増えたので、そこの練習を意識的に取り組んでいます。

――今年は新型コロナウイルスの影響でイレギュラーな年となりました。調整は大変でしたか

 そうですね。春季オープン戦まではいい感覚で来ていたので、コロナは少しショックな部分もあったのですが、自分を振り返ることのできたいい期間だったのかなとも思っています。

――振り返りというのはどのようなかたちで行われたのですか

 大学1年生からの自分の動画だったり、小学校の時から書いている野球ノートを見返して、その時の感覚を思い出したり、そういったものを全て振り返っていました。

――小学校から野球ノートをつけられているのですね

 そうですね。毎日ではないですが、気づいたことがあったらメモしています。

――自粛期間の練習は、どのようにされていましたか

 グラウンドが使えない状況だったので、素振りがほとんどメインでしたね。あとは体幹トレーニングを行なっていました。

――野球以外で自粛期間にハマったことはありましたか

 リフティングです。たまたま寮にサッカーボールがあったので、チャレンジしました。サッカーをやったことは全くなくて、公園で友達と遊ぶ程度の経験だったので、体育の授業のリフティングテスト以来でした。

――うまくできましたか

 そうですね。日に日に上達していって、両足でのリフティングはできるようになりました。

――身体能力の高さを感じます。最近の趣味やマイブームはありますか

 最近は本を読んでいます。野村監督(故・野村克也氏)の本を読んでいますね。あとは「テニスの王子様」を最初から全部見ましたね。アニメはほとんど見ないのですが、(テニスの王子様には)中学校の時に少しハマったので、自粛期間に見直そうかなと思ったら、もう一回ハマりました(笑)

「一球への集中力」


昨秋の立大2回戦で1年春以来の出場を果たした丸山

――最近の練習で意識されていることはありますか

 リーグ戦の日にちが決まったので、それに向けて感覚を取り戻そうとしています。自粛期間で実戦感覚がほとんどなくなったので、それをできるだけ戻せるように心がけて練習しています。

――今年は変則的な試合形式となりましたが意識していきたい点はありますか

 一球の重みが1試合になったことでより大きくなったかなと思います。3試合だと次の試合があると考えてしまいますが、1試合しかないのはトーナメントと変わらないと思うので、さらに一球への集中力、一振りへの集中力を心がけたいと思います。

――いよいよリーグ戦が始まりますが、注目している、マークしている大学や選手はいますか

 特にマークしてはいないですが、各校にいい選手はいますし、特にプロ注目の選手からはヒットを打ちたいですね。

――リーグ戦での個人目標を教えてください

 全打席出塁したいなと思っています。それは不可能かもしれませんが、一打席一打席その気持ちでやっていきたいなと思っています。ベストナイン取れれば嬉しいですね。

――最後にリーグ戦への意気込みを聞かせてください

 自分が早稲田大学に入ってまだ優勝を経験していないので、イレギュラーな大会かもしれませんが、一試合一試合チーム全員でまとまって優勝できるように、その1つのパーツになれるように、頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 中島和哉)

◆丸山荘史(まるやま・さとし)1999(平11)年6月8日生まれ。178センチ、78キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部3年。内野手。右投左打。小学校から現在に至るまでに、9ポジション全てを経験済みだという丸山選手。リフティングも然り、その適応能力の高さが、ファーストをものにした要因なのかもしれません。