フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)は4日、シングルス準々決勝が行われた。 この大会では順位にかかわる2つの戦いが繰り広…

 フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)は4日、シングルス準々決勝が行われた。

 この大会では順位にかかわる2つの戦いが繰り広げられている。世界ランキング1位の椅子を巡るノバク・ジョコビッチ(セルビア)とアンディ・マレー(イギリス)の争い、そして、シーズン最終戦「ATPファイナルズ」の出場権を懸けて最終コーナーに差し掛かったレースだ。

 前日までにダビド・ゴファン(ベルギー)、ルカ・プイユ(フランス)といった選手が最終戦のレースから脱落していった。一試合が終わるたびにポイントが変動し、情勢が変わる。そんなスリリングなドラマが連日繰り広げられている。

 動向を楽しんでいたファンは、主役の一人であるジョコビッチの敗退に大きな衝撃を受けただろう。これまで14勝0敗のチリッチに、世界ランキング1位がストレートで敗れたのだ。

 その敗戦を見届けてコートに登場した同2位のマレーは、苦しみながらもトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)を2セットで振りきった。

 2009年8月に初めて2位になったマレーが、7年越しの夢に王手をかけた。準決勝に勝つと月曜日に更新されるランキングでジョコビッチと入れ替わり、初めて1位の座を奪うことになる。

 今年の全仏で生涯グランドスラムを達成したことで「モティベーションの低下を感じた」というジョコビッチ。しかし、開幕前には「元気を取り戻した」と話した。大会の入りはスローペースだったが2つの勝ち星をつかみ、徐々にピッチを上げていくものと見られた。しかし、準々決勝の彼は本来の姿ではなかった。

 数字に端的に表れている。ジョコビッチのアンフォーストエラーは28本に達したが、チリッチの36本に比べれば小さな数字だ。しかしこの数字は、相手と比べるだけでなく自身のウィナーと比べるとまた違った意味が出てくる。チリッチのウィナーは27本。本来の攻撃を貫いた結果が27本のウィナーと36本のエラーだった。

 一方、ジョコビッチのウィナーは15本。ウィナーを量産するスタイルではない彼が、ウィナーの倍近い28本のエラーをおかしては勝ち目は薄い。

 第1セットは4-5からサービスゲームをブレークされ、第2セットは4-4から先にブレークしたものの、次のサービスでは連続ダブルフォールトの失態もあってゲームを落とす。第12ゲームでは相手のマッチポイントを2本しのぐ粘りも見せたが、タイブレークで力尽きた。

 「今日は彼のプレーが上回っていた。僕のプレーは勝てるレベルに達していなかった」

 ジョコビッチは失意を隠し、淡々と振り返った。

 15度目の挑戦で初めて白星をつかんだチリッチは、過去の連敗を意識せず試合に入ったと話した。

 「どの試合も新しい試合だし、スコアは0から始まる、そう思いながら試合に臨んだのが大きな鍵だった」

 このところ、充実ぶりが目立つチリッチ。2014年に全米を制したアタッキング・テニスが戻ってきた。今大会では2年ぶりのATPファイナルズ出場を確定させ、さらにジョコビッチを破る殊勲。また、この勝利で来週のランキングで自己最高を更新する7位以上を確定させた。たくさんのご褒美は、今のプレー内容に見合うものと言っていいだろう。

※スタッツはATPワールドツアーの公式動画サイト『テニスTV』の集計による

【シングルス準々決勝】※[ ] 数字はシード順位

○マリン・チリッチ(クロアチア)[9] 6-4 7-6(2) ●ノバク・ジョコビッチ(セルビア)[1]

○ジョン・イズナー(アメリカ)7-6(6) 4-6 6-4 ●ジャック・ソック(アメリカ)

○ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)[4] 6-2 7-6(4) ●ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)[11]

○アンディ・マレー(イギリス)[2] 7-6(9) 7-5 ●トマーシュ・ベルディヒ(チェコ)[7]

(テニスマガジン/ライター◎秋山英宏)