自分にできることを 女子200メートル平泳ぎでの東京五輪出場を目指す浅羽栞(スポ2=東京・八王子学園八王子)。個人での東京五輪出場権を得るためには代表選考会である2021年4月開催予定の日本選手権で派遣標準記録を突破し2位以内に入ること。女…

自分にできることを

 女子200メートル平泳ぎでの東京五輪出場を目指す浅羽栞(スポ2=東京・八王子学園八王子)。個人での東京五輪出場権を得るためには代表選考会である2021年4月開催予定の日本選手権で派遣標準記録を突破し2位以内に入ること。女子200メートル平泳ぎは今のところ、2分24秒18の2019年世界選手権の決勝進出タイムが選考基準となっている。浅羽は昨年の日本選手権では2位に入り、表彰台に上がっている。しかし派遣標準記録を突破できず、世界選手権の代表に入ることは叶わなかった。

2019年ジャパンオープンでも表彰台に上がった

 憧れの選手は女子200メートル平泳ぎの日本記録保持者でリオ五輪で優勝を果たした金藤理絵氏(アミューズ)。北京五輪に出場するもロンドン五輪の出場は逃し、初めての世界大会でのメダルが27歳にしてつかんだ五輪の金メダル。実力はありながら『苦労人』『遅咲き』などとも形容されてきた選手である。「リオ五輪のレースもその前の選考会のレースもすごく印象に残っていて、そうなれたら、と思ってきました」。また同じリオ五輪には浅羽と同世代の高校生スイマーも複数名出場していた。当時の気持ちを振り返って、「雲の上の存在としてレースを見ていた」「知り合いが出ている五輪はこういう感じなのか」という浅羽。無理もない。浅羽はリオ五輪の選考会である2016年の日本選手権では予選17位で準決勝にも進めなかった。

 しかしリオから東京へ、4年間で浅羽は大きく成長した。「4年前は選考会に出ようとか、準決勝に残ろうということを目標にしていたのが、今は選手権の決勝に残るのは当たり前で、更に表彰台を目指すという風になっているのは想像できませんでしたし、劇的な4年間だったなという風に思っています」。昨春早大に入学し、日本選手権やジャパンオープンの表彰台に初めて上がり「見える景色が一段階変わった」という着実な成果を得た。一方で9月の上旬の日本学生選手権(インカレ)は「『初めて』というくらいに良くなかった」大会となってしまい、得意の女子200メートル平泳ぎで6位に終わる。それでも「逃げたくても逃げられない状況で、諦めずに、自分なりに今できることをがむしゃらにやる」と最後まで自身の役目を全うし、自身の成長にも繋がったと感じている。

初めてのインカレは不本意な結果となった

 また高校3年生のときにはユース五輪ブエノスアイレス大会に出場している浅羽。ユース五輪は国際オリンピック委員会が主催し、2010年から4年に1度開催されている国際総合競技大会で歴史は比較的浅い。出場権が与えられるのは15歳から18歳と若いアスリートを対象としており、文化・教育プログラムの充実が図られ、「オリンピックの意義を実感し、友情や相互の尊重を表現できるようにすること」(日本オリンピック委員会)を目指している。早大水泳部では渡辺一平(平31スポ卒=現TOYOTA)も高校時代に2014年の南京大会で優勝を果たし、大学入学後はリオ五輪出場、世界記録更新とトップ選手への道を駆け上がった。

 2018年のブエノスアイレス大会では32競技241種目で実施され、浅羽はそこで女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得している。対象年齢の少なさ故、出場チャンスが少ないという点もこの大会の特殊さだが、選手にとってより大きな刺激となるのは、他の種目も同時に開催されるという点だ。「今まで出てきた大会には、他競技の方も同じフロアや部屋にいらっしゃるということはなかったので、『競泳の日本チーム』ではなく『日本』を1つの団体として臨もうとしていたのが違うんだなという風に感じました」とその経験を振り返る。

 東京五輪の延期が決まり、緊急事態宣言の発令を受け、多くの選手と同様浅羽も長く練習停止を強いられた。「そういうことが起きるなんて想像もしていなかったので、まず驚きがありました。ただこの状態でやるのはどうなのだろうか、という気持ちもありましたし、むしろ延期してやってくれるんだなと、良かったなという風にも思いました」と、五輪延期に困惑しつつ、安堵も感じていた浅羽。これから改めて、2021年の代表選考会に向け、不安定な状況で練習することにもあまり不安は感じていない。「もともとすごく泳ぐタイプではなく、泳ぎ込んで試合に向かっていくという仕上げ方じゃなかったので、練習状況に不安な要素はないですね。出せるものが出せたらいいなと。こういう状況でも、1年後もっと成長できるように考えて取り組めたらいいなと思います」とあくまで冷静に努力を重ねている。それでも試合がないことには、やはり懸念がある。試合で自分がどの程度の力を出すことができるか、という最も大事なことが想像でしか推し量れないのは困難であり対応していく必要がある。

2021年に向けて、練習を再開した

「去年よりも自信はあまりなかったですし、正直まだ詰められるところがあるなという感じでした」。東京五輪が延期となったことについても「あと1年あるという風に考えられるようになったのは良かったなと思います」とあくまでプラスに捉えている。まだまだ伸ばせるところはたくさんある。思いがけず生まれた猶予期間で、やりきったと思えるように。「選考会まで半年ちょっとですが、自分ができることをしっかりやっていきたいというのが1番にあります。順位も大事ですけどタイムをどれだけ縮められるか、派遣標準記録というのを目標にして、自分なりに後悔しないように、選考会や五輪に繋げられるように努力していきたいと思います」。

(記事 青柳香穂)