ルーキーイヤーから東京六大学リーグ戦(リーグ戦)のマウンドに立ち、数々の修羅場を乗り越えてきた百戦錬磨の男、今西拓弥(スポ4=広島・広陵)。最上級生となった今季も、彼の活躍が悲願のV奪回のためには欠かせない。そんな今西は例年にない状況の中…

 ルーキーイヤーから東京六大学リーグ戦(リーグ戦)のマウンドに立ち、数々の修羅場を乗り越えてきた百戦錬磨の男、今西拓弥(スポ4=広島・広陵)。最上級生となった今季も、彼の活躍が悲願のV奪回のためには欠かせない。そんな今西は例年にない状況の中で、何を思い、どのような練習を積んできたのか。1試合総当たり制という異例のリーグ戦への思いも含めて伺った。

※この取材は8月2日に行われたものです。

「打者との勝負がしっかりとできている」


オンラインで質問に答える今西

――今年は沖縄キャンプが中止になるなど例年にない日程を余儀なくされています。それによって身体面、精神面での調整の難しさはありましたか

身体面においては、グラウンドが使えないという状況で、例年通りの過ごし方ができずに難しいなとは思っていました。ただ、それを言い訳にしてはいけないと思っていたので、空いている場所を見つけてできる限り体を動かすようにはしていました。なので、練習できなかったから体が動かないといったことは全くないです。精神面に関しては、より自分と向き合えるような時間が取れたので、むしろマイナスになるようなことは一つもなかったのかなと思います。

――ご自身と向き合ったことによってどのような考え方になりましたか

コロナウイルスの影響で普段通りやっていた練習ができない状況で、どれだけ今まで当たり前のように野球をやらせてもらえていたのかということが分かりましたし、野球ができる楽しさも再認識することができて、自分としてはいい期間になったかなと思います。

――自粛期間中に1日をどのように過ごされていたのかを教えてください

自粛期間中は、できるだけ練習できていた頃と生活リズムを変えないように意識して過ごしていました。寮は閉鎖されずに残らせてもらえていたので、ある程度決まった時間に起床して、しっかりと1日3食とりつつ、体も動かしていたという感じでした。

――自粛期間中に新しく始めた趣味や息抜きは何かありましたか

結構アマゾンプライムで映画を見ていました。僕はもともとワイルドスピードが好きで、それが全シリーズ見られるようになっていたので、もう1回全て見返したりして、基本的に洋画を見る機会が増えたかなと思います。

――自粛期間中に行っていたトレーニングを具体的に教えてください

グラウンドが寮から近いので、グラウンドにあるトレーニング用具だったりを寮に持ち帰ってうまく場所を見つけてやったりしていました。あとはランニングはどんな状況でもできると思っていたので、近場の坂道や公園回りの外周などを活用して、なるべく人がいない時間帯を見計らってするようにしていました。

――全体で集まって練習できる機会が限られていたと思いますが、その中でチームメイトや捕手陣とのコミュニケーションはどの程度とれていましたか

自粛期間中でもキャッチャーの岩本(久重、スポ3=大阪桐蔭)とは同じ寮だったので、一緒に野球の動画を見たりしてむしろコミュニケーションをとれる時間は今までよりも増えたと思っています。

――ここまで練習試合を消化してきて、従来の感覚との違いはどの程度ありましたか

最初の方は実践感覚が少ない中でオープン戦に入ることになったのですが、下級生のころから数多く投げる機会をいただいていたので、あまりそういう面での心配はなかったです。

――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から個人的に何か指導を受けた点はありましたか

個人的には特に何も言われていないので、自分自身の力でどれだけやれるかを試してもらっているのかなと思います。自分の練習の仕方次第でいい方向にも悪い方向にも行ってしまう可能性があるので、しっかりと練習することを心掛けています。

――現時点でのご自身の状態は100点満点で点になりますか

まあ60~70点くらいかなと思います。開幕まで10日もないので、あとは最終調整をする段階なのですが、短期決戦なので、開幕日にピークを持っていけるようにやっているところです。

――現状のチーム全体の状態はどう見ていらっしゃいますか

投手陣はかなり状態が上がってきて、野手陣も最近は点も取り始めてくれているので、チームとしてはいい方向に行ってくれているのではないかなと思っています。あとは細かい部分を残り10日間で詰めていければいいのかなと思っています。

――夏季オープン戦での好投が続いていますが、ご自身の中で意識していることはなんですか

本当に今までは自分の投げたボールに納得がいかなくて、自分と戦ってしまっていた部分が大きかったのですが、最近はそんなことをいちいち考えていても仕方がないと考えるようになって、打者との勝負を強く意識するようになりました。自分とではなくて、打者との勝負がしっかりとできていることが状態が良くなってきている原因かなと思います。

――ここまでの練習試合では先発、救援とさまざまな起用のされ方が続いています。ご自身の中で投げる位置へのこだわりはありますか

こだわりは正直ありません。投げさせてもらえるところで自分のベストな投球をすることが大事だと思っています。任されたところで精一杯投げられるようにしたいです。

――国士舘大との練習試合では適時打も放たれましたが、打撃への意識はどういったものになりますか

本当にバッティングは苦手なので、特段意識していることはないのですが、簡単に三振してしまうと相手投手を助けてしまうことになるので、なるべく球数を投げさせることを心掛けています。

――昨年度も数多くマウンドに立たれて経験値も多く積まれたと思いますが、その経験を踏まえて今年に生かしたいことはありますか

最上級生になって、おそらく他の投手陣と比べても経験はかなりさせてもらったと思っています。その中で、これから下級生の投手がベンチ入りして登板機会を与えられることもが増えてくると思うので、彼らが焦ることにないように自分の仕事は当然全うしたうえで、声掛けだったりサポートだったりができればいいかなと思っています。

――ご自身の中でチーム内外でライバルを挙げるとすればどなたになりますか

ライバルというか、自分を奮い立たせてくれるのはやっぱり早川(隆久主将、スポ4=千葉・木更津総合)なのかなと思います。彼自身が何事にも一番真面目に取り組んでいて、背中で後輩たちを引っ張る姿勢を見せてくれています。そういうものを見ると彼に負けてはいられないですし、彼1人にチームを任せることになると厳しい状態になってしまうと思うので、僕自身もしっかりとそういう姿勢を見せられるようにしていきたいです。

――今年中に成し遂げたいことはありますか

個人的にはあまりありませんが、チームの優勝に貢献したいという思いが強いです。去年の秋のリーグ戦で自分がチームに迷惑をかけてしまった部分があったので、その借りを返したいですし、チームに助けてもらった分その恩返しができればいいのかなと考えています。

――卒業後の進路の希望について教えてください

プロ志望届は提出したいと考えています。やはり野球を始めたころからプロ野球に対しての憧れがあって、その夢を叶えることができる可能性があるので、それに向かって最後の夏と秋で結果を残せるように頑張りたいです。

「投手陣が頑張ることが特に大事」


昨秋の早慶3回戦に先発した今西

――今年のリーグ戦が行われる時期は例年秋季リーグに向けた調整をしている段階だと思いますが、その時期に違いに関しての違和感などはありますか

正直違和感は全くないです。むしろこのご時世で公式戦が完全に中止になっているリーグがある中で1試合総当たりでもやらせてもらえることには本当に感謝していますし、そのありがたみを感じつつ戦いたいと思います。

――秋に向けた調整もやはり変わってくるのでしょうか

多分変わってくると思います。ただ、現時点ではチーム全体としても自分としても10日から行われるリーグ戦を見据えて戦っているので、そこまではまだ考えられないです。

――1試合総当たりという異例な日程となる今リーグ戦ですが、それに対して前向きに捉えているのはどのような点ですか

本当にリーグ戦を1試合でもやらせてもらえるだけでもありがたいです。あと強いてあげるとすれば、期間が短いので調整が楽になるかなと思っています。今まで基本的に2か月間あってその中で調整し続けるのは難しいところがあったので、そこはかなり前向きに捉えています。

――逆に懸念点を教えてください

逆に調子が上がらなかった場合に短期間でそれを修正するのが難しいのかなと思っています。

――ご自身が特に注意したいと考えている対戦校はどこですか

やはり慶応なのかなと思います。どんなチームであろうと慶応には絶対に負けられないというところがあるので、特に警戒するとなるとそこになるのかなと思います。

――例年リーグ戦の締めくくりとして行われている早慶戦がこのリーグ戦では5試合中4試合目に戦うことになります。それに対してどのようにお考えですか

毎年早慶戦を迎える頃にチームの雰囲気がさらに良くなって、状態が良い中で戦えているところがあります。今回の場合は最初の3試合を勝つことができればいいかたちで早慶戦に入れると思うので、順番が前に来たことでマイナスになることはないと思っています。

――この春季リーグ戦で早大が優勝するために必要なことは何だと思いますか

自分自身が投手だというのもあると思うのですが、とにかく点を取られないようにバッテリーでしっかりとやっていくことが大切だと思います。特に短期決戦では、どの大学も多く投手をつぎ込んでくる可能性があって、野手としては難しいところが大きいと思うので、自分たち投手陣が頑張ることが特に大事だと考えています。

――春季リーグ戦での個人目標を数字面とそれ以外の面の2つから教えてください

やっぱり数字面では防御率でゼロに近い数字を出せるように頑張りたいです。また、今の自分たちの代は優勝を経験できていないので、優勝して次の後輩たちにいいかたちでバトンタッチしたいですし、勝ってみんなで喜べるようにしたいです。

――ありがとうございました!

 

(取材・編集 篠田雄大)

◆今西拓弥(いまにし・たくみ)
1998(平10)年6月22日生まれ。200センチ、90キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。投手。1試合総当たり制のため、総力戦が予想される今季。今西投手が先発、中継ぎとフル回転し、平成27年秋以来の優勝へと突き進みます!