インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若…

インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。

文・写真=斎藤寿子

 次回、日本で開催が予定されている男子U-23世界選手権での活躍が期待されている知野光希(新潟WBC)。彼と同じく今年4月に大学生となり、ジュニアの強化・育成選手の一人が、伊藤明伸(宮城MAX)だ。まだ出場機会は少ないものの、日本選手権(18年より天皇杯を下賜)11連覇中のチームの一員でもある。中学3年から始めた車いすバスケットボールへの思いや目標を聞いた。

一瞬で魅了された車いすバスケ


 下肢に麻痺がある伊藤は、物心ついた時から車いすで生活をしていた。小学生の時から何度か家族に障がい者スポーツを勧められたこともあったが、スポーツにはほとんど興味がなかった。というよりも、車いすの自分がスポーツをしているところを想像することができなかったのだという。だから、一度も障がい者スポーツを見たことさえなかった。

 そんなある日のこと、中学校の体育の先生から勧められたのが車いすバスケの体験会だった。先生に勧められて無下に断るわけにもいかない。伊藤は「行くだけ行ってみようかな」という軽い気持ちで、体育館を訪れた。

 すると、そこで目にした光景は、想像していたのとはまったく違うものだった。

「え!?すごいかっこいい!」

 伊藤は衝撃に似た感動を覚えた。それもそのはず、体験会を開催していたのは、地元の仙台市を拠点とする宮城MAX。当時、すでに前人未踏の日本選手権8連覇を達成しており、チームには日本を代表する選手たちがズラリと顔をそろえていた。男子日本代表チームのキャプテンは3代続けて、同チームから輩出されるほどの強豪。華麗で迫力あるプレーに、伊藤は目を丸くした。

 最も印象に強く残っているのは、当時リオパラリンピックを目指す男子日本代表のエースでキャプテンだった藤本怜央(宮城MAX)だった。

「怜央さんが、ハーフラインあたりからシュートしたんです。『え!?車いすに乗ったままで、こんなに遠くまでボールを飛ばせるの?』ってビックリしました」

 すっかり車いすバスケに魅了された伊藤は、チームの練習に顔を出すようになり、しばらくして正式に加入した。

背中を押してくれる日本を代表する先輩たち


 チームに加入して、ちょうど4年。まだまだ先輩たちに太刀打ちできるレベルにはない。今はひたすら先輩たちのプレーを目で、頭で、体で学び、吸収している。

 目標としているのは、同じローポインターの藤井新悟HCと、現在の男子日本代表のキャプテンを務める豊島英だ。

「新悟さんは、パスの精度がとにかく高いんです。ここでボールを受けたらシュートしやすいというところにピンポイントでパスがくる。それとリーダーシップがあって、新悟さんに声をかけてもらうと、すごく安心できるしモチベーションがアップします。豊島さんは、何といっても守備力。豊島さんと1 on 1をやると、僕は一歩も動くことができません。それと、視野が広くて、先を読む力があるんです。あれだけ速攻に走れるのは、そういうところが優れているからなのかなと思います」

 だが、実は2、3年前、伊藤はなかなか上達しない自分にふがいなさを感じ、車いすバスケへのモチベーションが下がったことがあった。しかし、ちょうどその時、藤本にこう言われたという。

「オマエがいないと、チームは勝てないんだぞ」

 現在は11連覇と王者に君臨し続けている宮城MAXだが、30代、40代が大半を占めている現状の中、若手の台頭が課題となっている。チームの中で、10代は3人。チームにとって貴重な若手の一人である18歳の伊藤への期待は大きい。

 昨年12月に地元の仙台市で開催された「会長杯」では、MVPに選ばれ、大きな自信となったという伊藤。バスケ歴はまだ4年と経験は浅く、技術的にも粗削りな部分が多い。しかし、だからこそ伸びしろしかないと言っても過言ではない。一番の強みと考えているスピードを生かしたプレーに磨きをかけ、まずは先輩たちに追いつくつもりだ。

(Vol.6では、伊藤選手が注目している選手をご紹介します!)