現在、メキシコ・モンテレイで開催されている「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」には、WBSC世界ランク1位の日本を筆頭に、世界各地から12チームが参加している。野球と言えば、どうしても北中米やアジアを中心とした環太平洋地域が中心にな…

現在、メキシコ・モンテレイで開催されている「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」には、WBSC世界ランク1位の日本を筆頭に、世界各地から12チームが参加している。野球と言えば、どうしても北中米やアジアを中心とした環太平洋地域が中心になってしまうが、それ以外の地域でも少しずつではあるが競技人口は増えている。

■U-23代表を率いる坂梨監督、オーストリアに渡って13年

 現在、メキシコ・モンテレイで開催されている「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」には、WBSC世界ランク1位の日本を筆頭に、世界各地から12チームが参加している。野球と言えば、どうしても北中米やアジアを中心とした環太平洋地域が中心になってしまうが、それ以外の地域でも少しずつではあるが競技人口は増えている。今回ヨーロッパからはチェコとオーストリア、そしてアフリカからは南アフリカが参加。強豪チームとの力の差は歴然としているが、それでも国際大会に出場できる貴重なチャンスを生かそうと、試合終了の声が掛かるまでは懸命のプレーを続けている。

 日本と同じグループBに所属していたオーストリア。日本とは4日目に戦い、0-16で5回コールド完封負けを喫した。世界ランク33位のオーストリアを率いるのは、日本人の坂梨広幸監督。大学で野球をしていた13年前に、山口で行われた世界少年野球大会にスタッフとして参加した際、そこで知り合ったオーストリア人に請われてオーストリアへ渡ったという異色の経歴の持ち主。2009年から首都ウィーンにあるアマチュアリーグのヴィエナ・ワンダラーズで選手兼監督を務め、2010年からは代表チームの運営に関わるようになったという。

「まだまだ選手のレベルは高くないです。それでも13年前に比べればレベルは大分上がりました。今回U-23の代表メンバーになっている選手は、ほとんどがU-18から代表入りしている選手で、国内リーグでは1部に所属するチームでプレーしています。中には、アメリカの大学に野球をするために進学する選手もいます」

 オーストリアの野球・ソフトボール人口は、老若男女合わせて約5000人ほどいるという。国内のアマチュアリーグは3部まであり、1部に所属するのは6チーム。ヨーロッパと言えば、サッカーが主流だが、野球の認知度も徐々に上がってきたそうだ。それでもスポーツ用品店に野球の道具は打っていないために、インターネットで購入したり、練習のためのグラウンド確保に苦戦したり、まだまだ苦労は絶えない。

■斎藤監督もエール、母国・日本に完敗も「選手たちが何かを感じ取ってくれたら」

 現在、オーストリアはヨーロッパ内でも決して強い方ではないという。実際、今大会に出場したもう1つのヨーロッパチーム、チェコは世界ランク14位。その他、オランダ、イタリア、ドイツといったチームが強豪として考えられている。縁あって出場のチャンスを得た今大会で、坂梨監督は「選手が何かを感じ取ってくれれば」と話す。

「1つでも勝てれば儲けもの。でも、オーストリアの国内リーグでは、5連戦だったり、9日間に8試合をしたり、という経験すらもできない。こういった新しい体験を通じて、そして強豪国と対戦する経験を通じて、選手たちが次につながる何かを感じ取ってくれたらいいと思います」

「胸を借りるつもりでぶつかりたい」と話していた母国・日本戦では完膚なきまでに叩きのめされた。だが、この敗戦が次につながれば、決して無駄な負けにはならない。

 2020年には東京オリンピックで野球が正式種目になった。「オーストリア代表を連れて東京オリンピックに出るなんて、夢のまた夢」と笑うが、参加を目指して戦う欧州選手権にはU-23のメンバーも多数参戦。メキシコで世界と戦い、肌で感じた“差”をどうやって埋めたらいいのか、選手1人1人が高い意識を持って練習に臨めたら、そこに道は開けるかもしれない。

 侍ジャパンU-23代表を率いる斎藤雅樹監督は「監督会議の時にちょっとお会いしたんですけど、ビックリしました。野球が普及していないところにおられるんで大変だと思いますけど、これからどんどん強くなっていってもらえたらいいと思います」とエールを送った。

 前例がない場所で道を切り拓いていくことは大きな苦労を伴うが、それと同時に充実感にもあふれる。いつか再び日本代表と戦う日が来たら、少しでも爪痕を残せるような戦いができるようにチームを成長させていきたい。