◆再開後、改めて予想した今季「J1全順位」 暗いトンネルの出口が見えない。 J1第6節、鹿島アントラーズは湘南ベルマーレに0-1で敗れた。 前節、横浜F・マリノスに4-2と勝利し、開幕戦からの連敗を4で止めた鹿島だったが、せっかくの今季…
◆再開後、改めて予想した今季「J1全順位」
暗いトンネルの出口が見えない。
J1第6節、鹿島アントラーズは湘南ベルマーレに0-1で敗れた。
前節、横浜F・マリノスに4-2と勝利し、開幕戦からの連敗を4で止めた鹿島だったが、せっかくの今季初勝利も反転攻勢のきっかけにはできなかった。
湘南ベルマーレに0-1で敗れた鹿島アントラーズ
「(湘南が)もっと前から(プレスに)くると思っていた。相手が(守備のときに)引いたので、そこは用意したところと違っていた」
鹿島のキャプテン、MF永木亮太がそう振り返ったように、前線からの積極的な守備が持ち味の湘南にしては、選択された戦い方は慎重なものだった。
永木が「サイドチェンジがあまり有効ではなくなった」とも話していたが、そもそも前線からプレスをかけてこないのでは、それをかいくぐったうえで相手の守備が手薄になる逆サイドへ展開、という狙いも意味を持たなくなってしまう。
なるほど、多少なりとも誤算はあったのだろう。
しかしながら、相手の湘南は、昨季J1参入プレーオフの末に辛うじてJ1残留を果たしたものの、主力選手が次々に移籍流出。今季は相当な苦戦が予想されるクラブである。本来的な両者の実力、あるいは格のようなものを考えれば、少々の誤算が大きく戦況を変えるとは思えなかった。
ところが、結果は湘南の勝利。永木が続ける。
「(相手に引かれた)そのなかで崩していかないといけなかったが、アタッキングサードでのミスが、特に後半は多く、そこからカウンターを受けた。(相手にやられたというより)自分たちのミスがまだまだ多い」
鹿島は連勝を逃したばかりか、今季まだ勝利がなかった湘南に初の勝ち点3を献上。しかも、この試合がJ1デビュー戦だった湘南の19歳、GK谷晃生に無失点勝利までプレゼントしてしまった。
鹿島のザーゴ監督が「ひとつのチームが守備をし、ひとつのチームが攻撃をする。予想どおりに試合は展開した」と振り返ったように、試合は概ね鹿島がボールを保持するなかで進んだ。要するに、主に攻めていたのは鹿島のほうだった。
特に後半は、湘南ゴールに迫る機会を増やし、59分にはFW上田綺世がゴールポストを叩く惜しいシュートも放っている。
「先制点のチャンスも、追加点のチャンスも、いっぱいあった」
そう語るザーゴ監督の言葉を、強がりとばかりは言い切れない。
66分に湘南最初のCKから先制されたあとは、さらに攻撃姿勢を強め、得点につながっても不思議はないチャンスを何度か作っている。
結果がすべてと言ってしまえばそれまでだが、内容的に言えば、それほど悪い試合ではなかった。
加えて言えば、チームが苦境にあえいでいるにも関わらず、指揮官が目先の結果にこだわり、焦る様子がないのも好感が持てた。
リーグ戦再開後の第2節から直近の第6節まで、5試合すべてに先発出場したのは、GKクォン・スンテとCBのふたり、犬飼智也、町田浩樹だけだ。今季初勝利を挙げた前節からも「いいときは変えるな」の言にとらわれず、先発メンバー4人が入れ替えられた。
「メンバー選考を変えることで、チームとしての選択肢が増える」(ザーゴ監督)という考え方は、長いリーグ戦を、まして今季のような超過密日程を戦い抜くうえでは不可欠なものだろう。
とはいえ、である。
必ずしも内容と結果が結びつくとは限らないにしても、1勝5敗はいくらなんでも負けすぎだ。しかも、ひとつの引き分けもなく、5敗を喫し、そのうち1点差負けが3つ。競り合いでの弱さが、どうにも鹿島らしくない。
当然、結果が出ない試合が長く続くことは、いい影響を及ぼさない。
ザーゴ監督は「やっていることは間違っていない。しっかり取り組んで結果につなげたい」と話すが、選手は勝てないことで精神的余裕を失い、疑心暗鬼に陥ることもあるだろう。主力に他クラブからの移籍組が増えるなか、勝って当たり前という”常勝軍団”の看板が、余計な重荷にすらなりかねない。
加えて、鹿島が戦力的には充実していて選手層も厚いとは言っても、突出した実績や経験を持った選手がいるわけではない。
前節2ゴールの上田をはじめ、高卒ルーキーのFW染野唯月などは、確かに将来性を感じさせる有望株ではあるが、若い彼らにチーム浮沈のカギを握らせてしまうのは酷というものだろう。
湘南戦を見ていても、確かに鹿島の選手は粒ぞろい。平均点は高い。湘南のFW岩崎悠人が「(鹿島は)技術のある選手が多く、プレッシャーをかけても外されることが多かった。うまいなっていう印象はあった」と語っているとおりだ。
しかし、その実態はというと、攻めてはいても決定機は少なく、必然、得点も少ないのが現実だ。
鹿島のサッカーは、よくも悪くもオーソドックス。基本的なことをバランスよくこなすなかで、選手個々が自分の力を発揮する。それが、鹿島の強さではある。だが、裏を返せば、複雑な連係を煮詰めているわけではない以上、戦術的にも今後、飛躍的な上積みがあるとは考えにくい。
よく言えば、”粒ぞろいでどこからでも攻められる”チームは、悪く言えば、”これと言った決め手がない”。そこに、下位低迷の要因がある。
J1の歴史を振り返れば、優勝候補だったはずのクラブが、まさかのJ2降格の憂き目に遭うことが珍しくない。
彼らの実力はこんなものじゃない。いずれは上がってくるに違いない。
誰もがそんなことを思って動向を眺めているのだが、そうしたクラブは結局、最後まで悪い流れを変えられないままに、シーズンを終えてしまうのだ。幸いにして今季はJ2降格がないとはいえ、鹿島が同じような状況にならないとは限らない。
選手は粒ぞろい。内容は悪くない。
そんな見立てが何の慰めにもならないことは、過去の歴史が教えている。