世界の美しき女子サッカー選手たちはこちら>> 7月22日、日産スタジアム。横浜F・マリノスの背番号11、遠藤渓太(22歳)は、同じ街のライバルである横浜FCを4-0で下した試合後、ヒーローインタビューに答えている。1得点1アシストで、そ…
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7月22日、日産スタジアム。横浜F・マリノスの背番号11、遠藤渓太(22歳)は、同じ街のライバルである横浜FCを4-0で下した試合後、ヒーローインタビューに答えている。1得点1アシストで、その力を示した。
「チームが調子を取り戻すためにも、結果が出せてよかったです。(水沼)宏太君が(交代で)入って、”クロスでいいボールが来る”というのはわかっていた。いつもと違って左足でしたけど、あまり得意ではないヘディングで合わせられました。(アシストは)ラッキーでこぼれたんですけど、仕掛けた結果だと思います。エジ(エジガル・ジュニオ)もいい位置にいてくれました」
遠藤は簡潔に説明した。そのプレーも言葉と同じく、理にかなっていた。自然で無駄がない。いい状態の時の彼は、そこに面目躍如がある。
横浜FC戦で1ゴール1アシストの活躍を見せた遠藤渓太(横浜F・マリノス)
「ドイツ・ブンデスリーガ1部のウニオン・ベルリン(2019-20シーズンは11位)への移籍が決定的」
試合翌日、その報道が出た。はたして、遠藤はドイツで羽ばたけるのか?
遠藤は、横浜FMの下部組織で育っている。2016年にプロ1年目の18歳でデビューし、リーグ戦は23試合に出場。2017年にはリーグ戦出場は減ったが、U-20ワールドカップで決勝トーナメント進出に貢献している。2018年には定位置をつかみ、ルヴァンカップでは新人王に値するニューヒーロー賞を受賞した。2019年には、自己最多のリーグ7得点を記録し、リーグ優勝に貢献している。
森保一監督が率いる東京五輪世代の代表メンバーにも定着。昨年12月には、E-1選手権で代表デビューを果たした。将来が嘱望される選手であることは間違いないだろう。
遠藤のプレーは、スピードとテクニックが融合している。左サイドを中心に周りと連携しながら、攻撃を作り出す。右足でボールを持って、中に切り込む形もひとつの武器とする。いわゆる「逆足」(利き足と違うサイドでプレー)で、外からのクロスだけでなく、中に入って切り崩すプレーを得意とする。典型的な現代的サイドアタッカーだ。
逆足のサイドアタッカーは、今や世界のサッカーシーンをリードしている。リオネル・メッシ(バルセロナ)、サディオ・マネ、モハメド・サラー(リバプール)、ラヒーム・スターリング、リヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)、ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)らは、崩すプレーだけでなく、得点力も出色。攻撃型のチーム編成では欠かせない。
そして日本人選手は、このポジションで垂涎の的になっているのだ。
レアル・マドリードが所有権を持つ久保建英は、その筆頭格と言える。スペイン1年目で、マジョルカの攻撃をけん引。右サイドをスタートポジションに、自在に中央に切り込み、割って入れるファンタジスタだ。
他にも、2019-20シーズンに欧州でプレーした逆足の日本人アタッカーは枚挙にいとまがない。スペインの乾貴士(エイバル)、安部裕葵(バルサB)、ポルトガルの中島翔哉(ポルト)、オランダの堂安律(PSV)、中村敬斗(トゥウェンテ)、ベルギーの三好康児(ロイヤル・アントワープ)、スコットランドの食野亮太郎(ハーツ)など、人材豊富だ。
日本人の持っている俊敏性と高い技術は、欧州でも大きな利点になっている。爆発的なスプリント力はないが、素早さを反復して先手を取れる。また、ボールを止め、動かす技術に長けるだけでなく、多くの選手がコンビネーションも使えるのだ。
遠藤も、”注目の日本銘柄”と言えるだろう。
横浜FC戦も、持ち味を発揮していた。アシストしたシーンでは、自ら仕掛け、一度はボールを奪われかけたが、取り戻し、1対2の局面をすり抜けている。ラストパスも完璧だった。
得点のシーンでは、右からのクロスに対し、相手ディフェンスの背後を取って、しっかりヘディングでコントロールした。簡単に映るが、サイドアタッカーがファーポストにタイミングよく入る動きは、戦術眼が必要となる。逆サイドでボールを持った選手が下がったら、前のスペースを狙う釣瓶(つるべ)の動きだが、メッシはパサーの時もフィニッシャーの時も、その質が高い。
遠藤のセンスが顕著に出たのは、前半17分の場面だろう。エリア内で巧みに動いて縦パスを受け、反転からの右足シュート。ボールは右へ逸れていったが、”瞬殺”だった。動きの質、コントロールなどは瞠目すべきレベルで、頭が整理されているのだろう。あえて言えば、これを枠に飛ばすことができるようになれば、ステージは上がるはずだ。
遠藤は次節、7月26日の北海道コンサドーレ札幌戦が、横浜FMでの最後の試合となる可能性が高い。