専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第265回 冷静に考えて、来年の東京五輪開催はどうなんでしょうか?気持ち的には開催してほしいと思っていますが、周りの状況を見回してみれば、ネガティブな情報であふれかえっています…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第265回

 冷静に考えて、来年の東京五輪開催はどうなんでしょうか?

気持ち的には開催してほしいと思っていますが、周りの状況を見回してみれば、ネガティブな情報であふれかえっています。

 そこで、いろいろな情報を整理して、開催の是非を考えてみます。そして、開催するなら完全な形での開催を目指すのか、あるいは、オリンピック開催に最大の意義を見出して、規模の縮小など譲歩できる点があるのか、考察してみたいと思います。

 加えて、ゴルフは屋外型のスポーツで、新型コロナウイルスに感染する可能性も少ないと言われていますが、オリンピックのゴルフ競技はどう展開されていくのか。また、もし五輪が中止になった場合、何かしら大会を代替開催できないのかも考えてみます。

◆東京五輪のネガティブ情報
・いまだ終息しない”コロナショック”
 7月に入ってからも、新型コロナウイルスの感染者数は、いまだ増加傾向にあります。アメリカの他、ブラジルなど南半球で感染者が増えています。

 そもそも開催国となる日本でも、「第2波が来ている」と言われていて、まったく先が読めません。

 楽観的に考えたとしても、ワクチンや治療薬が完成して、新型コロナウイルスの感染拡大が終息するのは、この冬。それから、オリンピックの準備をして、はたして間に合うのでしょうか? 結構、厳しいスケジュールですよね。

 さらに、選手選考の問題もあるし、選手の練習不足も懸念されます。だいたい、海外からの入国制限がいつ解けるのか、という問題があります。

 また、新型コロナウイルスではありませんが、アフリカや中東で起こったバッタの大量発生がインドへとたどり着いて、中国まで飛び火しそうな勢いです。ひょっとしたら、そこからバッタの大群が日本にまで来るかもしれない――そんな話まで出てきています。オリンピック開催へのネガティブ情報は尽きません。

・延期になっても夏開催の謎
 猛暑の東京五輪開催については、散々問題視されていたにもかかわらず、延期になっても、また7月末から8月中旬の”猛暑”開催となりました。

 これについては、アメリカのプロスポーツのビッグイベントが行なわれていない時期での開催を、多額の放映権料を払っている欧米メディアが強く要望するため、という噂がまことしやかに囁かれています。再び同じスケジュールになったことを考えると、その噂は本当だと思ってしまいますよね。

 ただ、来年の夏となると、アメリカのドナルド・トランプ大統領も、日本の安倍晋三首相も在任しているかどうかは不透明です。オリンピック開催は、政治的な決断によるところが大きいので、日米の政局が流動的となれば、まったく予測ができません。

 もし来年の東京五輪が11月開催であれば、完全な形で開催できる可能性も膨らむと思うんですけどね。アメリカPGAツアーのマスターズは今季、すでに秋開催に向けて、着々と準備が進んでいますし……。

◆五輪開催が新型コロナウイルスの感染拡大につながらないのか
 せっかく新型コロナウイルスの感染が収まったのに、オリンピックを開催することで、そこで感染者が出て、再び世界にまん延してしまった――そうなる可能性がないわけではありません。

 新型コロナウイルスが無事に終息したから日本は安全となっても、五輪開催となれば、観戦に訪れるお客さんは世界中からやって来ますしね。

 また、世界中からお客さんが来るということは、検疫の問題もあるでしょう。お客さんはもちろんですが、選手に陽性反応が出て入国拒否をした場合、政治的な問題になったりして……。「ウチの国ばかり厳しい。嫌がらせだ」とか言って、文句を言われる可能性も……。

 あと、「誰かにウイルスをうつされるかもしれない」とか、多くの人々が疑心暗鬼になって騒ぎ出したりしたら、オリンピックを楽しむどころではありません。

 先日、マレーシアへのゴルフ取材の計画を練っていたのですが、マレーシアのほうから「日本は感染者が多いから(日本からの入国は)ダメ」と言われてしまいました。「嘘だろ、日本は大丈夫だよ。むしろ、現地のほうが危ないんじゃない」と思って調べてみたら、マレーシアは比較的感染者が少なかったという事実に直面……。

 たぶん、私が思ったように、世界中の多くの人たちは、自国のことを棚に上げて比較検討するから、なかなか人の行き来が進まない。これも、懸念されます。実際、日本からの渡航制限をしている国はたくさんありますからね。




1年後に延期された東京五輪。コロナ禍にあって、完全な形で開催できるのでしょうか...

◆完全な形で開催されない場合
 仮に、オリンピックが完全な形で開催されない場合はどうなるのか? 無観客、あるいはキャパの2~3割の観客だけを入れて試合をするのは、可能なのでしょうか?

 欧米の人たちがテレビでオリンピックを楽しむ、という意味では、可能だと思います。IOC(国際オリンピック委員会)としても、放映権料さえ稼げれば、問題ないでしょうし。

 ただ、オリンピックをやっている現場の東京は、海外から選手や観戦者を受け入れることで感染拡大も懸念される状況下で盛り上がるのか? そこが問題ですけどね……。

◆ゴルフ競技はどう開催するか
 ゴルフ競技だけを考えた場合、会場の霞ヶ関カンツリー倶楽部にギャラリーを少しだけ入れる、あるいは、メディアと関係者のみで運営する、ということはできると思います。

 前回のリオデジャネイロ五輪では、ゴルフ競技の会場はギャラリーがさほどおらず、スカスカでした。それでも、何の問題もなく試合は行なわれ、きちんと世界中に放映されましたからね。

 ギャラリーが2000~3000人規模なら、そこそこ盛り上がる絵柄も取れるし、ウイルスの感染対策や健康管理上も、問題は少ないでしょう。

 とはいえ、オリンピックにおいて、(実施競技を絞った)部分開催の可能性は低いでしょう。屋外競技だけやる、というのは不平等ですし、「オリンピック精神に反する」といった意見も出てくるかもしれません。第一、IOCが規模の縮小は「NG」と言っているみたいですからね。

◆東京五輪の開催が中止になったら…
 もしそうなったら、さまざまなケースが考えられると思うのですが、有志が集まっての記念大会、思い出の大会をやってもいいのではないでしょうか。この夏中止になった高校野球の甲子園大会が、代替開催でこじんまりやるといったアイデアに近いですね。

 その点、ゴルフは屋外大会ですから、選手たちがオリンピックの日程を予定に組んでいたら、すんなり日本で試合ができます。

 その時は、オリンピックのイメージを払拭するために、開催会場の霞ヶ関CCではやらない、というのもアリでしょう。日程的に残暑の時期だと思うので、軽井沢72ゴルフあたりで、涼しくラウンドしてもらえばいいと思います。もちろん、参加できる範囲の選手たちでね。

 その試合は、テレビでも放送して、CMもバンバン入れて、ある程度お金を稼いでもらいたいですね。そして、その収益の多くを、新型コロナウイルス撲滅のために寄付する、ということになれば、選手のみなさんも大義名分が成り立って、参加しやすくなるのではないでしょうか。

 東京五輪まで、まだ1年あると思っていますが、開催の可否は今年中には決めないといけないでしょう。

 東京では、すでに第2波が来ていると言われ、新規感染者の数が連日200人以上という有り様。状況は極めて厳しいです。無理をして、強硬に開催して非難を浴びるよりも、名誉ある撤退をするのも、作戦のひとつです。

 逆に、早々に開催を断念して、その代わりに、次のプランを練る作戦もあります。1944年に開催予定だったロンドン五輪は、第二次世界大戦によって中止。1948年に繰り越しで開催されました。同様に、2024年大会を東京五輪にするという案も、無きにしも非ずではないでしょうか。

 そうして、2024年のパリ五輪は、2028年にズラして開催してもらう。これぞ、政治的決断じゃないですか。

 東京五輪を4年後に伸ばす決定をして、その後、安倍首相が勇退したら、それはそれで、なかなかがんばった首相として評価されると思うのですが。いかがでしょう?