> 新型コロナウイルスの影響で3カ月遅れの開幕となったスーパーGTは、7月19日に富士スピードウェイでシリーズ第1戦が開幕。新型マシンが多数登場し、待ち望んだファンから大きな注目を集めた。開幕戦を制したトヨタの新マシン「GRスープラGT…

 新型コロナウイルスの影響で3カ月遅れの開幕となったスーパーGTは、7月19日に富士スピードウェイでシリーズ第1戦が開幕。新型マシンが多数登場し、待ち望んだファンから大きな注目を集めた。


開幕戦を制したトヨタの新マシン

「GRスープラGT500」

 ほかのスポーツ競技と同様に、スーパーGTも新型コロナウイルスへの警戒を最大限に高めたなかで開催。40チーム以上がレースに参加し、大会期間中は関係者だけで2000人を超えることもあるスーパーGTでは、徹底した感染防止および水際対策がとられた。

 開幕14日前からチームやドライバーのみならず、サーキット従業員を含む大会関係者やメディア全員に対して健康チェックを実施。体温を含む健康状態を毎日午前中のうちに提出することが求められ、それらはGTアソシエイション(GTA)の山口孝治メディカルデリゲートがすべてチェックした。

 発熱症状など何らかの異変があった場合はすぐに確認が行なわれ、発熱者が1日で解熱したとしても用意されたガイドラインに従ってGTA側から入場禁止措置がとられた。実際、発熱が確認されたメディア関係者もいて、土壇場になってサーキット取材の許可が取り下げられるケースもあったという。

 もちろん、大会期間中は全員マスクを着用。記者会見では飛沫防止のためのアクリル板設置やソーシャルディスタンスの確保が徹底され、二重三重に網を張るチェック体制を徹底するなか、ついに開幕戦が幕を開けた。

 GT500クラスは今季から新車両規定『Class1』が導入された。その規定に沿った新型マシンをトヨタ、日産、ホンダの3メーカーは用意してきたが、なかでも注目は、ミッドシップからFRとなったホンダのNSX-GT。直前テストで好タイムを記録し、開幕戦の優勝候補として名乗りをあげた。

しかし、ホンダGTプロジェクトリーダーを務める佐伯昌浩は「厳しいスタートになる」と言った。

「コロナウイルスの影響でテストが数回中止になり、先日の富士テストでやっと2020モデルが出来上がったという印象です。ここからはレースをしながらクルマを煮詰めていく……という戦い方になると思います。

 スープラ(トヨタ)は十分に安定していて、余裕を持ってテストをしているのが、こちらからも見てとれました。GT-R勢(日産)もテストでトラブルは出ていましたけど、十分に速さを持っていると思います」

 この予感は、残念ながら見事に的中することになる。

 公式練習と予選Q1は、開幕前テストと同じくホンダNSX-GTがトップを死守していたが、Q2に入ると流れは一変。トヨタ勢が好タイムを叩き出し、ホンダ勢を抑えて平川亮/ニック・キャシディのKeePer TOM’S GR Supra(ナンバー37)がポールポジションを獲得した。

 さらに午後の決勝レースで、スープラが本領を発揮する。

 37号車はスタートから後続を圧倒する走りを披露し、一時は24秒もの大量リードを築く。その後、後続のアクシデントによるセーフティカー導入でアドバンテージは失ったが、終盤もライバルをまったく寄せつけない力強い走りを見せて、見事に開幕戦を制した。

 一方、レース序盤に2・3番手につけていたホンダ勢は、予想以上に暑いコンディションになったこともあり、後半になると劣勢に。予選では上位に食い込む健闘を見せたNSX-GTだったが、終わってみればスープラにトップ5を独占されてしまった。

 決勝でのスープラの快進撃を、37号車の平川はこう分析する。

「上位にいたホンダ勢は同じブリヂストンで、どの種類のタイヤを使っているかわかっていました。暑くなって(タイヤを持たせるのが)厳しくなるのもわかっていたので、はじめの数周だけ踏ん張れれば引き離せると思いました」(平川)

 開幕戦はテスト時のように雨がらみの天候で、気温20度ほどのコンディションになると思われていた。しかし、予選Q2あたりから天候が急速に回復。決勝レースは気温32度、路面温度40度に達する真夏のコンディションとなった。

 トヨタ勢は暑いコンディションになることを想定し、ホンダ勢にとっては天候の回復が誤算となってしまった。予選2番手でスタートを切ったものの、最終的に8位でフィニッシュしたARTA NSX-GT(ナンバー8)の野尻智紀はこのように振り返る。

「開幕前の富士テストも雨上がりで、3月の岡山テストもすごく寒かった。そういった状況だとNSX-GTがうまく機能していた。逆に(気温の高かった)セパンテストでは劣勢だったかなと。

 気温が上がってきたときの対応が、今後はもう少し必要かと思います。今回の決勝は(気温が上がったことで)かなり状況が変わり、想像以上に厳しかった。正直、決勝レースでは(スープラに対して)優っている部分を見つけるのが難しいくらい……かなりの衝撃でした」

 次戦は上位入賞者にウェイトハンデが課されるため、スープラが独走を続けるのは難しいだろう。決勝で悔しい思いをしたホンダ、さらには開幕戦で上位に食い込めなかった日産勢の巻き返しに期待したい。