ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)率いるラグビー日本代表は10月29日、31日から活動するツアーメンバー32名を発表。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場でワールドカップイングランド大会4強のアルゼンチン代表とテストマッチ(国際間…

 ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)率いるラグビー日本代表は10月29日、31日から活動するツアーメンバー32名を発表。11月5日には東京・秩父宮ラグビー場でワールドカップイングランド大会4強のアルゼンチン代表とテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこない、以後は欧州遠征に出かける。

 グラウンド最後尾のFBの定位置は、松島幸太朗が担うか。アルゼンチン代表戦の見どころをこう明かした。

「我慢勝負になる。まずはディフェンスをしっかりして、安定したセットプレーを求めて、BKはきちんと(止めを刺す)。ディフェンスでは、相手を走らせたくないので早めにシャットダウンする(大外へのパスコースなどを防ぐ)のがキーになってくると思います。極力(ラインスピードを)上げていきたいです」

 10月30日、東京・駒沢陸上競技場。代表合宿合流前最後のトップリーグ(国内最高峰)の試合に出た。背番号15をつけ、クボタとの第9節を38-0と制した。

 持ち前のランニングスキルを発揮した。相手ボールキックオフの直後にも再三、守備網を突破する。

 さらに後半4分には、スタンドを大いに沸かせた。敵陣10メートル線付近のスクラムを味方が押し込むなか、スピードに乗ってパスを受け取る。目の前で凸凹になった守備網が左右の揺さぶりに弱いのでは、と見て、「ランか、裏へのキックを…」。結局、細やかなフェイントで2人のタックラーの間をすり抜ける。カバーに回った防御もかわし、インゴールまで駆けた。直後の小野晃征のゴール成功もあって、スコアを26-0に広げたのだった。

 間もなく、日本代表が宿泊する都内ホテルへ直行。帰り際にはこう言い残した。

「まずはリカバリーをして、できるだけ身体をフレッシュに近い状態に戻したい。もしリフレッシュした状態ではなくとも、試合勘はある」

 10月31日に秩父宮でおこなわれた合宿初日練習は、完全非公開となった。松島が最後に代表の練習着をまとって公の場に出たのは、25日の第2回合宿最終日にさかのぼる。

 ここではウォーミングアップの延長で、ランとは別な長所を覗かせた。7~8名が1チームを作ってグラウンドの一定区画内を動き回り、スペースへパスやキックなどをつないでゆくゲームで、松島は攻めては防御の死角へ顔を出し、守っては危険地帯のパスコースを防いだ。

 その場の動きを振り返るなか、松島は本職への思いを明かすのだった。

「スペースを探すのはFBの仕事。ボールを持っていない時にもどこが空いているかを見つけて、周りに伝えていきたいです。(ジョセフHCのもとでは)なるべくラック(ボール保持者が倒れた接点)を作らず、オフロード(タックルされながらのパス)でつないで…と言われている。速いラグビーをすることは(前体制と)変わらないです」

 昨秋のワールドカップイングランド大会では、WTBとしてプレー。複数ポジションをこなせる器用さも売りだが、桐蔭学園高時代から親しんだFBへの愛着は強い。思いを叶えるべく、普段から「オフ・ザ・ボール」の動きも磨く。弱冠23歳にして、ナショナルチームの枢軸になりつつある。(文:向 風見也)