FCバルセロナはリーガエスパニョーラ3連覇を逃した。2019-20シーズンのブラウグラナはピッチ内外問わず問題の多いシーズンだった。10個の主な負のエピソードを振り返る。 1. アドゥリスのチレーナ(オーバーヘッドキック) サン・マメスでの…

FCバルセロナはリーガエスパニョーラ3連覇を逃した。2019-20シーズンのブラウグラナはピッチ内外問わず問題の多いシーズンだった。10個の主な負のエピソードを振り返る。
1. アドゥリスのチレーナ(オーバーヘッドキック)
サン・マメスでのリーグ開幕戦、バルサにとっては難しい条件の揃ったスタジアムだった。後半アディショナルタイムの土壇場で、今季最高のゴールといっても過言ではないアリツ・アドゥリスに見事なチレーナを叩き込まれた。結果的にこのゴールは彼のキャリア最後の得点となった。開幕黒星スタートは、その後の悪いシーズンを予兆するものだった。そして、メッシが開幕前の怪我で欠場、ルイス・スアレスが前半で負傷し、最後のプレーでウスマン・デンベレも負傷した。試練の始まりだった。
2. デンベレの怪我
エルネスト・バルベルデはリーグ戦5試合しかフランス人ウインガーを起用できなかった。セティエンがベンチに座った12月からは全試合を欠場している。11月下旬のボルシア・ドルトムント戦で右足の大腿二頭筋に重傷を負ったフランス人選手は手術を受けて5ヶ月間の離脱を余儀なくされた。デンベレはメッシと共にスピードに乗ったドリブルや一対一を個で打開できる数少ない選手である。彼の3度にわたる離脱は大きな痛手となった。
3. クラシコの延期
10月26日、当初の予定ではバルサ対マドリーの初戦が行われるはずだった。しかし、カタルーニャ州独立問題による約35万人が大規模な抗議デモを実行。ツナミ・デモクラティックマウントの脅威によってクラシコは延期を余儀なくされ、12月18日に変更された。
バルサは4ポイント差でマドリーをリードしており、当時公式戦は6連勝、リーグ戦に関しては3試合無失点を継続していた。12月に試合が行われた時には、序盤の低調だったマドリーは調子は上向いており、バルサはカンプ・ノウでスコアレスドローに持ち込まれた。
4. アビダルの1月
1月の移籍市場ではスポーツディレクターのエリック・アビダルが失敗の原因となった。カタールに出向きチャビ・エルナンデスの説得に尽力したフランス人は、最終的に監督人事を複雑なものにした。カンテラーノであるカルレス・ペレスをローマ(後に完全移籍)へ、カルレス・アレニャをベティスへ貸し出した。ルイス・スアレスの離脱によって9番を失ったバルサは、デンベルの長期離脱による特例法が認められ、レガネスからマルティン・ブライトバイテを獲得したが、その場凌ぎの解決策も成功しなかった。
5. バルベルデの後任
定期的に休暇を与えるなど選手からの信頼は厚かったバルベルデだが、前年のリヴァプールとのCL準決勝での大惨敗や低調な試合内容を理由に解任論が高まり、1月のスペイン・スーパーカップ準決勝のアトレティコ戦で敗戦後にクラブを後にした。当時チームはマドリーとの勝ち点差なしの首位だった。チャビの監督就任拒否を受けた後、最終的にキケ・セティエンがブラウグラナのベンチに座った。カンタブリアの監督は様々なシステムを駆使してチームに色を加えようとしたが短時間での適応には無理があった。アシスタントコーチのエデル・サラビアの試合中の暴言などもクローズアップされ、次第に求心力は失われていった。
6. ベルナベウでの敗戦
キケ・セティエンはベルナベウでのクラシコを2ポイント差の首位で到着した。勝利は5ポイント差と直接対決の優位性が際立つリーガのレギュレーションで大きな意味をもつはずだったが、蓋を開けてみれば2-0という内容以上の惨敗。その後の試合でマドリーがベティスに敗れた為、首位に返り咲いたが、クラシコでの成績が最後まで足を引っ張ったことは否定できないだろう。
7. コロナウイルスのパンデミック
コロナウイルスによるパンデミックは3月上旬からサッカー界を完全停止に追い込んだ。バルサはこの中断を首位で迎えた。フランスのリーグ・アンやスペイン女子リーグ、ハンドボールのように早期打ち切りでシーズンが終わればバルサはチャンピオンになっていたかもしれませんが...まだ11試合が残っており、経済的な利益を考えてもシーズン継続は納得できるものだった。それでも3日に1試合を限られた戦力でやり繰りしなければならないバルサにとっては拷問のようなものだった。2ヶ月間の停止と短すぎるプレシーズンで選手達のフィットネスは完璧ではなかった。
8. 中断明けの失速
再開後の11試合のスケジュールは、マドリーよりもバルサの方が難しかった。いずれにしても、全勝は困難であることが予見できた。バルサは3試合目のセビージャ、5試合目のセルタと6つ目のカンプ・ノウでアトレティコと引き分けてしまい、マドリーに4ポイント差をつけられた。チャンピオンズを争う2チームと残留を争っていた下位チームとの極めて難しい試合で勝点を落としたバルサは16日のオサスナ戦で敗れ力尽きた。マドリーは全ての試合で3ポイントを重ね、非の打ち所がなかった。
9. メッシとスアレスによる依存
バルサはあまりにも多くの試合でゴールを欠いていた。17人の異なる選手がラ・リーガで得点を挙げているものの、結局近年のブラウグラナはメッシとスアレスに依存してしまっている。最初の5シーズンでリーグ平均26ゴールを残したルイス・スアレスは、10試合の欠場もあり15ゴールに留まった。メッシの場合は、23ゴール20アシストという記録が示す通り、不満など一切ない。しかし、彼の出来が試合に大きな影響を与えすぎている。メッシとのホットラインを形成しているのはジョルディ・アルバのオーバーラップ、スアレスとのゴール前の関係だけで、他の選手との得点パターンは成熟していない。メッシはクラブに忠誠を示し続けてきたが、必要以上にチームの責任を背負わされることに疲れ始めている。
10. VAR
中断明けから、VARは制度的な見直しが必要なほどより多くの場面で執拗に介入した。そしてマドリーは恩恵を受けた。VARによって多くのペナルティを獲得した一方でレアス・ソシエダ戦ではヤヌザイのゴールがオフサイドになり、アスレティックとのアウェーゲームではラウール・ガルシアを踏みつけたセルヒオ・ラモスのペナルティが見逃された。バルサはVARによってリーガを失うのではなく、マドリーは彼らのおかげで勝つことができたのだ。VARの定義をより一層明確にする必要があるだろう。
いずれにせよ今シーズンのバルセロナはバルサゲートをはじめとしたクラブ内部での騒動がピッチ内の選手達に大きく影響を及ぼしたように思える。オサスナ戦後にメッシが語ったように「一貫性のない弱いチーム」だったのだ。イレギュラーなシーズンは8月にチャンピオンズが残っており、2014-15シーズン以来のビッグタイトルを獲得するために、19日17時(日本時間20日0時)のアラベス戦に向けてすでに気持ちを切り替える必要がある。