FC東京・高萩洋次郎のインタビューはこちら>><堅く守って、裏を狙う> 2019シーズン、FC東京は堅牢な守りと苛烈なカウンターを徹底し、優勝争いを演じている。前半戦は、久保建英が違いを示せていたことも大きかったが(6月末にレアル・マドリー…

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<堅く守って、裏を狙う>

 2019シーズン、FC東京は堅牢な守りと苛烈なカウンターを徹底し、優勝争いを演じている。前半戦は、久保建英が違いを示せていたことも大きかったが(6月末にレアル・マドリードへ移籍)、質実剛健と言える戦いで勝ち点を稼いでいた。しかし最後は、攻撃的なサッカーで躍進した横浜F・マリノスを前に、膝を屈することになった。

 2020シーズン、FC東京は悲願の優勝を勝ち取れるのか。王者・横浜FMとの一戦は、ひとつの試金石になるはずだ。



昨季の王者、横浜F・マリノスを破って喜ぶFC東京のイレブン

 7月12日、日産スタジアム。FC東京は横浜FMの本拠地に乗り込んでいる。プレシーズンから取り組んできた4-3-3ではなく、昨シーズンまでの4-4-2に回帰。堅守をよりどころにした。

 しかし横浜FMは、自慢の攻撃力でFC東京の先手を取る。徹底的に研究をしていたのだろう。日本代表の橋本拳人が構える分厚い中央ではなく、サイドからの攻撃に活路を見出す。そして4分、天野純からのパスを右サイドで受けた水沼宏太が、絶妙なクロスを送る。ニアでオナイウ阿道がマークを引っ張り、ファーから遠藤渓太が入り、先制点を突き刺した。

 FC東京は劣勢に立たされた。両サイドからの攻めを受け、守りがぐらつく。ペースをつかむことができない。

 しかし13分だった。FC東京は、開幕以来、守備面の脆さが目立つ横浜FMの隙を突いた。縦パスをディエゴ・オリヴェイラがフリックで右に展開。これを室屋成がダイレクトで、裏へ走った田川亨介に送る。抜け出した田川は後ろからチアゴ・マルチンスに倒され、PKを獲得。これをディエゴ・オリヴェイラが決め、同点に追いついた。

 その後も、FC東京は左サイドの守りが手薄で、綻びが出ていた。経験の浅い左サイドバックの中村帆高が、水沼を前に後手に回った。19分には、短いパスをいくつもつながれ、水沼にサイドから決定機を作られている。守備は万全とは言えなかった。

 しかし42分、FC東京は自陣から丁寧にボールをつなぐ。右の室屋からの長いパスでディエゴ・オリヴェイラが抜け出し、GKにファウルで止められる。決定機だっただけに、イエローカードではなく、レッドカードでもおかしくなかった。これで得たFKを、レアンドロが右足で右上に叩き込んだ。

 激しいジャブを打ち込まれ、ロープ際に追い込まれていたが、カウンター一発でひっくり返した形か。

「自分たちのサッカーをして、全体的には良かった。ただ、好機を生かし切れず。カウンターで相手にチャンスを作られてしまった」(横浜FM/アンジェ・ポステコグルー監督)

 そして後半、開始早々だった。FC東京はGK林彰洋が蹴ったボールを、敵陣で永井謙佑が受け、右サイドに流れると、逆サイドへクロス。ファーに走り込んでいたレアンドロがボレーで3点目を叩き込んだ。

「永井から、いいボールが来るのを信じていた」(FC東京・レアンドロ)

 カウンターの連動は、FC東京の大きな武器と言えるだろう。

 2点をリードしたFC東京の守備は、強固さを増していた。相手にボールを持たせながら、危険区域には入れさせない。中央の守備の堅さが、懸念材料だった左サイドも安定させた。中村は試合の中で成長する気配を見せ、カウンターの起点にもなった。守る中で最善の戦う術を見つけ、各選手がプレーを改善させる。それが長谷川健太監督率いるFC東京の本質だ。

「前節(川崎フロンターレ戦)は、1点取られた後、選手たちが”しゅん”となってしまった。しかし、今日は切り替えて戦ってくれた。攻守の切り替えや寄せの部分でアグレッシブになって、よくなっていた」(FC東京・長谷川監督)

 後半32分、長谷川監督は高萩洋次郎、ジョアン・オマリを投入し、布陣を5-3-2に変更。チームを”要塞化”した。攻撃陣を入れ替えてきた横浜FMの手を封じるように、サイドの守備も強化したのだ。

 FC東京はリードを守ったまま、1-3で勝利した。王者を跪かせ、昨季優勝を逃した留飲を少しは下げたと言えるか。戦い方の土台は今シーズンも健在だ。前線からの守備とカウンターの先鋒を務める永井の復帰は朗報だ。

 しかし、橋本のロシア移籍はすでに決まっている。堅守を司っていたのは、彼なのだ。

 橋本は、そのボール奪取能力が注目されるが、それは表出した技能のひとつに過ぎない。彼が正しいポジションを取ることで、敵の攻め手を限定させ、味方は優位を得て守りやすくなっていた。その点、移籍の痛手は計り知れないだろう。現メンバーに代わりとなる選手は見当たらず、戦い方そのものを変えざるを得ないかもしれない。

 次節、7月18日の浦和レッズ戦が、橋本のFC東京でのラストマッチになる予定だ。長谷川監督は、どんな采配を見せるのか--。勝利によって、見えてくる形もある。