南野拓実も悔しさを募らせたことだろう。 7月8日に行なわれたブライトン対リバプール戦で、南野は後半42分から途中出場。ブラジル代表FWロベルト・フィルミーノとの交代で4−3−3のCFに入り、6分のアディショナルタイムを合わせて約9分間…
南野拓実も悔しさを募らせたことだろう。
7月8日に行なわれたブライトン対リバプール戦で、南野は後半42分から途中出場。ブラジル代表FWロベルト・フィルミーノとの交代で4−3−3のCFに入り、6分のアディショナルタイムを合わせて約9分間プレーした。
ペナルティエリアで決定機を迎えた南野拓実
日本代表FWに決定機が訪れたのは2回。
後半45+4分、南野はファーサイドに走り込み、左SBアンドリュー・ロバートソンのクロスボールに合わせようとした。だが、直前のところで相手GKがカット。決定的なチャンスだっただけに、南野も両手を広げて悔しがった。
もうひとつの決定機は、後半45+6分に訪れた。ジェームズ・ミルナーの縦パスを、南野は半身の状態から前方にトラップ。素早く身体を前に移してマーカーを交わし、DFラインの背後に抜けた。だが、192cm・88kgの巨漢DFルイス・ダンクから体当たりを受けると、南野は体勢を崩し、シュートまで持ち込めなかった。
その直後に試合終了。いずれの場面もゴールに近づいたが、チャンスをモノにできなかった。
とくに、ふたつ目の場面は、南野の得意とするプレーだった。
味方から縦パスが入ると、「前方+マーカーの届かない」場所にボールをトラップ。素早く身体を前へ移し、ファーストタッチでDFラインの背後に飛び出した。日本代表やザルツブルクでも同様の流れから敵のマークを剥がし、フリーになってゴールを決めてきた。
このプレーに以前から注目していたのが、解説者を務めるエイドリアン・クラーク氏だ。現役時代にアーセナルでプレーした経歴を持つクラーク氏は、「パスを受けてからファーストタッチで前を向き、敵をかわしてシュート」のプレーを、南野の「最大の持ち味」と話していた。
「ドラッグバック(※足の裏でボールを引いてターンするフェイント)をうまく取り入れている。ファーストタッチで相手のマークを外し、決定的なチャンスを生み出している。俊敏性とテクニックを上手に生かしていると言えよう。
ペナルティエリア手前の位置で、このプレーを多用する傾向がある。相手DFにとっては危険なプレーであり、うかつに飛び込めない。南野の最大の持ち味だ」
振り返ると、ザルツブルクの一員としてプレーしたチャンピオンズリーグ・グループステージのゲンク戦(2019年9月17日)でも、縦パスからのファーストタッチで敵のプレスを剥がし、FWアーリング・ハーランド(現ドルトムント)のゴールをアシスト。
2018年9月2日のザルツブルク対アドミラ戦でも、味方のパスを受けるとクルリとターンしてマーカーをかわし、鮮やかにネットを揺らした。南野も、意識的に取り入れているのだろう。
ブライトン戦の決定機はゲンク戦のプレーに似ていたが、シュートを打とうとしたところで相手DFの体当たりで体勢を崩した。ゴールまでの流れはできていただけに、シュートできなかったことは悔やまれる。プレミアリーグ特有の当たりの激しさに適応していく必要がある。
その一方で、味方の選手が南野の動き出しに合わせて、パスを入れ始めているのはプラス材料だ。クラーク氏の言う「最大の持ち味」である「トラップ→前方に飛び出す」プレーが出たのは、リバプール移籍後、この試合が初めてのこと。チームメイトも、南野の特性を掴み始めている。
リバプール界隈では献身的な守備や前方からのプレス、ハードワークなどに評価が集まっているが、最大のストロングポイントはペナルティエリア周辺での危険なプレーだろう。その回数をいかに増やしていくか。
リバプールの残り試合は4。南野としてはこの4試合で、ゴールやアシストといった目に見える結果がほしい。実際、結果を残すことへのこだわりは、本人も口にしている。南野は以前、次のように語っていた。
「『この半年は様子を見ながら』みたいな雰囲気はあるかもしれないですけど、個人的にはチームでやっている以上、常にベストなものを目指す必要があると思う。僕の解釈だと、その答えは、やっぱり結果なので。常にそこを目指してやっています」
リバプールの次戦は7月11日に行なわれるバーンリー戦だ。
今季のリバプールは、マンチェスター・シティが持つシーズン最多勝ち点100まで8ポイントに迫っている。
ユルゲン・クロップ監督は「次戦に集中するまで」と記録更新を意識していないと語っているが、否定することで選手たちから余計なプレッシャーを取り除こうとしているのは想像に難くない。そのため、次戦も大胆なローテーションは行なわないかもしれない。
南野としては与えられた出場時間とチャンスのなかでアピールし、結果を掴みたいところだ。