失望の開幕戦から4日。 当然ながら、レッドブルとホンダのメンバーたちは忙しい日々を過ごしてきた。パドックでは急ピッチで作業が進められていた レッドブル側のエンジニアと連携しながら、ホンダのHRD SakuraとHRD UKでは、開幕戦…

 失望の開幕戦から4日。

 当然ながら、レッドブルとホンダのメンバーたちは忙しい日々を過ごしてきた。



パドックでは急ピッチで作業が進められていた

 レッドブル側のエンジニアと連携しながら、ホンダのHRD SakuraとHRD UKでは、開幕戦で2台ともに見舞われた電気系トラブルの原因究明に追われていた。

 木曜日にようやくサーキットでの作業が再開となり、エンジンに火を入れることが許された。トラブルに関連したパーツのうち、メンテナンス部品として交換が可能なものは決勝後に取り外して日本やミルトンキーンズに送り、現地テストで解析が進められている。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう説明する。

「何が起こったかはデータ上でわかっていますから、そこからさかのぼってどこを確認しなければいけないのか、この4日間でやっています。チームと一緒に解析を進めている一方、わかっていることに対しては対策を打って今週末のレースに臨みます。まだ解析中ですので、今日これからわかる部分もありますし、明日走る前までに考えられる原因をすべて解析・確認していく予定です」

 ふたつのハイブリッドシステムを搭載する今のF1パワーユニットは極めて複雑で、当然ながらその電気系は複雑極まりない。トラブルといっても様々な事象が起きており、そのひとつひとつをたどっていく作業は大変だ。

 インターバルが4日間しかないなか、ひとつのトラブルに対処するのも大変なことである。にもかかわらず、今回は2台それぞれに異なるトラブルが発生し、ふたつの問題究明を迫られることとなった。

 2台それぞれに何が起きたのかはわかっているが、なぜ起きたのか、それを究明しなければならない。すでに判明している箇所に対しては対策を打ち、新たにわかったことがあれば追いかけて対策を施していく。

「いろんなことが起こっているので、全部わかっているところもありますし、まだわかっていないところもあります。2台に関して100%、全部究明できているかというと、まだそうではない」

 金曜の午前11時にはフリー走行が始まる。それまでに原因を究明し、必要な対策を取らなければならない。HRD SakuraとHRD UK、そしてレッドブル・リンクにいる現地スタッフたちの間では、ギリギリまで時間との闘いが続くことになる。

 そしてレッドブル側も、第2戦に向けて宿題を抱えている。

 開幕戦オーストリアGPの予選では、メルセデスAMGに0.5秒もの差をつけられた。その大半は、ターン6〜10までの中高速コーナーでマシン挙動が不安定なことにあった。

 マックス・フェルスタッペンはこう説明する。

「データを見ると、僕らのほうが遅いコーナーはそんなに多くなかった。というよりも、ほとんどで僕らのほうが速かったんだ。でも、コーナー全体のマシンバランスがあまり満足のいく状態ではなかった。コーナーの入口からコーナーの中までね。

 このサーキットの高速コーナーでプッシュするためには、かなりマシンに自信が持てる状態でなければならない。だから今週はそのマシンバランスをいかに改善して、マシンに自信が持てるように問題を解決しなければならない」

 ただ、それを解決してもまだ予選のピークパフォーマンスではメルセデスAMGに及ばないだろうと、フェルスタッペンは言う。

 2月のバルセロナからここまでの間に、レッドブル・ホンダは車体とパワーユニットの両面でアップデートを施して来た。だが、メルセデスAMGはそれ以上に大きなステップを踏み、2月に彼らが抱えていた問題点をしっかりと潰し込んで来た。それが、開幕前の期待どおりの結果とならなかった理由だ。

 しかし、その差をもう少し縮めることができれば、予選では敵わなくても決勝ではトップ争いができるだろうとフェルスタッペンは言う。

「マシンバランスが改善できれば、間違いなく僕らはメルセデスAMGとのギャップを縮めることができる。それができたとしても、予選で彼らを打ち負かせるとは言わないよ。でも、予選で0.2〜0.3秒差くらいに迫ることができれば、決勝では戦うことができるはずだ」

 開幕戦では予選で0.5秒差をつけられても、決勝でメルセデスAMGの背後を走ることはできた。その差が0.2〜0.3秒なら、決勝では優勝争いも可能だというわけだ。

 アレクサンダー・アルボンは先週のレース終盤、セーフティカー導入で優勝のチャンスが舞い込みながらも、ルイス・ハミルトンとの接触でそれをフイにしてしまった。だが、アルボンもフェルスタッペンと同じように、マシンバランスが改善できれば上位とのギャップは縮められると自信を見せる。

 レース全体を通してみれば毎周0.5秒ほどの後れがあった。しかし、今週は違ったレースを見せてくれるはずだ。

「僕のマシンもマックスと同じように、FP1の段階からすでに挙動が不安定だった。ただこれは、マシン全体に関わる問題ではなくて、必要なのは小さな問題のファインチューニングだよ。

 各コーナーに対して少しずつ向上させることができるものだし、すでに週末のレースに向けてその改善も果たせているはずだ。僕らはそこに集中しているよ。先週欠けていた部分をしっかりとまとめ上げることができれば、結果はついてくる」

 ハミルトンとの接触については「起きてしまったことは仕方がないし、もちろんルイスも意図的に当てたとは思っていない。5秒加算ペナルティはいつものルールに則った妥当な裁定だ」としながらも、次にまた同じ状況に直面したとしても「100%同じことをやるよ。後悔はまったくないし、仕掛けるチャンスを待っているなんてあり得ない」と、勝利に対する貪欲さとアグレッシブさは失っていない。

 開幕戦ではつまずいてしまったレッドブル・ホンダだが、同じサーキットでまたレースが行なわれる今週末は、その失敗に対する対策の”答え合わせ”をする絶好のチャンスだ。

 パワーユニット、そして車体の両方が第2戦シュタイアーマルクGPの金曜フリー走行までにどれだけ対策が整っているか。

 その結果によっては、まだまだ今シーズンは捨てたものではないかもしれない。