J1リーグが再開した一戦で、ヴィッセル神戸はサンフレッチェ広島に0-3と完敗した。 試合は予想どおり、神戸が主導権を握ったが、広島がしっかりとブロックを作り、神戸の攻撃を跳ね返す展開となった。 相手がブロックを作って守ってくることは、神戸…

 J1リーグが再開した一戦で、ヴィッセル神戸はサンフレッチェ広島に0-3と完敗した。

 試合は予想どおり、神戸が主導権を握ったが、広島がしっかりとブロックを作り、神戸の攻撃を跳ね返す展開となった。

 相手がブロックを作って守ってくることは、神戸の選手もわかっていただろう。これまでなら、そこから徐々に圧力をかけ、アンドレス・イニエスタが一瞬のスキを突いて決定的なパスを出して先制する。それが神戸の勝ちパターンだった。



サンフレッチェ広島戦にフル出場したアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)

 しかし、広島はボールホルダーへの寄せが早く、神戸にチャンスらしいチャンスを作らせない。すると前半35分、広島が左CKをニアでハイネルがヘッドですらせたボールを、レアンドロ・ペレイラが押し込み先制する。

 神戸も前半終了間際に、イニエスタのスルーパスを受けた山口蛍の折り返しをドウグラスがフリーでシュートを打つが、DFに阻まれ、前半を0-1で折り返す。神戸はボールを支配していたが、ほとんど相手ペナルティエリアに入れなかった。

 後半3分、広島は川辺駿のスルーパスに抜け出した途中出場の浅野雄也が決め、リードを2点と広げる。

 ゴールがほしい神戸は、後半10分に渡部博文に代えて小川慶治朗、20分にセルジ・サンペールに代えて田中順也を投入する。すると、後半21分にドウグラスのフリーキック、後半31分にもイニエスタのミドルシュートとチャンスを作るが、いずれもGK大迫敬介に阻まれる。

 後半36分にレアンドロ・ペレイラがこの日2点目を決め、広島がトドメを刺した。終了間際の田中順也のボレーシュートも大迫に阻まれ、神戸は完敗だった。

 広島の方が一枚上だった。ブロックをしっかり作って神戸の攻撃を跳ね返した。スペースを与えず、少ないチャンスを確実にものにするしたたかさと、ゲーム運びのうまさは、神戸のサッカーを上回っていた。開幕戦では鹿島アントラーズに快勝しており、これで連勝。いいスタートを切った。

 この試合で気になったのはドウグラス。開幕戦よりは周りとの連係はよくなっている。ただ、彼は本当に神戸のサッカーに合うのかという疑問があるのだ。

 広島時代はツーシャドーの一角だった。清水エスパルス時代はFWだったが、どちらかというとサイドからのクロスに対してゴール前に飛び込んでくるタイプ。DFを背負ってもワンタッチで裏を取りシュートという形もある。周りにスペースがあった方が彼のプレーは生きる。つまり、カウンターのチームに合った選手ではないだろうか。

 神戸はポゼッションサッカーで相手を押し込み、細かいパスワークで狭いエリアを突く。この試合でも、パス交換をしたり縦パスが入っても、ぎこちないシーンがあった。イニエスタは何度もドウグラスを使うパスを出していたが、結果にはつながらなかった。

 引退や移籍でチームを去ったダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキ、ウェリントンの3人が昨季決めた24得点をどうやって埋めるのか。

 補強したのはドウグラスぐらい。彼ひとりで埋めるのは難しい。今夏に大物補強はあるのか。名前が挙がっていたマリオ・ゴメスは現役を引退した。ダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)には中東やアメリカのMLSからのオファーの噂がある。

 神戸自慢の攻撃力は発揮されていない。ドウグラスを生かすためにも補強は必要だろう。

 次節の相手はサガン鳥栖だ。鳥栖はここまでルヴァンカップを含め公式戦3試合無得点。攻撃の中心だったイサック・クエンカ(現ベガルタ仙台)、小野裕二(ガンバ大阪)、金崎夢生(名古屋グランパス)がチームを去り、第2節の大分トリニータ戦の先発メンバーは昨季から大幅に変わっていた。結果は2-0で敗れているが、侮ることはできない。前半は完全に鳥栖ペースで大分にチャンスらしいチャンスを作らせなかった。

 鳥栖のシステムは4-3-3。センターFWのレンゾ・ロペスが攻撃の起点となる。191㎝の長身で強さも兼ね備えている彼に当てて、ポストプレーから2列目の原川力、本田風智が飛び出してくる。ボランチにサンペール1枚を置く神戸にとっては、この2列目をどうやって捕まえるかがひとつのポイントとなる。

 また、右ウイングのチアゴ・アウベスにも注意したい。大分戦では、強引ともいえるドリブル突破で何度かサイドを突破していた。ペナルティエリアの外からでも果敢にシュートを打ってくる。マッチアップする酒井高徳がどうやって止めるかに注目したい。

 ここまで無得点とはいえ、鳥栖はどのチームよりも早く5月中旬に練習を再開しており、開幕戦に比べると状態は上向きだ。金明輝監督の全員がハードワークをするサッカーは健在だ。

 神戸は相手がどこであろうと自分たちのサッカーをするだけだろう。主導権は握れるに違いないが、どうやって鳥栖の守備を崩すか。広島戦と課題は同じだ。やはり頼りはイニエスタになる。過密日程のなかで、彼はどこまで自由に動けるか。

 メンバーを比べれば、神戸が勝たなければいけない相手である。ここで勝ち点を落とすようでは、上位進出はありえない。