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J1再開。今季限定ルールに見る有力チーム(3)

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 7月4日の第2節から再開されることが決まったJ1だが、新型コロナウイルスの感染リスクを減らすため、「移動負担減を目的とし、再開当初は東西分割開催」が採られることになっている。

 東は、コンサドーレ札幌、ベガルタ仙台、鹿島アントラーズ、柏レイソル、浦和レッズ、FC東京、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、横浜FC、湘南ベルマーレの10クラブ。西は、清水エスパルス、名古屋グランパス、ガンバ大阪、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、サガン鳥栖、大分トリニータの8クラブ。7月26日に行なわれる第7節までは、移動距離を短くするため、東西それぞれのクラブ同士で対戦する。

 状況を考えれば、賢明な判断である。だが、現実的に勝負を考えたときには、多少なりとも有利不利が生じるのも間違いない。

 東西に分けるといっても、東は関東だけで8クラブ、神奈川県だけで4クラブも集まっている一方、西は大阪と神戸に3クラブが集まっている以外は、比較的広範に散らばっている。単純に考えて東が、特に関東勢が有利だ。

 まして、今季は試合数こそ変わらないとはいえ、試合が行なわれる実質的な期間で言えば、例年より4カ月近くも短い。つまりは短期決戦という側面もあり、おそらく例年以上にスタートダッシュ(厳密には再スタートダッシュだが)が重要になる。

 加えて言えば、今季Jリーグでは、新型コロナウイルスの感染状況によっては全日程を終了できない事態も想定されており、その場合でもリーグ全体で75%以上、各クラブで50%以上の試合が実施されれば、今季リーグ戦は成立することになっている。1試合1試合が「34分の1」以上の重みを持つ可能性もあるのだ。

 つまり、東西分割開催は第7節までの期間限定と言えども、今季を占ううえでは重要なカギを握っている。

 そこで今回は、再開後の序盤戦を有利な条件で戦えるクラブ、すなわち、スタートダッシュの可能性が高いクラブを試合日程から探ってみたい。

◆第7節までの試合予定
※H=ホーム、A=アウェー。( )内はアウェーの対戦相手
【東】
札幌  /H=2試合、A=4試合(横浜FC、鹿島、湘南、仙台)
仙台  /H=3試合、A=3試合(湘南、横浜FC、柏)
鹿島  /H=3試合、A=3試合(川崎、浦和、湘南)
浦和  /H=3試合、A=3試合(仙台、FC東京、横浜FC)
柏   /H=4試合、A=2試合(川崎、浦和)
FC東京/H=2試合、A=4試合(柏、横浜FM、札幌、鹿島)
川崎  /H=3試合、A=3試合(FC東京、横浜FC、仙台)
横浜FM/H=3試合、A=3試合(浦和、鹿島、札幌)
横浜FC/H=4試合、A=2試合(柏、横浜FM)
湘南  /H=3試合、A=3試合(横浜FM、柏、川崎)

【西】
清水 /H=3試合、A=3試合(C大阪、神戸、鳥栖)
名古屋/H=2試合、A=4試合(清水、C大阪、大分、広島)
G大阪/H=3試合、A=3試合(名古屋、清水、神戸)
C大阪/H=3試合、A=3試合(G大阪、広島、鳥栖)
神戸 /H=3試合、A=3試合(鳥栖、大分、C大阪)
広島 /H=3試合、A=3試合(神戸、鳥栖、G大阪)
鳥栖 /H=4試合、A=2試合(大分、名古屋)
大分 /H=3試合、A=3試合(広島、G大阪、清水)

 まずは、すでに記したように、東の10クラブのほうが移動の面で有利なのは確かだ。飛行機や新幹線などの交通機関を使う移動は、何かと気を遣うはず。クラブ所有の使い慣れたバスだけで移動できるなら、さまざまな面で負担はかなり小さくなるだろう。




開幕戦では神戸相手に引き分けた横浜FC。今季J1の台風の目となるか

 とりわけ、有利な試合日程を手にしたのは、今季J2から昇格してきた横浜FCである。

 横浜FCは第7節までの6試合のうち4試合がホーム。しかも、アウェー2試合のうち1試合は、横浜FMとのダービーマッチである。移動という意味では実質5試合がホームゲームであり、残るアウェーの1試合にしても、相手は柏。絶好の試合日程だ。

 また、東西が合流する第8節以降を見ても、ひとまず時間や会場が確定している第13節までの6試合のうち、4試合がホーム。アウェーの2試合も、G大阪と清水が相手で比較的近場での試合となっている。

 横浜FCは、今季J1を占ううえでキーポイントとなりそうな3要素、すなわち「中3日以下での試合の成績」、「交代選手のゴール数」、「再開後の移動負担」の、いずれについてもプラス材料が多く、総合的に見て、最も追い風を受けそうなのだ。前例のないシーズンでサプライズを起こす条件がそろっている。

 同様に、湘南もまた、第7節までは3試合がホームで、アウェーのうち2試合は同県内の横浜FMと川崎が相手。残るアウェー1試合も柏戦。神奈川県勢が4つもあるメリットを最大限に享受している。

 第8節以降の6試合にしても、アウェーの広島戦があるとはいえ、その他のアウェーゲームは横浜FCとFC東京。こちらもかなり組み合わせに恵まれた印象だ。

 神奈川県勢以外では、第7節までにホームで4試合を戦える柏も有利な日程を手にしたと言えるだろう。

 対照的に、それほどメリットを得られなかったのが昨季の1、2位、横浜FMとFC東京である。ともに第7節までに、札幌でのアウェーゲームが組まれているうえ、FC東京は6試合中4試合がアウェーだ。

 昨季優勝を争った2強があまりメリットを得られなかった一方で、昨季16位の湘南、そして今季J2からの昇格組である柏と横浜FCが日程面を味方につける。こうした日程面の違いが、混戦模様に拍車をかけることになるのかもしれない。

 片や、西に目を向けると、当然のことながら、横浜FCや湘南ほどに恵まれたクラブは見当たらない。

 西の8クラブの中で最も日程に恵まれたのは、鳥栖。第7節までの6試合で、唯一ホームで4試合を戦える。ただ、アウェー2試合の相手は大分と名古屋。関東勢に比べると移動の負担は大きい。

 その他に挙げるなら、G大阪だろう。第7節までにホームが3試合で、アウェーの3試合にしても、相手は名古屋、清水、神戸。比較的移動のしやすい試合となっている。

 反対に、西のなかでも厳しい日程となったのは神戸である。

 第7節までに鳥栖、大分とのアウェー連戦があるうえ、大分戦は他の試合よりも1日早い開催のため、前の鳥栖戦からは中2日。鳥栖から大分へそのまま移動できるのは救いなのかもしれないが、それだけ遠征は長くなってしまう。

 また、名古屋も第7節までにアウェー4試合が組まれており、そのうち2試合は大分、広島への遠征。東に比べ、どうしても移動の負担が大きいと言わざるを得ない。

 しかしながら、ここまで触れてきた有利不利は、あくまでも移動面だけを考えたときの話である。

 昨季J1では上位4クラブを関東勢が占めた。また、今季昇格1年目ながら、台風の目として注目されているのは、柏である。東西分割開催とは、言い換えれば、そうした有力クラブがいきなり潰し合うということでもある。

 東の潰し合いを尻目に、西をうまく抜け出したクラブが再開早々首位を走る。そんな展開も十分に起こりうるだろう。

 今季のJ1は異例の状況下で再開されるシーズンとあって、正直なところ、何が起きるのか、予想するのは難しい。3つのキーポイントに注目しつつ、とにもかくにも再開してみてのお楽しみである。