J1再開。今季限定ルールに見る有力チーム(2)(1)はこちら>> 日本に限らず、世界中のクラブがトレーニングもままならない状況にあって、FIFAが今季限定の特別ルールとして各国に通達したのが、1試合の交代枠を3人から5人に増やすというも…

J1再開。今季限定ルールに見る有力チーム(2)

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 日本に限らず、世界中のクラブがトレーニングもままならない状況にあって、FIFAが今季限定の特別ルールとして各国に通達したのが、1試合の交代枠を3人から5人に増やすというものだ。

 7月4日に再開される今季J1でも、「選手の健康に配慮した交代枠の増加」は当然、軽視できないポイントとなる。

 日本の夏は高温多湿。夜の試合と言えども、酷暑のなかで行なわれることが当たり前になっている。まして満足なキャンプもできないまま、いきなり真夏にシーズン再開を迎えるクラブもあるとなれば、選手たちが体調不良やケガに見舞われる危険性は高くなる。

 交代枠が従来の3人のままであれば、試合終盤まで不測の事態に対応することも想定しておかなければならなかっただろうが、交代枠が5人に増えたことで、戦い方の幅はかなり広がるはずだ。

 リードを許している試合で、攻撃的な選手をまとめて投入するなどの変更はもちろん、例えば、ケガ明けの選手でも思い切って先発起用させ、仮に試合序盤で厳しいと判断すれば、早い時間に交代させる。そんな活用の仕方もできるだろう。

 加えて、5人まで交代できるとはいっても、交代機会はハーフタイムを除き、3回までと決められている。つまり、交代枠をフル活用しようと思えば、必然的に最低1回は「2枚代え」をしなければならなくなる。今まで以上に、交代選手が試合の流れを変えるケースが多くなるに違いない。

 そこで今回は、昨季公式戦(Jリーグ、天皇杯、ルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグ)を対象に、クラブごとの交代選手が決めたゴール数をまとめてみた。

 ただし、単に交代選手のゴール数だけを比べても、あまり意味がない。そこで勝ち点につながるゴール、すなわち、負けている状況での同点ゴールや逆転ゴールなどについても別途算出し、カッコ内に記した。

◆交代選手によるゴール数
チーム名 交代選手のゴール数(同点、逆転ゴール)/3点以上の得点者(ゴール数)
横浜FM=6(2)
FC東京=6(4)
鹿島  =8(6)/伊藤翔(4)
川崎  =17(5)/小林悠(5)レアンドロ・ダミアン(4)長谷川竜也(4)
C大阪 =9(2)
広島  =10(3)/パトリック(5)
G大阪 =13(1)/中村敬斗(3)
神戸  =7(3)/田中順也(3)
大分  =7(3)
札幌  =1(0)
仙台  =5(2)/ハモン・ロペス(3)
清水  =6(3)
名古屋 =11(5)/赤崎秀平(3)前田直輝(3)
浦和  =6(3)
鳥栖  =5(5)
湘南  =12(7)/野田隆之介(4)菊地俊介(3)
柏   =5(2)/マテウス・サヴィオ(3)
横浜FC=15(10)/戸島章(4)イバ(3)草野侑己(3)斉藤光毅(3)

 交代出場した選手のゴールが最も多かったのは、川崎フロンターレの17。昨季J1の16クラブの中では、ダントツと言っていい決定力だ。

 個人別でもFW小林が5ゴールを決めており、サンフレッチェ広島のFWパトリック(→ガンバ大阪)と並び、”交代ゴールの得点王”となっている。




昨季、途中出場で5ゴールをマークした小林悠

 一方、重要度の高いゴールに絞って見てみると、圧倒的に多いのが横浜FCだ。

 交代ゴール数でも15と、川崎に次ぐ2番目の数字なのだが、そのうちの実に3分の2が勝ち点獲得に大きく影響している。

 もちろん、そのほとんどがJ2での得点だけに、J1でもそのまま通用するかは疑問が残る。だが、昨季の”交代上手”ぶりは突出しており、その強みを特別ルールが採用される今季も存分に生かしたいところだ。

 その他では、昨季16位の湘南ベルマーレが12、同13位の名古屋グランパスが11と、下位クラブに交代選手のゴールが目立つ。しかしながら、湘南ではFW野田(→京都サンガ)、MF菊地(→大宮アルディージャ)、名古屋では赤崎(→ベガルタ仙台)と、殊勲者がクラブを離れているのは気になるところだ。

 対照的に交代選手のゴールがわずかに1と、最も少なかったのがコンサドーレ札幌である。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督はチーム作りには卓越した手腕を発揮するものの、選手交代で流れを変えるなどの戦略に長けたタイプではない。そうした傾向は、数字にもはっきりと表れている。

 同様に、昨季優勝の横浜F・マリノスと同2位のFC東京も、交代ゴールは6と比較的少ない。強いチームほど、すでにチームの戦い方が固まっており、あえて一か八かの勝負をかける必要がないとも言えるのだろうが、言い換えれば、せっかくの交代枠増加も、戦術変更という意味でのメリットは小さいのもかもしれない。

 ただし、全体的な傾向として言えるのは、交代ゴールが多いクラブであっても、スーパーサブに特化した選手が突出した数字を残しているわけではないということだ。むしろ、川崎の小林、レアンドロ・ダミアン(4ゴール)、広島のパトリック、鹿島アントラーズの伊藤(4ゴール)、横浜FCのイバ(3ゴール)など、各クラブのエース級FWが”交代出場でも”結果を残しているのである。

 過密日程のなかでは、主力選手だからといって、すべての試合に先発出場させていれば、いずれはそのツケが回ってくる。たとえエースストライカーであろうとも、試合によってはベンチに置き、勝負どころで投入する。そうしたメリハリのある使い方をうまくできるかどうか。そこにこそ、今季J1を戦ううえでカギがあるのではないだろうか。

 5人が交代出場できるということは、裏を返せば、先発出場したフィールドプレイヤー10人のうち半数はフル出場する必要がない、ということでもある。多くの選手をうまく使い回しながら、主力であっても、ときには先発で、ときには途中出場で活用していく柔軟性が必要になるのだろう。

(つづく)