テニスファンなら誰もが楽しみにしている「ウィンブルドン」は6月29日から始まるはずだった。だが数々の忘れられない瞬間や偉大な記録を残してきた大会は、史上3度目の中止となった。ウィンブルドンの歴…

テニスファンなら誰もが楽しみにしている「ウィンブルドン」は6月29日から始まるはずだった。だが数々の忘れられない瞬間や偉大な記録を残してきた大会は、史上3度目の中止となった。ウィンブルドンの歴史をTennis World USAが振り返っている。【動画】ウィンブルドンでベストショット集【動画】ウィンブルドンで珍場面、面白い出来事など

最初の2度の中止は世界大戦のせいで、今回はパンデミックのせいだ。だが「ウィンブルドン」は2003年に感染症に対する保険に加入していたので、経済的なダメージを被ることはない。

テニスの始まりは13世紀にフランスで始まったジュ・ド・ポーム(jeu de paume)という競技だと言われている。だが現在も行われているようなテニスの始まりは、「ウィンブルドン」と深く結びついている。

1874年に、ウェールズ人のウォルター・クロプトン・ウィングフィールド少佐という人物が、テニスのルールブックと、ラケットやネットなど芝生に設置してテニスを楽しめるセットを特許商品として売り出した。それにより、初期のテニスのルールが確立された。その後100年以上のテニスの歴史の中で、変化した部分もあるが、根幹はそのままだ。

1868年に創立されたオール・イングランド・ローン・クローケー・クラブがテニスに関心を持ち、後にオール・イングランド・ローン・テニス・アンド・クローケー・クラブとなった。同クラブの主催で最初の「ウィンブルドン」が開催されたのは、ウィングフィールド少佐の特許が終了した1877年だった。

約200人の観衆が、「ボレー」の発明者の一人であるスペンサー・ゴア(イギリス)が「ウィンブルドン」の最初の優勝者となるのを見守った。大会は人気を博して成長を続け、選手も観衆も報道も増え続けた。1884年には女子の大会も始まり、初代優勝者はモード・ワトソン(イギリス)だった。

大会の歴史の中でも異彩を放っているのは1879年の決勝だ。その対戦は英国国教会の牧師であったジョン・ハートリー(イギリス)と、後に殺人罪で逮捕されるヴェア・セントレジャー・グールド(アイルランド)の間で行われた。いわば神と悪魔の闘いで、勝利を収めたのは神だった。

第一次世界大戦後、テニスは既に世界的に有名で人気と格式あるスポーツで、黄金時代を迎えていた。当時男子テニス界を支配していたのはフランスの四銃士、ルネ・ラコステ(フランス)、アンリ・コシェ(フランス)、ジャック・ブルニョン(フランス)、ジャン・ボロトラ(フランス)だった。その後女子のスザンヌ・ランラン(フランス)、イギリス人のフレッド・ペリー(イギリス)が登場した。

当時のテニスは今とほぼ変わらないが、ゲームの間に選手がジンを1杯飲んでいるようなことはよくあった。

第二次世界大戦後は、まずアメリカ選手たちが、次にオーストラリア選手たちが台頭した。テニスがオープン化され大会にプロも出場できるようになると、「ウィンブルドン」の人気はさらに高まった。ロッド・レーバー(オーストラリア)、ビリー ジーン・キング(アメリカ)、ビヨン・ボルグ(スウェーデン)、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、ボリス・ベッカー(ドイツ)、マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)といった選手らは、世界のセレブリティになった。

オールイングランド・クラブも、コートも施設も拡大し、大会には先進技術が取り入れられている。ウィンブルドン・ミュージアムではテニスの世界的な成長を見ることができる。シュテフィ・グラフ(ドイツ)、ピート・サンプラス(アメリカ)、ロジャー・フェデラー(スイス)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(イギリス)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)らが1990年以降の「ウィンブルドン」の歴史を彩ってきた。

2009年にはセンターコートに、雨天でも試合ができるよう開閉式の屋根が設置された。2019年にはコート1にも。そしてやはり2019年には、ファイナルセット12-12でのタイブレークが導入された。

また大会は「持続可能」であることを目指し、ストリングを張り替えたラケットに以前使用されていたビニール袋をやめた。コート周辺には観客にゴミの分別方法を教える人員を配置。水のボトルなど、100%リサイクル可能な製品を使用している。

今年は過去の大会の名シーンやトリビアを振り返るしかない。だが2021年にはまた生の「ウィンブルドン」の興奮と感動を味わえることを祈ろう。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「ウィンブルドン」男子決勝戦の様子

(Photo by Simon Bruty/Anychance/Getty Images)