BSテレ東で6月27日に放送された「卓球ジャパン!」は、「伝説の激闘ついに決着!奇跡と呼ばれた大番狂わせ」と題して、2000年世界卓球男子団体決勝戦で、当時最強の中国をスウェーデンが破った歴史に残る名試合の完結編を放送した。

世界チャンピオン4人による世紀の頂上決戦。中国が孔令輝(世界ランク2位)、劉国梁(同3位)の24歳コンビを擁するのに対し、スウェーデンは33歳のパーソン(同9位)、34歳のワルドナー(同10位)が中心で、下馬評では中国の圧倒的有利だった。





ゲストは、Tリーグのチェアマン松下浩二氏。現役時代にこの大会で15年ぶりの団体銅メダル獲得に導いたエースは語る。「中国は本当に穴がなかった。劉国梁、孔令輝が出なくても優勝するぐらい層が厚かった」

 第1試合でワルドナーが5戦未勝利の劉国梁を大接戦で下し、第2試合は終始攻めたパーソンが、分の悪い孔令輝をストレートで破ってまさかの王手をかけた。



しかし、ここから中国が強さを見せる。第3試合は劉国正が、この年のヨーロッパ王者になるスウェーデンのP.カールソンにストレート勝ち。

第4試合は、硬さの取れた孔令輝がワルドナーを圧倒する。中国が2-2に追いついて優勝の行方は運命の第5試合、パーソンvs劉国梁にゆだねられた。





しかし前年の世界卓球では、劉国梁がパーソンを3-0(21-7、21-10、21-15)※で下してそのまま世界王者となり、卓球界のグランドスラム・大満貫を達成して、勢いに乗った状態で今大会を迎えていた。しかも流れは、第3、4試合を取って盛り返した中国ペース。

※この大会も含めて当時は21点制だった

だが松下は「パーソンは中国選手には非常に強かった」とチャンスを示唆していた。中国選手は攻撃的な選手に意外と負けるときがあり、技術的に穴がなく、フォアハンドの得点能力があるパーソンはその典型だったのだ。



番組MCの平野早矢香も、現役時代の大舞台での勝利経験を振りかえる。

「北京オリンピックで、一度も勝ったことがない香港の帖雅娜選手と対戦したが、彼女はフォア打ちが入らないほどに緊張していて。(特に)団体戦の5番では何かが変わってくる」

そのように、試合がはじまった劉国梁の動きは硬く守備的で、それに乗じたパーソンがリードする。

しかし1ゲーム目から中国ベンチが早めのタイムアウトを取り、中国の蔡振華監督からアドバイスを受けた劉国梁はプレーがガラッと変わる。MCの武井壮が「こんなに変わるんだね!」と語る通り、明らかに攻撃的になった劉国梁が押し込む。

そして20-15とゲームポイントを握った劉国梁は3点返されながらも、次の1本をフォアフリックで抜き、極度のプレッシャーをはねのけるような渾身のガッツポーズ。喉から手が出るほど欲しかった1ゲーム目をもぎ取った。



しかし「いつになく善戦しているので、もしかしたらと思った」と松下が語るように、第2ゲームはより攻めの姿勢が明確になったパーソンが15-10とリードする。

スウェーデンの英雄たるワルドナーとパーソン。気になるその関係性について2人とチームメイトだった松下は、「彼らはライバル同士でありながら(心の)距離はすごく近い。一緒にごはんへもよく行く」と仲の良さを明かす。

またその性格は対照的で、「ワルドナー選手は卓球と一緒で、つかみどころがない(笑)。逆にパーソンは社交的で口数が多い」のだとか。

さらに松下は、ワルドナーに言われた印象深いひと言を紹介する。「格下の選手が負けるとは限らないし、世の中はなんでも予想外のことが起きるから、それを知っておいたほうがいいし、そのほうが楽しい」。中国の壁に挑戦を続けてきた彼らしい発言だった。



試合は、その言葉が示すような展開になっていく。パーソンは劉国梁の速攻をかいくぐり、最後にバックハンドフリックを決めて値千金の第2ゲームを奪取した。

盛り上がるスウェーデンベンチに対し、パーソンは力強くこぶしをかかげて見せた。

運命の最終第3ゲームも、パーソンは劉国梁をあえて回り込ませて攻める。さらに試合の終盤では、お互いがサーブでギリギリをねらうゆえ、サーブミスが1本ずつ出る緊迫した展開に。

しかし18-18から2本連取したパーソンが、最後はバッククロスへのループドライブを放ち、劉国梁がスマッシュミス。最強の難敵・中国を下した大歓喜のまま倒れ込んで、足をバタつかせた。

立ち上がったパーソンに待っていたのは、駆け寄ってきたスウェーデンベンチの熱い抱擁。「もう中国を倒すことは不可能」と言われた、全員30代の3人のベテランが起こした奇跡の光景だった。

松下が「やっぱり流れを変えたのはトップ」と話すように、第1試合のワルドナーがその口火を切ったのがあまりにも大きかった。

「今日の試合の通り、実力差があっても、その場の調子や雰囲気で(勝敗は)変わりますね。日本の選手が金メダルを取るチャンスは、もっとあると思います」

松下の言葉を現実にできるのか。来年の東京でも奇跡の夜が見たい。



次回は「卓球ジャパンAWARDS第2弾」。この一年間のスーパープレーを一挙大公開!世界一の技ありプレーが決まる放送を、ぜひお楽しみに。





■第1試合 ワルドナーvs劉国梁

■第2試合 パーソンvs孔令輝

■第3試合 P.カールソンvs劉国正

■第4試合 ワルドナーvs孔令輝

■第5試合 パーソンvs劉国梁