横浜FMの日本代表FWが「オンラインエール授業」で高校生50人と交流 JリーグMVPのストライカーが“先生”になった。サッカー横浜F・マリノスの日本代表FW仲川輝人が25日、「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一…
横浜FMの日本代表FWが「オンラインエール授業」で高校生50人と交流
JリーグMVPのストライカーが“先生”になった。サッカー横浜F・マリノスの日本代表FW仲川輝人が25日、「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」に登場。「悲しんでいる高校生に少しでも勇気、励みになることができれば」と、インターハイが中止となった全国のサッカー部50人に向け、夢授業を行った。
仲川が登場した「オンラインエール授業」はインターハイ実施30競技の部活に励む高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。村田諒太、川口能活さん、佐々木則夫さんら、現役、OBのアスリートが各部活の生徒たちを対象に授業を行ったが、第9回は現役のサッカー日本代表が登壇した。
高校時代は川崎のユースチームで過ごした仲川。専大を経て、横浜F・マリノス入りすると、2度のレンタル移籍で着実に成長し、昨シーズンは15得点でチームを15年ぶりの優勝に導き、得点王を獲得。JリーグMVPに輝いたほか、27歳にして日本代表に初選出された。冒頭で明かしたのは、高校時代のエピソード。身長161センチという小柄な点取り屋の飛躍の原点があった。
夢は日本代表でプレーすること。しかし、当時から背が小さく、入学当初は特にフィジカル面で苦労したという。意識したのは「自分の特長を理解すること」だった。仲川の場合は抜群のスピード。小さくても速ければ、大きな相手を置き去りにできる。「自分の感覚、間合いをつかんで自分の『速さ』を『強さ』に変えた。自信がついてプレーできるようになった」と振り返る。
もう一つ、高校生にとって大切な話は大学4年で負った右膝前十字靭帯断裂などの大けが。「大学No.1ストライカー」と呼ばれ、夢のプロ入りを間近に控えていた10月の出来事。さぞ、傷ついたのではないか。しかし、本人は「落ち込んだのは1日だけ。翌日だけ、家でしょぼーんとしていたかな」と笑う。いったい、なぜだったのか。
「その翌日には、いかに早く練習ができて、サッカーができる体に戻せるかを考えていた。ずっと落ち込んでいても、何も状況は変わらない。すぐに切り替えること。試合で失敗した時も一緒。失敗することはいいことだと思うし、次の成功にどうつなげていくかを考えながら、今もやっている。怪我をした時も、怪我する前よりひと回りパワーアップすることを目標にしていた」
今は新型コロナウイルスの感染拡大により、練習、試合ができない高校生。それでも、状況は違えど「ずっと落ち込んで何も変わらない」という言葉は、明日を見つめているサッカー部員たちにまっすぐに届いた。続いて行われた質問コーナーでも、Jリーグを代表するストライカーとあって、次々に高校生から手が挙がった。
高校生から続々質問「上手くカットインしてシュートを打つコツは?」
――サッカーに対して、日常生活の中でモチベーションを上げていますか?
「自分は一日一日、上手くなるということを意識している。前の自分より次の自分、次の自分よりまた次の自分……と成長できるように。そのために何をしなければいけないかを練習の中で実践している。日常生活では海外選手のプレー集を多く見るようにして、その選手の技、プレーを盗むことをやっている」
――コロナウイルスの影響でモチベーションが切れてしまった。仲川選手はどうですか?
「自分も今回は苦労した。でも、さっき言ったように海外のプレーを見たり、自分の試合のハイライトを見たり。特に自分の試合は、振り返りとして『ここが良かった、ダメだった』『こうしたらもっと良かった』と反省して、いつ練習が再開できるか分からない状況だったけど、再開した時に振り返りで得たものにチャレンジしようと決め、モチベーションを保っていた」
――スピードに乗ったまま、上手くカットインしてシュートを打つコツはありますか?
「最初は自分も今みたいに得意な形は全然できなかった。練習でやることはもちろんだけど、試合でチャレンジすることが一番成長につながる。このタイミングでやれば相手がついてこられないなとか、試合の中で分かることが多い。自分も試合でチャレンジして今の感覚つかんできた。実戦でやることが一番大事」
――海外の選手を見て参考にするけど、自分より全然上手いので失敗することが多い。どこをポイントにして見るといいですか?
「自分はまず似ている選手を見つけること。例えば、メッシ選手(バルセロナ)、アザール選手(レアル・マドリード)など、欧州ならサイズが小さいと言われている選手を参考にしている。自分の得意なプレーを見つけ、そういう(同じプレーで活躍している)海外選手を見つけることも大切。なぜ、この選手は海外で通用するのかを考えながら、プレー集も見てほしい」
具体的な技術論からメンタルの持ち方まで。他にも161センチという身長について「中学時代はコンプレックスを感じたこともあった」というが、前述のように弱みを強みに生かす努力で変わったこと。海外選手の映像を見る時は、ハイライトばかりでなく「90分の試合映像を見ること」で、よりサッカー理解が深まることなど、独自の視点でアドバイスを送った。
高校生たちにメッセージ「自分の特徴をどう伸ばすか、強みにするかを考えて」
あっという間に過ぎていった1時間の授業。参加者を代表し、挨拶した高校生は「コロナウイルスの影響で部活動が制限されている中、大学時代に怪我をした話、自粛期間中のモチベーション、サイドからの突破の仕方など、具体的な話が聞けてタメになりました。これから、僕らもさらに上を目指して練習していきたいです」と感謝した。
笑顔で聞いていた仲川も「今日はなかなか聞けない高校生の本音を聞くことができた。自分もこうして質問に答えるのは新鮮だった」と振り返り、「徐々に世の中の状況は変わり、Jリーグも再開される。サッカーができる喜びをみんなも感じていくので、日常にサッカーがあることに感謝しながら、楽しむことを忘れずに過ごしていってほしい」とエールを送った。
最後は仲川のお決まりのゴールパフォーマンスのポーズを取り、オンライン上で記念撮影。授業を終えると取材に応じ、今回参加した理由について「インターハイが中止になり、高校生の活躍の場がなくなってしまったことは悲しいこと。悲しんでいる高校生に少しでも勇気、励みになることができればと思って、参加しました」と明かした。
こういう舞台は「得意ではない」と苦笑いしつつも、昨シーズンの大活躍でJリーグの“顔”としての自覚も芽生えた。「責任感は増してきた。今までこういった機会もなかったし、Jリーグを代表する選手として鑑にならないといけない。自分にプレッシャーをかけながら、それを楽しんで、もっと『仲川輝人』を世の中に出していければいい」と語った。
J1は7月4日からリーグ戦が再開される。改めて、高校生に見せたい姿を問われ、「身長が低くてもJリーグで活躍できることを証明できた。自分の特徴をどう伸ばすか、強みにするかを考えて、どうやったら成長できるかを考えてほしい。Jリーグが再開すれば、自分のスピード、ドリブル、決定力を多くの人に見てもらいたい」と活躍を約束した。
■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。今後はハンドボール・宮崎大輔、元テニス・杉山愛さん、元バレーボール・山本隆弘さん、元体操・塚原直也さんらも登場する。授業は「インハイ.tv」で全国生配信され、誰でも視聴できる。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)