すったもんだの挙句、MLBはようやく7月23または24日に無観客で開幕することが決まった。新型コロナウイルス感染拡大の第二波が想定される10月までにポストシーズンを終了させるために、公式戦は9月27日に終了する60試合制。選手の給与は日割り年俸全額支給に落ち着いた。

 だが……。

 開幕は本当に迎えられるのだろうか。

 いや、たとえ開幕を迎えたとしても、シーズンは最後まで行えるのだろうか。

 前を向けない現実が、今、全米を支配している。一向に収まりを見せない新型コロナウイルス感染拡大の脅威だ。

アメリカは感染者が日に3万人。

 米国ではいまだに日々3万人以上の新規感染者を出し、死者は700人以上にも及んでいる。

 その中、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットの3州では、感染率の高い州から訪れる『すべての人』に14日間の隔離を課すと24日(日本時間25日)にそれぞれの州知事が発表した。

 この移動制限は25日午前0時から適用され、対象となったのは24日の時点でアラバマ、アーカンソー、アリゾナ、フロリダ、ノースカロライナ、サウスカロライナ、テキサス、ユタ、ワシントンの9つの州だ。

 基準は直近7日間の平均で陽性者数が10万人あたり10人以上、または陽性率10%以上とあり、今は制限が適用されていないカリフォルニアも先行きは不透明だ。今後、更に対象となる州が増加していく可能性を含んでいる。

 余談となるが、罰金はかなり高額だ。ニューヨーク州の場合、初回違反者には2000ドル(約21万円)、2回目は5000ドル(約53万5千円)、それ以降は1万ドル(約107万円)が科せられる。オフィスや空港、駅などで検査が実施されると言う。

現状では日程すら組めない。

 この勧告下、7月1日からのキャンプをヤンキースタジアムとシティ・フィールドで再開させるヤンキースとメッツの両球団では選手やスタッフの招集に影響が出るのは必至だ。

 アリゾナ、フロリダ、テキサスに自宅を構える選手は多く、キャンプ施設があるのもフロリダだ。両球団はともに「保健所とMLBのガイドラインに従う」と声明文を出し、かなりの人数が7月7日前後まで練習に参加できなくなるだろう。

 また、この移動制限が長引けば、シーズン開幕後には更なる影響を及ぼす。両球団はフロリダを本拠地とするレイズ、マーリンズをはじめ、フロリダからニューヨークに入るチームを迎え入れることが出来ないことになり、さらには両チームがフロリダ遠征からニューヨークへ戻る際にも14日間の検疫が課せられることになる。このような状況では日程を組むのもままならない。

ダルビッシュ「すぐ感染が広がる気がする」

 そして、更に深刻なのがメジャー各球団内での感染拡大だ。

 マリナーズのジェリー・ディポトGMは24日、複数の選手が新型コロナウイルスに感染したと公表した。他球団に目を移してもブルージェイズ、タイガース、フィリーズ、ヤンキース、ロッキーズ、エンゼルスなど感染者は増加する一方ですでに50人を超えている。

 このような状況下、先日、カブスのダルビッシュ有は自身のツイッターで「各キャンプ施設では十数人が入れ替わりで距離もとって練習しているのにコロナ感染が広がっています。キャンプ再開したらその3、4倍の人数が集まるわけですから、シーズン始まってもすぐ感染が広がる気がするんですけど」と投稿。するとヤンキースの田中将大もすぐさまツイッターで「それっ!」と同調したほどだった。

シーズンキャンセルだけは避けたかった。

 3カ月にも及んだ今回の労使交渉は、金銭面での条件闘争ばかりに目を奪われ、多方面から批判の声が相次いだ。だが機構、オーナー、選手、それぞれが自らの立場を主張するのが交渉ごとであり、お金の揉め事はある程度仕方なかった。

 その一方で、共通していた思いもあった。

“自分たちが主張を押し通すことででシーズンがキャンセルになることだけは避けたい”

『悪役』にはなりたくないという思いが、交渉切れ目前で妥協しあい、開幕合意へ向かった印象は強い。

 彼らが大義名分を果たした今、言えることがある。

『コロナだから仕方ない』

 この結末は誰の責任でもない。誰も異議を唱えることが出来ない。

“Baseball is back”を皆が喜び、開幕を待ち焦がれているが、不測の事態は隣り合わせ、それが現状だ。2020年MLB公式戦開幕は予断を許さない状況がまだ続く。

(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)