専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第261回 ようやくプロゴルフツアーのトーナメント開催が決まり、ホッと胸をなで下ろしています。 アマチュアゴルファーの日常のラウンドとプロの試合は、直接結びつきはありません。け…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第261回

 ようやくプロゴルフツアーのトーナメント開催が決まり、ホッと胸をなで下ろしています。

 アマチュアゴルファーの日常のラウンドとプロの試合は、直接結びつきはありません。けど、ゴルフ業界が盛り上がるという意味で、プロトーナメントはぜひとも開催していてほしいですよね。

 今季、日本で最初に行なわれる試合は、女子ツアーのアース・モンダミンカップ(千葉県/カメリアヒルズカントリークラブ) 。6月25日から28日まで、4日間開催のトーナメントとなります。

 賞金総額は国内最大の2億4000万円。優勝賞金も4320万円と、かなりビッグな大会となっています。

 試合の模様は、4日間通してインターネットでLIVE配信されることになりました。これも、新しい試みとして注目されています。

 ここまでたどり着くのに、関係者の方々は各方面への手配・調整を含めて、並々ならぬ努力をされてきたかと思います。マジで、頭が下がります。

 ほかのプロスポーツは、早々に再開が決定しました。プロ野球は6月19日から……って、それは私の誕生日なので、よく覚えています。そして、サッカーのJリーグは、J2とJ3が6月27日から、J1が7月4日からと、5月末に発表されました。

 それゆえ、ゴルフのツアー関係者も、「早くトーナメントを開催しないといけない」という切羽詰まった状況にあったのかもしれません。お隣の韓国では、5月中旬からすでに女子ツアーは再開されていましたから、それら関係者は、待ったなしのところまで、追い詰められていたのではないでしょうか。

 けど、なかなか話がまとまらないのは、ゴルフのプロトーナメントには特殊な事情があるからです。各トーナメントには必ず冠スポンサーがついており、そのトーナメントスポンサーの賛同を得られない限り、試合を開催することができないのです。

 たとえば、プロ野球はNPB(日本野球機構)が仕切って、試合のスケジュールなどを決めますよね。ゴルフも、女子プロならJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)がトーナメントのスケジュールを決めますが、その際、その試合にお金を出してくれるスポンサーの同意も必須。つまり、スポンサーにお伺いを立てないと、話が進まないのです。

 というのも、ゴルフのトーナメントは、スポンサーの宣伝活動、広報活動、企業イメージアップのための、社会貢献活動でもあるからです。

 とすれば、もし最初に試合を再開し、万が一にでも新型コロナウイルス感染者が出たら、大変です。スポンサーは「試合を強行した」などと言われて、逆にマイナスイメージがついてしまう可能性があります。そのため、トーナメントの開催に向けて、どこも尻込みしてしまうのは、仕方がないのです。

 トーナメントの開催費用は、おおよそ賞金総額の3~5倍と言われています。今回のアース・モンダミンカップは別格ですが、通常の女子トーナメントであれば、賞金総額は6000万円~1億円ぐらいで、ざっと2億~5億円ぐらいでしょうか。会場の設備費、大会運営の人件費、テレビ放映などを考えれば、たしかにそれぐらいのお金はかかりそうです。

 一方で収入は、4日間の通しチケットを1万円で1万人に売れたとしても、1億円。お金は出ていくばかり。すごく成功した試合であっても、どうしても赤字になります。もちろん、それは宣伝費ですから、持ち出しで構わないのですが。

 ただ、今や”コロナショック”で業績が振るわない企業もあるし、現状では宣伝しづらいという企業もあります。

 この時期、航空会社がスポンサーだったら「時期尚早」と言われてしまうでしょうし、リゾートホテルチェーンや旅行会社なども微妙な状況かもしれません。いろいろとタイミングや条件が整わないと、スポンサーとしてもメリットがありませんし、その役割を果たすことができません。

 そのため、スポンサーサイドからは、どこも積極的に手を挙げることができなかったのです。

 そうして、女子ツアーの再開は、このままいくと「秋までない」と言われていました。が、この時期のトーナメント開催をついに快諾してくれたのが、アース・モンダミンカップ。アース製薬の「お口、クチュ、クチュ」モンダミンは、誰でも知っているオーラルケア製品で、新型コロナウイルスの感染予防としても、とてもタイムリーな商品です。

 しかも、アース製薬の業績は非常によくて、上場来、高値を更新しまくり。資金力が潤沢です。企業イメージも、今のコロナ後の世界に寄り添っていて、”一緒に生き抜こう”感が漂い、すごく好感が持てます。

 アース製薬の大塚達也会長も、インタビューで「興行収入や宣伝が目的ではなく、ゴルフ界の発展のため、社会貢献のために(トーナメントを)開催しています」ときっぱり。ゴルフファンとしては、感謝しかありません。

 アース・モンダミンカップのあとは、資生堂アネッサレディス、ニッポンハムレディス、サマンサタバサ & GMOインターネット ガールズコレクション・レディース、大東建託・いい部屋ネットレディスの開催は、すでに中止が決まっています。さらに、その後のトーナメントでも、早くも中止が決定していたりして、アース・モンダミンカップがなかったら、ほんと”お先真っ暗”という状態でした。

 大塚会長は、その名字からもわかるように、大塚製薬の創業家の一族の方。私は、株取引をやっているので、少し詳しいです。アース製薬は、大塚製薬(大塚HD)の傘下に入って、経営基盤が強化されました。

 大塚製薬と言えば、大塚国際美術館(徳島県鳴門市)が有名。大塚製薬の創業者・大塚武三郎氏の生まれ故郷で、会社創業の地である鳴門市に、創立75周年記念事業として設立されました。壮大な美術館で、館内は荘厳な雰囲気が漂っています。一昨年の紅白歌合戦で、米津玄師さんが『Lemon』を披露した場所と言えば、おわかりになる方も多いのではないでしょうか。

 この美術館は、名画を陶板複製画として陳列してあり、世界の有名作品がほとんど見られるという、優れものです。いつか、行ってみたいなぁ~。

 そんなわけで、大塚グループは、社会的にもなかなかユニークな活動をしているんですよね。そのDNAをアース製薬も受け継いでおり、採算度外視で興行を開催する――これは、ぜひとも応援したいところです。

 ちなみに、男子の国内ツアー再開日程は、まだ決まっていません。いろいろと噂されていますが、夏の北海道あたりから、という説が強そうです。

 男子ツアーにおいては、新型コロナウイルスの影響で、来季ツアーから撤退するところもあるとか。まだ憶測ですけど、現在も「試合をやるぞ!」と誰も手を挙げていないので、ほんと心配です。

 そんなわけで、いよいよ開催される女子ツアーですが、プロアマ戦は中止。ギャラリーを入れない、無観客試合で行なうことが決まっています。プロ野球もそうですが、当面は無観客で行なって、様子を見るしかないでしょうね。

 ゴルフ場は「屋外だから安全」と言う人もいると思いますが、人気選手にギャラリーが集中すると、そこは”密”になる可能性が高いです。選手への影響も考えられます。

 第一、ギャラリーの移動はシャトルバスになるので、それが非常にマズいわけです。移動手段において、何かうまい解決法がない限り、たくさんのギャラリーを入れて試合を行なうことは、難しいでしょう。まずは、少人数で試すことから始めるしかないでしょうね。



1試合とはいえ、待ちに待ったプロツアーのトーナメントが開催されるのはうれしい限りです

 一方、選手の健康管理も大変です。2週間前からの行動を詳細に把握するため、選手にはその報告が義務付けられるとのこと。濃厚接触者を絶対に出さない、というわけです。当然、日々の体温測定、移動や食事制限など、厳重なチェック体制で行なうようです。

 面白いのは、今回は宅配便も極力使用しないよう通達されたとか。キャディーバッグの運搬などにおいても、感染拡大の影響があってはいけないと、そのための処置だそうです。

 ともかく、無事にトーナメントが開催されて、大会自体が成功して終わることを祈りたいと思います。そして、そこから弾みをつけて、どんどんトーナメントが開催されていってほしいです。