全国大学選手権(大学選手権)優勝からおよそ1ヶ月。丸尾組が発足し、寮長と委員となった久保優(スポ4=福岡・筑紫)と髙木樹(法4=大阪・早稲田摂陵)。残り1年となった大学ラグビー人生において、二人の瞳にはどのような未来が映っているのか。今季…

 全国大学選手権(大学選手権)優勝からおよそ1ヶ月。丸尾組が発足し、寮長と委員となった久保優(スポ4=福岡・筑紫)と髙木樹(法4=大阪・早稲田摂陵)。残り1年となった大学ラグビー人生において、二人の瞳にはどのような未来が映っているのか。今季への意気込みを伺った。

※この取材は3月19日に行われたものです。

優勝を経て

――昨季を振り返っていかがですか

久保 特に自分は試合に出させてもらっていたので、4年生に対しては優勝というかたちでお手伝いできたことは良かったかなと思います。

髙木 僕は反対に、最後は試合に出られなかったので、優勝しているのを見ながら、悔しい思いを抱いていました。優勝したことはうれしかったのですが、試合に出られなかったという事実はすごく悔しかったです。

――優勝した瞬間のお気持ちを教えてください

久保 最後の最後に交代はしてしまいましたけど、直人さん(齋藤直人前主将、令2スポ卒=現サントリー)や他の4年生が喜んでいるのを見て、優勝したのだなと実感しました。

髙木 4年生が喜んでいるのを見て、うれしい気持ちと、来年はここに自分が立って優勝したいという気持ちでした。

――久保選手は昨季から3番から1番にコンバートされましたが、個人として昨季を振り返っていかがですか

久保 春はスクラムがあまりうまくいかなくて、夏はスクラムがうまくいくように個人練習をしたり、友重コーチ(佐藤友重スクラムコーチ、平6人卒=秋田工)と色々話したりなどもして、何とか最後の最後で組めるようになってきたので、そこは自分としても成長したかなと思います。ただ昨年結果的に『押せるスクラム』というのは組めなかったので、今年は1番になって2年目になるからこそ、早稲田の1番としてスクラムを押せたらと思います。

――昨季は優勝という結果でしたが、それによって現在プレッシャーなどは感じていますか

久保 どう?

髙木 そんなに悪い意味でプレッシャーを感じている訳ではないです。ただ実際に現状として昨年優勝したということで、他のチームは僕達をターゲットとしていると思うのですが、自分たちはこのまま変わらずチャレンジャーとしてあり続けているので、慢心などもありません。

寮長と委員に就任


和やかな雰囲気で行われた取材

――久保選手が寮長に決まった経緯を教えてください

久保 丸尾(丸尾崇真主将、文構4=東京・早実)に「寮長やってくれ」と言われました。

髙木 相談とかはないよね(笑)。でも、優は寮長って感じだった。

久保 同期の中でそういうイジリはあったので、寮長なのかなとは思っていました。

――寮長の具体的な仕事というのはどのようなことですか

久保 起床と消灯のコールもありますけど、基本的にチームの規律といいますか、部室の使い方であったり、寮生は寮での過ごし方であったりを正すことを意識しています。特に寮生の過ごし方を意識してやっています。寮に入っている人たちは上のチームでプレーをする人たちで、その人たちがしっかりしないと下のチームの人もついてこないですし、そういう姿勢をみんなに見せてもらいたいので、寮の中ではルールを徹底するようにしています。今は部室もきれいに使うということをみんなにやってもらえるように、活動しています。

――心がけていることはありますか

久保 さっき部室の話もしましたけれど、ラグビーをする上で環境を整えたいなという思いがあって、グラウンドではみんな気持ちはオンなのですが、部室などで気持ちがオフになったときでも、下級生と上級生でちゃんとコミュニケーションをとれたらいいなということは考えています。

――現在の寮の雰囲気はお二人から見ていかがですか

久保 そんなに先輩後輩の区別はないかなと思っていて、練習が終わったあとも気軽に「風呂行こう!」みたいな話をしますし、新1年生も入寮してきましたけど、僕の観点からにはなりますが、気を遣うような雰囲気ではないかなという印象です。

――髙木選手はどのように委員に選出されたのですか

髙木 優と一緒で、僕は大阪出身なので、帰省していたら、丸尾から連絡があって、「帰ってきたら話があるから」と言われて、「大体委員についての話だろうな」と思いながら帰りました。すると、ものの30秒くらいで「お前は委員だ」と言われたので、「OK」と言って了承しました。

――昨年から委員になる予感などは感じていましたか

髙木 どうだろ、わかんない(笑)。

久保 まあ、そうじゃない(笑)?

髙木 学年で話すときなどは結構話す方で、意見ははっきり言う方ではあったので、「もしかしたらあるのかな」ということは思っていました。

――委員の仕事というのは具体的にどのようなことをするのですか

髙木 週に1回、月曜日の夜に学生幹部と他の4年生を一人呼んで話をします。そこで、先週の振り返りや今週の目標、事務連絡などを話す場面でそれに参加して部の方針などを学生の立場で議論するという仕事です。

――委員の中で唯一の4年生ですが、ご自身には何が求められていると感じますか

髙木 丸尾というリーダーシップのあるキャプテンがいて、それを支えるというか、丸尾に対してもしっかり意見を言う存在というのは必要で、自分がそのような存在になれたらいいなと言うことは心掛けています。

――お互いのことをどう思っていますか

髙木 優は人として責任感が強いなと思っていて、寮長になる前もですが寮長になってからは特に、寮長という責任を感じて、求められることも自分で考えてやっている人間です。だから、そのようなところがプレーにも出ていて、プレーヤーとしても、みんなに頼られる存在なのかなと思います。

髙木 樹は、私生活の中で「こいつおちゃらけキャラなのかな」と思うこともありますけど(笑)。真面目なので、委員会もそうですが、大事な時に考えながら、しっかりとしゃべってくれます。僕も4年生ですけど、4年生として、丸尾というキャプテンを支えていく上で、大事な存在だなと思います。

――お二人は普段からよく話すのですか

髙木 しゃべるはしゃべるよね(笑)。二人で飲みに行こうとかはないけど、寮で普通にしゃべります。

――ご自身のキャラクターや役割というのはどのようなものだと思いますか

髙木 ふざけながらも、厳しい時は厳しく。僕は後輩とかとコミュニケーションを多く取るようにしていて、普段から冗談を言ったり、ふざけたりします。でも、締めるところは締める、はっきり言う時ははっきり言うというのを心がけていますね。後輩だけでなくて、全員平等に仲良くするし、言いたいことは言うし、厳しくする時は厳しくするという役割ですかね。

久保 僕はもう寮長というだけなので、気軽に軽く接してくれれば嬉しいですね(笑)。

髙木 その方が接しやすいよね。

久保 もう軽く来て欲しい(笑)。

髙木 俺は黙っていると怖いから自分から行かないとなんだよね(笑)。

――お二人から見た4年生はどのような学年ですか

髙木 仲が良いのか悪いのか。

一同 (笑)。

髙木 みんなで一緒に何かをするということはないのですが、お互いがお互いを信頼している、みたいな。極端です。自己主張が極端に強いやつが何人かいて、そのせいで自己主張しないやつがいるみたいな。

久保 強引に連れていく感じね(笑)。

髙木 安定はしているのではないですかね。

「(丸尾主将は)自分がぶれないからみんながついていく」(髙木)

――丸尾主将はどのような人ですか

髙木 熱いです。熱いし、まっすぐですね。自分がぶれないからみんながついていく。リーダーシップがすごいです。

久保 そうですね。信念を強く持っているので、下級生やあまり崇真と話したことない子はこわいと思うかもしれないけど、話してみれば全然そんなことはなくて、よく考えているやつだと知ってもらえると思います。

髙木 周りから見ると頑固なイメージがあると思うのですが別にそうでもなくて、人の話はちゃんと聞くし、いいと思ったところはいいと言うし、でもやっぱり自分の軸がしっかりしているからぶれないので、いいバランスだと思います。

――副将が二人いることについてはいかがですか

久保 基本的に一人なのかなと考えていましたが、(副将が)二人になると4年生で話した時に抵抗はなかったです。ラグビーをする上で連携というのは大事だと思うので、お互いの意見を話せる立場の人がFWとBKに一人ずついるのはチームとしていい方向にいくのではないかなと思います。

髙木 下川(下川甲嗣副将、スポ4=福岡・修猷館)も1年の時からずっとリーダーシップを持ってやってくれていて、丸尾と下川が主将副将なのだろうなと思っていたのですが、やはりBKの代表としてリーダーシップをとれる存在という意味で南(南徹哉副将、文4=福岡・修猷館)が選ばれたという感じです。

――お二人からみた副将二人はどのような人物ですか

髙木 下川はよく周りが見えていてすごく優しいですし皆から信頼されていて、南はコミュニケーションがとりやすいですね。

久保 心配性なだけ…(笑)。

髙木 (笑)。(南副将は)プレーヤーとしてもそうなのですがコミュニケーションをすごく大事にしているので、後輩も接しやすい雰囲気なんだろうと思います。

久保 二人とも接しやすいですし、言った通りだと思います。

「みんなで本気で競い合って成長していく、というチームが理想」(髙木)


今年度のチームについて語るお二人

――新チームがはじまりましたが練習の感触はいかがですか

久保 今はチームを分けたりせず、全部員で時間を分けて同じメニューを一緒にやっているので、去年上のチームにいた人は何をやらなければいけないか分かっていて、それを今の下のチームに教えることによってチーム力が向上すると思いますし、お互いに上手くなることでチーム間の競争も増えればチームがもっと強くなれると思うので、今の状況はすごくいいかなと思います。

髙木 今は特にフィジカル面でのトレーニングが多いので、自分と向き合うという面でもいい時間を過ごせていると思いますし、チームメートと向き合うという面でも優が言ったように、去年関われなかった人たちとも関わることでチームとしても個人としても成長できるいい時間、いい取り組みができているのではないかなと思います。

――どのようなチームにしていきたいか、理想はありますか

髙木 いい意味で競争が絶えないチームというか、上から下までみんな競い合って、仲良しこよしするわけじゃなくみんなで本気で競い合って成長していく、というチームが理想だと思います。

久保 その通りです。

――最終学年として思うところはありますか

久保 4年生になるの早いなって感じですね(笑)。

髙木 優は1年の時から活躍していましたけど、僕は右も左もわからないまま1年を終えて、2年生もけがなどがあって、3年である程度上(のチーム)でできるようになったと思ったらもう4年生かーという感じです。

――チームとしての今季の目標を教えてください

髙木 『日本一』ですね。

久保 その通りですね。

――ラストイヤーとなりますが、個人としての目標はありますか

久保 FWでプロップなので、スクラムを押したいですね。絶対に目標ですし、去年も少しずつ押せるようになってきたので、今年はその経験を生かして、もっとFWが前に出てセットプレーを押せたらチームが戦いやすくなるかなと感じるので、やはりスクラムを押すというのを目標にしています。

髙木 僕は去年の最後の試合に出られていないし、去年は秋にAチームで出られていないので、まず秋に赤黒を来てスタメンで試合に出るというのを大前提として、自分の持ち味はディフェンスだと思うので、下も含めていい選手はたくさんいるので、そういう選手が思い切りプレーできるように自分が支えられる選手になりたいと思います。

「スクラムでチームを鼓舞するようなスクラムを組めたら」(久保)

――期待している後輩はいますか

髙木 ラグビーの面で言えば同じポジションの長田(長田智希、スポ3=大阪・東海大仰星)です。人間としてもリーダーシップがありますし、ラグビーのお手本にしたいくらいいいプレーヤーだと思いますし、いい競争相手というか、今現在Aチームでもあるので目標であり超えなければいけない存在ですね。キャラクターでいうと河村謙尚君(社3=大阪・常翔学園)ですね(笑)。めっちゃかわいいんですよね。

――どんなところがかわいいですか

高木 まず顔がかわいいですよね(笑)。

一同 (笑)。

――久保さんはいかがですか

久保 そうですね、桑田君(桑田陽介、スポ3=愛知・明和)とかですかね。去年は三浦さん(三浦駿平、令2スポ卒=現ヤマハ発動機)がスクラムで自分の後ろを押してくれていて、その次誰がロックに入ってくるか考えた時に、もちろんロックみんなに頑張ってほしいんですけど、特に寮でたくさん接点があるのでやっぱり桑田君かなと(笑)。

――最後に、今年の意気込みとファンの方々へのメッセージをお願いします

久保 今年は本当にFWが前に出て戦えるようなラグビーをしたいと思っていますし、自分はプロップだからスクラムでチームを鼓舞するようなスクラムを組めたらいいかなと思っています。スクラムで勝つことがプロップとしての存在理由だと思っていて、しっかりそこを意識して頑張るので、ファンの方々にはスクラムを注意して見てもらって、だめなら言ってほしいし(笑)、もっとがんばるようにするので応援をしてもらいたいです。

髙木 今年もやはり去年以上にディフェンスにこだわって、去年以上に前に出るディフェンスというのを意識していくと思うので、僕自身がそのディフェンスを引っ張っていけるような存在になりたいなと思っています。ファンの方にはディフェンスを見ていただいて、まあ指摘していただいて(笑)、何よりもやはり応援していただけたらなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 内海日和・山口日奈子)


意気込みを書いていただきました!

◆久保優(くぼ・すぐる)(※写真左)

1998(平10)年4月28日生まれ。178センチ。110キロ。福岡・筑紫高出身。スポーツ科学部4年。昨季より3番から1番にコンバートし、スタメンで優勝を体験した久保選手。「ゲームも漫画も何でもやる」と趣味が多岐に渡るのだとか。豊富な経験とあらゆることへのチャレンジ精神で早稲田のスクラムを引っ張ります!

◆髙木樹(たかぎ・いつき)(※写真右)

1998(平10)年8月8日生まれ。174センチ。84キロ。大阪・早稲田摂陵高出身。法学部4年。大きな怪我も経験し、ラグビーができないもどかしい期間も味わった髙木選手ですが、アプリ「ウイニングイレブン」では世界198位にまで登り詰めた強者。自分と向き合い、何事にも努力を惜しまない姿勢で、赤黒を奪取します!