-WORLD BASEBALLの記事一覧はこちら- 今や世界中へ野球選手を輩出している「輸出大国」のドミニカ共和国。この国にはプロ野球の季節が2度ある。 メインのシーズンは、11月から1月の冬である。 むろん、「冬」と言っても熱帯にある常夏…

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 今や世界中へ野球選手を輩出している「輸出大国」のドミニカ共和国。この国にはプロ野球の季節が2度ある。

 メインのシーズンは、11月から1月の冬である。

 むろん、「冬」と言っても熱帯にある常夏の国、乾季のこの時期はまさに野球シーズンと言える。

リセイとエスコヒードによる「サントドミンゴ・ダービー」はドミニカの黄金カードだ


 現在、このウィンターリーグは、国内5都市に散らばったリセイ、エスコヒード(サントドミンゴ)、アギラス(サンチアゴ)、エストレージャス(サンペドロ・デ・マコリス)、ヒガンテス(サンフランシスコ・デ・マコリス)、アズカレロス(ラ・ロマーナ)の6チームから成り立っている。

 年内、クリスマスまでに各チーム50試合のレギュラーシーズンを争い、上位4チームが年明けからの決勝リーグ・「ラウンドロビン」に進出、そして、その上位2チームが進む7戦制のプレーオフによって年度チャンピオンを決める。

 シーズンを制したチャンピオンチームは、メキシカンパシフィック、ベネズエラ、プエルトリコ、それにキューバリーグのチャンピオンと覇を競うカリビアンシリーズに駒を進める。

 ドミニカは、この大会において1980年以降の33年で16回の優勝を誇るなどウィンターリーグ最強の名をほしいままにしていたが、2013年大会以降は優勝から遠ざかっており、かつてのような圧倒的な地位は保てなくなっている。

カンポ・ラス・パルマスにあるドジャースのアカデミー



 夏に行われるプロ野球は、メジャーリーグ各球団がこの国に設置しているアカデミーの選手によるルーキー級リーグ、ドミニカンサマーリーグである。

 現在メジャーリーグ全球団がアカデミーをもち、プロ契約したての地元ドミニカ人選手のほか、世界各地から集めた「金の卵」たちに最初のプロとしてのプレーの場を提供している。

 ただし、郊外に位置する各球団のアカデミーの球場で行われるこのリーグは試合興行は行わず、地元民もこれを「プロ野球」とは見なしていない。

 これに加えて、近年は独立リーグも実施され、国外で契約の取れなかった選手たちが、田舎町の球場でファンを集めてプレーしているという。

 ひとり当たりのGDPが7500ドルという貧国のこの国にあって、野球は貧困から抜け出すツールとして機能している。そういう事情から、野球選手の目指すところは国外のプロリーグでのより良い契約であり、伝統的にアマチュア中心の国際大会ではその名を見ることは少なかった。

 しかし、2006年にプロ中心のワールドベースボールクラシックが始まると、ドミニカは国際舞台の主役を演じるようになった。ウィンターリーグが終わり、アメリカや東アジアのプロリーグ開幕前の3月という開催のこの大会には、トップ選手が参加可能であったことから、第1回大会では準決勝まで進み、2013年の第3回大会では全勝で優勝を飾った。

 しかし、2015年に行われた第1回プレミア12では、ウィンターリーグ開幕後の開催ということもあって、好選手の参加がなく、11位という結果に終わっている。この秋開催の第2回大会は南北アメリカ大陸7か国のうち、最上位国が東京五輪の出場権を得る。

 また、ドミニカは近年力をつけ、「ラテンアメリカの雄」の座を狙いつつあるメキシコとアウェイで予選を戦う。そういう意味でもこの秋は、野球大国のプライドにかけて陣容を整え、「ガチ」のドミニカ野球を期待したい。

文・写真=阿佐智