パリ・サンジェルマンのレオナルドSDは6月14日、日曜日発行の週刊新聞『LE JOURNAL DU DIMANCHE』に登場し、エディンソン・カバーニとチアゴ・シウバが今シーズン限りで退団することを初めて正式に明かした。

 ふたりの契約はともに今年6月30日までだったが、本人たちの残留希望とは裏腹に、レオナルドSDは昨年来、契約更新の動きをいっさい見せなかった。このためメディアはすでに「2人の退団は必至」と繰り返し報道。ただレオナルドは黙し続け、当のふたりも新型コロナウイルス危機の最中にフランスを脱出したままだった。

 このうち、パルク・デ・プランスのアイドルだったカバーニは、ケガとベンチの屈辱を乗り越えてピッチに返り咲き、今年3月のリーグ・アン中断前に通算200ゴールの大台を達成。みずから保持していたクラブ史上最多得点記録を更新して、有終の美を飾った。

 本人も妻も気に入っていたパリ近郊での暮らしは終了するが、サポーターとファンに惜しまれながら去っていくことになりそうだ。

 一方「オ・モンストロ」(怪物)の異名をとったチアゴ・シウバも、8年間の長きにわたってパリに在籍、しかもキャプテンを務めてきた。その功績は「クラブ史上屈指のセンターバック」として、やはり歴史に刻まれるだろう。

 ただ、いくつか染みもついた。ひとつは、チャンピオンズ・リーグ(CL)の大舞台がくると、じわじわ下がってディフェンスラインを下げてしまう傾向があったことだ。これについては前監督のウナイ・エメリが赤裸々に語り、シウバの欠点が世間に晒された格好になった。

 またリーダーシップにも疑問符がついた。選手としての姿勢は模範的だったが、強烈な牽引力に欠けるきらいがあり、ズラタン・イブラヒモビッチが去るや否や、パリSGはリーダー不在を露呈するようになった。

 最後には妻の発言も大反発を招いてしまった。フランスがコロナウィルスと戦う「コンフィンヌモン(閉じこもり)」に突入すると、シウバ一家は慌ててフランスを脱出。その直後に妻のベル・シウバさんは、ソーシャルネット上でぺらぺらとこう語ったのだ。

「ブラジルに帰国する飛行機便を見つけることに決めたの。だってここ(ブラジル)ならまだスーパーにモノがあるもの。(フランスでは)もう家に食料がなくなっていて、30日も40日も食料なしでいるなんて、本当に難しかったわ。不可能よ。私、スーパーに行く時間がなかったし、行くことを考えたときには、もう全て終わっていたの」

 「ここ(ブラジル)ならプールだってあるし、広いスペースもあるわ」

 このためフランスではネットが炎上した。「スーパーのパスタ売り場が空になったのを見て、次のパスタが納品されることを考えもしなかったのか」「食料や生活必需品の買い物は問題なくできることを知らなかったのか」「要するにフランス政府の発表を理解する能力がなかったのでは?」「さっさと帰って母親にパスタをつくってもらえ」「恥を知れ!」などの憤激や嘲笑が噴出した。

 しかも皮肉なことにそのブラジルが、フランスを超える規模のコロナ禍となってしまった。チアゴ・シウバはフランス国籍を取得し、フランスに立派な家も購入、パリSGに残ってもうしばらく活躍したい意向だっただけに、どうにも苦い退団となりそうである。

 レオナルドSDは今回のメディア登場で、「非常に難しい決断だった」としながらも、きっぱりとふたりとの決別を宣言。いまのところネイマールとキリアン・エムバペがいることを改めて強調しながら、今夏メルカートで「1億ユーロを超える購入はないだろう」と語った。

 チアゴ・シウバもエディンソン・カバーニも、この週明けにはフランスに戻る予定だ。リーグ・アンは途中閉幕したが、2019-20シーズンの国内カップ戦とチャンピオンズ・リーグが残っているため、ふたりも8月までは試合に出場できることになっている。

 だがふたつのエンブレムの退団が決まったことで、パリSGの一時代に幕が降ろされた。今後は若い戦力を中心にした「過渡期」(レオナルド)、または「新時代」に突入することになるだろう。パリSGは6月22日からトレーニングを再開する。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI