専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第259回“コロナショック”後、新しいゴルフのラウンドスタイルが提唱されています。一番ポピュラーなものが、スループレーです。 アウト(9ホール)とイン(…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第259回
“コロナショック”後、新しいゴルフのラウンドスタイルが提唱されています。一番ポピュラーなものが、スループレーです。
アウト(9ホール)とイン(9ホール)の間に昼休みを挟まず、そのまま続けて18ホールを回れば、クラブハウスに立ち寄らずにラウンドできる。だから「3密」を防げる、という考えです。
昼休みを取りませんから、「早くプレーが終わって、非常に効率的」と言われていますが、はたして、本当にそうなんでしょうか?
今回は、スループレー歴30年の私が、過去の経験をもとにして、いろいろとお話したいと思います。
昔、鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)のメンバーだった頃、平日に行くと、たいがいスループレーでラウンドしていました。北海道や沖縄は、スループレーが当たり前となっていますが、本州のゴルフ場でも、何ら珍しいことではありません。
鶴舞CCの平日スルーは、こんな感じです。
東コース、西コースとトータル36ホールあるので、たとえば東のアウトを回ったら、普通なら東のインに向かうわけですが、まずはハーフを終えたら、キャディーマスター室に行きます。そこで、「すぐに回れるコースはないの?」と聞くや、「西のインなら空いています」と言うじゃないですか。
そうしたら、早く回れるほうがいいので、西のインに向かいます。東と西をクロスしてラウンドすることになりますが、別にスコアを提出するわけでもないですから、関係ありません。トイレを済ませたら、即座にラウンド開始です。
このように、36ホールとか、27ホールあるゴルフ場は、どこかにスタート枠の”穴”があって、メンバーだったら、そこに入り込める可能性が高いです。
ちなみに、鶴舞CCの「東アウト→西イン」は、東の9番だけが打ち上げで、他は平坦なホールばかりですから、林間コースの趣があって、非常にラウンドしやすいです。そうしたローテーションを、わりと好んでプレーしていました。
スルーでラウンドを終えると、まだ午後1時ぐらいだったりします。それから、ゆっくりとお昼ごはんを食べて帰っても、3時ぐらいには東京の事務所に戻って、仕事ができていましたね。
ここでポイントになるのは、スルーでプレーができたのは、後半のスタート枠が空いていたからです。もしこれが、18ホールのコースで、お客さんがかなり入っている場合は、どうなるでしょうか?
◆18ホールのゴルフ場の場合
混んでいるコースのスタートは、夏場なら7時台からでしょうか。そして、朝の最終スタートが10時30分過ぎくらいですかね。
その場合、7時半にトップで出ていったとしても、2時間ほどでラウンドして戻ってくれば、まだ9時台。最終スタートが10時30分過ぎとなれば、キャディーマスター室に問い合わせたところで、1時間以上は待たされることになります。とすれば、昼休みを取ってもらうしかありません。
もちろん、気の利いたキャディーマスターがいて、組と組の間に入れてくれたりしたら、話は別ですが、ゴルフ場には暗黙のルールがあります。通常、ハーフをプレーし終えた組のことを「ラウンド目」と言って、ラウンド目の組はすべての組のスタートが終わらないと、残りのハーフを回ることができません。
だって、まだ1回もショットを打っていない組を抜かして、後半のスタートをさせたら、抜かされた組の人たちが怒るでしょ。「あそこはもう次のハーフを回るの? こっちはまだスタートしていないんだけど」と、必ずクレームをつけてきますから。
要するに、18ホールのコースにおいては、余程のことがない限り、スムーズなスループレーはあり得ません。だから、スループレーでは「昼の待ち時間がない」というのは嘘です。結構ありますし、混んでいれば、なおさらです。
◆北海道、沖縄の場合
北海道や沖縄でプレーしていても、コースが混んでいれば、ハーフが終わった段階で休み時間が入ることは、しょっちゅうあります。誰かが「スループレーは、そのまま18ホールラウンドできるから快適」と言っていますが、トップシーズンでは、お昼休みの時間分ぐらい待たされることはザラです。
ともあれ、北海道や沖縄のスループレーは、午前スタートと午後スタートに分かれているのが一般的。だから、午前スタートで9番ホールを上がったら、そのまま10番ホールに向かいます。
その際、10番ホールで何台か乗用カートが待機していることがありますが、それはそれで仕方がないことです。2~3台待っていたら、20分ぐらい休憩しましょう。
先にも触れたとおり、トップシーズンだと、もっと待つ場合があります。その際は、10番ホールの前に広めの茶店がたいていありますから、そこで、そばを食べたり、軽食をつまんだりするんですな。
◆レストランの営業について
クラブハウスになるべく入らないゴルフ場の営業――これは、新型コロナウイルスの感染防止のうえでは、やむを得ない対策です。
ただ本音を言えば、コース側としては、クラブハウスにあるレストランはどんどん利用してほしいと思っています。なにしろ、コンペを含めた飲食部門の売り上げは、全体の2割以上あると言われていますからね。年間5億円を売り上げるコースなら、1億円以上が飲食部分。それは、結構デカいですよ。
そうなると、従業員を雇用する意味でも、どんな形にせよ、レストランは復活させていかなければいけません。現状では、弁当や軽食を提供するなど、それぞれのコースで工夫をこらしているようです。
そして今後も、たとえスループレーが一般化していくとしても、レストラン部門の営業をこのまま縮小していくことは避けたいところでしょう。北海道や沖縄でも、スループレーのあと、ラウンド後にしっかりと食事をするのが常。「3密」にならないレストラン営業の復活が、これからの課題になりますね。
売り上げが大きい飲食部門の営業をどういう形態にしていくのか。それが、今後のゴルフ場の課題と言えそうです...。illustration by Hattori Motonobu
◆コロナ対策に厳格なコース
スループレーうんぬんではなく、自粛期間中、ゴルフ場の営業そのものをやめていたコースも、ちらほら見受けられました。どういうコースが完全自粛をしていたのか?
それは、老舗の名門倶楽部です。
来場者の平均年齢は70歳以上で、メンバーは一流企業のVIPばかり。ゴルフ場で何かあったら、大変なことです。
もちろん、メンバーは国の偉い人たちともつながっています。緊急事態であることを考えれば、国の方針に従うのは当然でしょう。
そうしたことを踏まえれば、いろいろと面倒だから、コースとしては「休みにしてしまおう」という考えだったのでしょう。
あと、有名企業が経営しているコースも、完全休業していました。大手電鉄会社とか、ディベロッパーとかですかね。系列コースから感染者が出たら、企業イメージが悪くなりますからね。「とりあえず、やめておこう」となります。
逆に、「ホームステイ」と強く叫ばれていた時でも、何事もなかったように、こっそりと営業を続けていたコースもありました。地方の独立系や、チェーン系のコースですかね。
そもそもほとんどの自治体において、ゴルフは営業自粛の対象になっていませんでしたからね。みなさん、「3密」にならない対策をきちんと取って、メンバーを中心に活動していたようです。
首都圏は別にして、他県への往来が少ない地域では、ストレスを溜めていたメンバーさんたちが、地元のコースにこっそりと集まっていたのは、確かなようです。その際には、メンバーコースの有りがたみを痛感したコースも多いのではないでしょうか。
メンバーは「プレーしたい」。コース側は「営業したい」。そんなお互いの思惑が一致したんですな。
今後も、運営サイドはメンバーさんと協力して、コロナ対策をきちんとして、ともに歩んでいくことになるでしょう。