サッカーIQラボ〜勝負を決めるワンプレー~Questionサンチョはどんなプレーを選択したか 昨季、19歳だったジェイドン・サンチョはブンデスリーガ全試合に出場し、12ゴール14アシストを記録。ベストイレブンに選出され、アシストキングに…

サッカーIQラボ
〜勝負を決めるワンプレー~

Question
サンチョはどんなプレーを選択したか

 昨季、19歳だったジェイドン・サンチョはブンデスリーガ全試合に出場し、12ゴール14アシストを記録。ベストイレブンに選出され、アシストキングにも輝くというブレイクを果たした。今やビッグクラブが目を光らす、最注目アタッカーのひとりだ。

 サンチョの飛躍の理由は、この若さにしてアタッカーとしてのプレーの幅の広さにある。自ら突破しての得点はもちろん、巧みな動き出しや決定的なパス、ポジショニングで、味方を生かすこともできる。そのどれもハイクオリティであることは、ゴール、アシストの両面での高い数字が物語っている。

 その万能ぶりは今季も健在で、リーグで17ゴール、16アシスト(第30節終了時点)と、どちらも昨季を上回る数字を記録している。チャンピオンズリーグのインテル戦でもその攻撃センスの高さを示した。



右のハキミからパスを受けたサンチョ。このあと、どんなプレーを見せただろうか

 後半32分、ボールを持ったアクラフ・ハキミが右サイドからカットイン。サンチョはハーフスペース(サイドと中央の間のエリア)に入って、ハキミからのパスを受けた。中央には味方もいる。さて、このあとサンチョはどんなプレーを見せただろうか。

Answer
相手を釣り出し、ハキミへリターン

 ハキミからパスを要求するときのポジショニングから、サンチョの駆け引きは始まっていた。サンチョがハーフスペースでフリーになってパスを受けると、正面の相手DFミラン・シュクリニアルが釣り出された。これがサンチョの狙いだった。



サンチョはハキミへのリターンを選択。ゴールをアシストした

 パスを受けたサンチョは巧みにタメをつくり、シュクリニアルが出てきて生まれたギャップにハキミがトップスピードで進入する。そこへ柔らかく、スペースへ置くような縦パスを送ると、ハキミはGKの脇下を射抜いてゴールゲット。

 アタッカーであれば、出てきたシュクリニアルをドリブルで外し、自らシュートを打つという選択肢もあったはず。野心溢れる若手ならば、なおのこと自らが得点することに固執してしまうものである。

 しかし、サンチョはそうではない。ここで自らがDFを引きつけ、味方が進入するスペースを空けるプレーを選択できる。これにより、サンチョがボールを持つと、相手DFには常に迷いが生じることになる。パスなのか、ドリブルなのか、シュートなのか。

 その懐の広さで相手より優位に立ち、得点を奪い、アシストを記録してきた。弱冠20歳とは思えないイングランド人アタッカーによる、洗練されたポストプレーから生まれたゴールだった。