連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏が…
連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」
忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。
新型コロナウイルスによる外出自粛が続き、運動不足解消のために増えているランニング。しかし、中野氏によれば、体が慣れてくると多くの人が陥る罠があるという。また、ケガなくランニングを継続していくための3つの対策をレクチャーしてくれた。
◇ ◇ ◇
私は帰宅後のランニングが日々のルーティンの一つですが、最近は昼夜問わず、街を走る人を目にする機会が非常に増えました。新型コロナウイルス禍による外出自粛生活が長く続き、運動不足解消のためにランニングを始めた人の多さを実感しています。
ランの楽しいところは、走り始めると間もなく、走っても息切れがしなくなる、疲れなくなるという体の変化を誰もが感じやすい点です。「苦しい」「ツラい」と感じるのはおそらく、本当に最初の1、2週間だけ。その後は走るたびに呼吸が楽になり、自然と距離が伸びたりスピードが上がったりしていきます。
でも、走ることに体が慣れてきて、「走るって気持ちがイイ!」「もっと走りたい!」となる頃、多くの方が陥る罠があります。「走りすぎによるケガ」です。
元々、運動習慣がなかった方が急に走りすぎると、障害のリスクが高まります。特に「元運動部だった」という方は要注意。走りの感が戻ってくると、学生時代と同じ感覚で急に距離を伸ばしたりハードに追い込んだりしがちで、結局、膝を痛め、長い距離を走ることができなくなった方を何人もみてきました。
運動初心者、元運動部を問わず、特に傷めやすいのは膝です。膝の関節は太ももの骨とすねの骨を靭帯でつなぎ合わせ、さらに太もも周りの筋肉が膝を安定させるようサポートしています。しかし、大腿四頭筋は25歳以上になると筋力の低下が進行。太ももの筋肉が衰えたまま走れば当然、膝が不安定になり、関節に負担が集中。日々のケアを怠り走り続けると、膝への負担が積み重なり、ある日突然、痛みが現れるのです。
代表的なのは靱帯と膝の骨がこすれてあたることで痛みが起きる「ランナーズニー(腸脛靭帯炎)」。これが重症化すると、一生、ランニングを楽しめない体になる恐れもあります。膝に痛みや違和感があったら、放置するのは厳禁。早めの対策で重症化を防ぎましょう。
障害予防に自分でできる3つの対策「筋トレ、ストレッチ、アイシング」
一般的な障害予防として自分でできる対策は主に3つ。筋トレ、ストレッチ、アイシングです。
筋トレは、スクワット、シングルスクワット、ヒップリフト、レッグエクステンションなどを行い、太ももとお尻の筋力をアップ。すると膝にかかる負担が軽くなります。現代人は活動量が減ってきているので、下半身の筋トレは毎日行ってOK。走る前のルーティンにすると、脂肪燃焼効果にもつながりやすいです。また、日常生活のなかでも歩くときは大股でキビキビ歩く、駅やビルではエスカレータではなく階段を使うと走るための脚づくりにつながります。
ストレッチは走った後、筋温が高いときに行います。膝の痛みの予防に欠かせないのは、大腿四頭筋(太もも前側)、ハムストリングス(太もも裏側)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)、大臀筋(お尻)のストレッチです。イタ気持ちいい程度の伸びを感じるところで20~30秒キープし、2~3セット行いましょう。
また、走った後に、「少し痛いな」「違和感があるな」と感じたら、すぐにアイシングを。アイシングをすると、冷やした部位の細胞や血管が収縮。神経細胞の活動が鈍くなります。すると痛みが軽くなるだけでなく、炎症の広がりも抑えることができるので、ケガの予防になります。
簡易的なアイシングの方法ですが、シャワーでザッと汗を流し(痛みが強いときは入浴で温めすぎないようにして、少しでも早くアイシングを開始する)、その後、痛みや違和感、あるいは熱を感じる部分に氷の袋(食品保存用の袋などに入れる)を当てます。ラップなどを巻いて、固定してもいいでしょう。時間は20分程度で十分。それ以上冷やすと悪化する場合があるので注意してください。
ただし、脚やお尻がつった場合はアイシングをしないこと。まずは、つったその場で軽くストレッチで伸ばす。走った後は湯船につかり、筋肉を温め、ゆるめるのが正解です。
今まで運動経験のない方はアイシングと聞くと大げさだなと思うかもしれませんが、痛みや違和感を放置すると、知らない間にダメージがジワジワと体に広がります。すると、ある日突然、身体に限界が来て、ひどい痛みに襲われることになる。油断は禁物です。
せっかく身に着いた運動習慣をケガや痛みのせいで中断し、ゼロに戻すのはもったいない。対策はランの前後にできるので、走る日は必ず、体をいたわりましょう。ただし、すでに強い痛みがある人は、自分で何とかしようとせず、病院で診察を受けてくださいね。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)
長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。