1勝1敗の五分で迎えたセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。延長にもつれ込んだ接戦をDeNAが制し、球団初のファイナルステージに駒を進めた。このシリーズの勝負のポイント、短期決戦の難しさを昨年までオリックスの監督を務…

1勝1敗の五分で迎えたセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。延長にもつれ込んだ接戦をDeNAが制し、球団初のファイナルステージに駒を進めた。このシリーズの勝負のポイント、短期決戦の難しさを昨年までオリックスの監督を務めた森脇浩司氏に解説してもらった。

■森脇浩司氏が振り返るセCA第1ステージ最終戦

 1勝1敗の五分で迎えたセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。延長にもつれ込んだ接戦をDeNAが制し、球団初のファイナルステージに駒を進めた。初回にDeNA・ロペス、巨人・阿部の2ランで幕を開けた1戦。3-3の同点の延長11回に巨人守護神・澤村が右足に打球が直撃するアクシデントもあり、1死二塁から嶺井の左翼フェンス直撃の決勝タイムリー二塁打で勝敗が決した。このシリーズの勝負のポイント、短期決戦の難しさを昨年までオリックスの監督を務めた森脇浩司氏に解説してもらった。

———————————————————–

 球団史上初のCSに駒を進めたリーグ3位・DeNAが敵地・東京ドームで2勝を挙げた。巨人のアドバンテージを感じさせない、勢いのある攻撃を見せたのは見事だった。初回にロペス、阿部が2ランを放ったが、注目して見ていたのは次の打者がどのような打撃を見せるかだった。

 DeNAはロペスの一発で先制した直後、続く4番・筒香がしぶとく中前打、さらに宮崎が四球を選ぶなど1死一、三塁と好機を作った。結果的に追加点とはならなかったが初回からゲームの主導権を握った形だ。対する巨人も阿部の2ランですぐさま同点に追いつき球場の雰囲気は変わった。だが、続く長野は粘りを見せたが左飛に倒れ相手に圧力をかけるまでには至らなかった。

 短期決戦は一つのミスが命取りになるが、巨人は普段ならあり得ないミスが起こってしまった。9回。先頭の村田が三塁内野安打で出塁し、切り札の鈴木を代走に送ったがまさかの牽制死でサヨナラのチャンスを逃した。そして11回は守護神・澤村が先頭の倉本の打球を右足に受け降板。もちろん、ブルペンで準備はしていただろうが、緊急登板となった田原にはあの状況は酷だっただろう。

■手に汗握るナイスゲームであり、それ以上に不思議なゲーム

 どちらが勝利を手にしてもおかしくない素晴らしいゲームだったと思う。8回無死一、二塁から巨人・山口が見せたフィールディングは見事だった。投ゴロを「1-6-3」の併殺を狙わず、「1-5-3」で完成させた。前者での併殺なら2死三塁となりパスボールや一つのエラーで決勝点が入る状況だ。だが、後者で奪った二つのアウトで2死二塁の状況を作った。ワンヒットで確実に点が入る2死三塁とではプレッシャーのかかり方も大きく変わってくる。このケースのセオリーだ。当たり前のように見せた何気ないプレーだったが、普段からの練習、準備が生み出した素晴らしいプレーだった。

 ジャイアンツはホームゲームでありながら、なぜ主導権を握れなかったのか。DeNA先発の石田は頑張ったが、6回同点でマウンドを降り、ロールプレイヤーの梶谷も開始直後に失った(※初回死球で交代)。一方、早々と登板した巨人2番手の大竹は完璧なまでの投球を見せ、死球を受けた村田が殊勲の石田をマウンドから引き摺り下ろす同点ホームランを6回に放った。巨人は4、9回、DeNAは8、11回といずれも無死からの出塁は2度、9回球界最高峰走者の鈴木の牽制死は痛いが、DeNAの8回無死一、二塁バント失敗からの併殺打も手痛い。11回表にゲームは再度動いたが最小失点で切り抜けたこともあり裏の攻撃がすんなり終わる確率は極めて低くなる。両チームともにブルペンは最善を尽くした。

 勝負事において流れという言葉を頻繁に耳にするが、この日の試合は本当に手に汗握るナイスゲームであり、それ以上に不思議なゲームでもあった。勝ち運の優劣か、今まで解らなかったことに気付けた貴重な時間だった。ヒーローはいても戦犯はいない。最善を尽くしたがジャイアンツは負け、梶谷が早期交代となったベイスターズはトレーナーも含め全員がヒーローだった。

■勢いだけではないことを証明したDeNA

 スタンドはオレンジとブルーに彩られ、常に選手を鼓舞していた。プレーをしていた選手、またテレビを見ていたプロ野球関係者は改めてファンの方々に心からの感謝の念を抱いたのではないだろうか。私もこの日の4時間21分に心から感謝を申し上げたい。

 これで12日から始まるファイナルステージは広島対DeNAとなった。全てのことを発奮材料にするというスタイルをこのポストシーズンでも見せ、結果を出したDeNAは勢いだけではないことを証明してみせた。ファイナルステージで待ち受けるチームとの戦いは決して短期決戦ではない。しかし、挑むチームはファーストステージより条件は苦しくなるが再度全てを発奮材料にしてきたスタイルに自信を深めて欲しい。後押しするデータもある。これまでのCSでは3~4番手投手に対してでも1位チームの初戦得点平均が2、3点しか取れていないのだ。

 ペナントでは投打で圧倒的な力を見せたカープと、巨人を倒し精度を増し勢いに乗って敵地に乗り込むベイスターズ。パ・リーグ同様にファンを楽しませる素晴らしいゲーム展開になることを切望する。1日の休養を挟み再び両リーグの選手たちが見せる熱い戦いを期待したい。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
 
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。178センチ、78キロ。右投右打。