日本シリーズ進出をかけ、いよいよ始まったクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。パ・リーグでは初戦でソフトバンクとロッテが終盤までもつれるゲーム展開を見せ、4-3でソフトバンクが勝利。8回2死満塁の場面で今宮が放った勝ち越しの2点…

日本シリーズ進出をかけ、いよいよ始まったクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。パ・リーグでは初戦でソフトバンクとロッテが終盤までもつれるゲーム展開を見せ、4-3でソフトバンクが勝利。8回2死満塁の場面で今宮が放った勝ち越しの2点適時打が決勝点となり、ホークスがファイナルステージ進出へ王手をかけた。

■森脇浩司氏が振り返るパCS第1ステージ初戦のポイント

 日本シリーズ進出をかけ、いよいよ始まったクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ。パ・リーグでは初戦でソフトバンクとロッテが終盤までもつれるゲーム展開を見せ、4-3でソフトバンクが勝利。8回2死満塁の場面で今宮が放った勝ち越しの2点適時打が決勝点となり、ホークスがファイナルステージ進出へ王手をかけた。重要な第1戦の勝敗を分けたポイントはどこだったのか。昨年までオリックスの監督を務めた森脇浩司氏に解説してもらった。

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 第1ステージでは特に大胆かつ繊細さが必要とされる。両投手ともビックゲームとは言え8回、もしくは9回まで投げ切れる能力を十分に持ち合わせていた。

 しかし、千賀に関しては先頭打者の清田に投じたストレートストライク見逃しの後のスライダー(結果、先頭打者弾)を見て7回が最長だと感じた。また、涌井についても初回のボークと内川に対しての投球、さらに68球目、4回2死一塁で打者本多に0-2から中途半端な空振りの後、外ストレートをレフト前に打たれた投球内容を見て、同じく7回が最長と見ていた。

 ただ、さすがだ。序盤は心身ともに不安定な状態ながら忍耐力と修正能力の高さを存分に見せ、しっかりと責任を果たした。ソフトバンクは8回からレギュラーシーズンで58試合に登板し 2勝6敗、防御率3.19のスアレスをマウンドへ。危なげない投球で3者凡退に切って取った。一方、ロッテも今季34試合に登板し3勝1敗、防御率1.39の内に託したが1アウトしか取れず降板。内川に中前打を浴びると長谷川、松田に連続四死球。1死満塁から今宮に左前へ2点タイムリーを浴びた。

 ここまで2安打と好調の内川に中前打を浴びたのは想定内。だが、ランナーを出してからの投球が不安定だった。次打者の長谷川はバントの構えを見せていた。初球ファウル、強いボールなら更にファールで追い込めたはず。精度が良くなかった変化球でカウントを悪くして死球を与えた。大胆さを欠いた、内らしくない投球だった。

■気持ちで上回っていた今宮

 少なくとも長谷川の打席中か、松田を迎える時にバッテリーで意志の疎通を図る必要があった。それほど心理状態が普通ではなかったということだ。無死一、二塁となりホークスベンチは松田を呼び、話し込む場面があった。強打か、(バントで)送るのか。一瞬バントの構えを見せるも松田の立ち位置を見る限り惑わされることはなかったはず。制球の定まらない内は勝負できずに四球。それも3球連続ボールで無死満塁となる。

 さすがにここでは開き直るしかなく、福田に対しては本来の腕の振りを見せた。しかし、そこでアウトを取ったことで動いた心理が手に取るように分かった。あの場面では強い勝負心なくして切り抜けることは出来ない。この状況、流れでのカウント2-2からの(今宮に対する)一球は難しいからだ。気持ちで大きく上回っていた今宮には厳しい球ではなくなっていた。

 内はデビュー当時から注目していて故障は多いが勝てる要素が沢山詰まった投手と見ていた。今年も苦しい時にチームを支えた中心選手である。私が知る限りやられたら必ずやり返す強さを持った投手、今日こそ僅差の場面でその勇姿を期待したい。先に述べたようにビックゲームほど大胆さと繊細さが求められる。

 一方、涌井は5回2死松田、長打警戒の場面で見事な繊細さを見せた。逆にソフトバンクは6回、エラーで出塁の福田が次打者・今宮のバント構え見逃しのカウント0-1後、盗塁を試みるも捕手・田村が早めに完全な外構えで好送球し、盗塁死となる。ここはベンチとバッテリーの探り合いの場面だった。

■一つのミスが命取りに

 ホークス側は早いカウントではバント構えでの盗塁を考えていたと思う。逆にロッテサイドはその動きを読み0-1後から2-1まで横外し、ウエストで対抗しようと考えていたはず。見応えのある場面だっただけに(走者が)早く動き過ぎた捕手の構えを捉える繊細さを見せ、カウント1-1からのせめぎ合いを見たかった。

 ホームランあり、豪快な奪三振あり、また僅差であるがゆえベンチ、選手の動きから目が離せない素晴らしいゲームだった。

 挑戦者と公言する伊東監督は1点ビハインドの9回カウント2-0からスチールで抵抗した。遅かれ早かれ、初戦が終わればどちらかに王手がかかる超短期決戦初戦を取ることの重要性は言うまでもないが、清田の先頭打者ホームランにデスパイネの2本塁打、波乱の幕開けを感じさせるには十分だった。

 改めてこの舞台に相応しいチームだと感じた。一つのミスが命取りになるのは間違いなく、第1戦同様、2番手投手がポイントになるだろうが、強いプレーでファンを魅了し、一喜一憂する接戦を期待したい。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。178センチ、78キロ。右投右打。