今季のプロ野球はレギュラーシーズンが全日程を終了し、後はクライマックスシリーズと日本シリーズを残すのみとなった。11月には野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合が開催される。世界王者奪回が宿命づけられた第4回ワールド・ベースボール・クラシック…

今季のプロ野球はレギュラーシーズンが全日程を終了し、後はクライマックスシリーズと日本シリーズを残すのみとなった。

11月には野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合が開催される。世界王者奪回が宿命づけられた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向け、残された時間は少ない。侍ジャパンの選手選考も兼ねた強化試合を迎えるが、今回は内野手をテーマとし、熾烈なレギュラー争いが予想される二塁手を中心に考察してみる。

■正二塁手は山田哲人か

侍ジャパンの正二塁手といえば、もはや山田哲人(ヤクルト)というイメージが強い。プレミア12でも全試合で正二塁手で出場し、打線の中ではつなぎ役に徹した三番に座り、3位決定戦では2本塁打を放つなど一定の活躍を見せた。また、今季は日本プロ野球史上前人未踏の2年連続トリプルスリーを達成した。

しかし、正二塁手候補は山田だけではない。2015年の不振から脱却し、広島の25年ぶりの優勝に大きく貢献した球界ナンバーワンとも言われる守備力を誇る菊池涼介が存在感を発揮した。課題だった打撃も今季は成績が飛躍的に向上。山田ともどもシーズン終盤には調子を落としていたが、山田と並んで正二塁手の有力候補に返り咲いたのは間違いない。

そして、もうひとり。山田や菊池に負けずとも劣らない成績を残した大型二塁手が浅村栄斗(西武)だ。かつての打点王は今季、打撃の各部門でハイレベルな数字を残し、課題だった二塁の守備力もアップ。思い切りのいいスイングと勝負強いバッティングが魅力だ。

3選手の今季の成績は以下の通り。

山田哲人(ヤクルト)打率.304/本塁打38/打点102/盗塁30
菊池涼介(広島)打率.315/本塁打13/打点56/盗塁13
浅村栄斗(西武)打率.310/本塁打24/打点82/盗塁8

小久保裕紀監督がどういった野球を目指し、どういったオーダーを組むかにもよるが、菊池は今季、23個の犠打を決めている。山田はチームで主軸を打っている兼ね合いもあるが犠打数は0、浅村の犠打数は3。

初見の投手が相手となり、また、決勝ラウンドに勝ち進んだ場合には、米国の広い球場が舞台となり一発の計算が難しい。つまり1点を確実に取りに行く野球において、バントを得意とする菊池という選択肢も魅力的だ。また、球際の強さや送球の精度はもちろん、驚異的な守備範囲、流れるようなプレーは攻撃への良いリズムをもたらし、ゲームの流れを作るだろう。

小久保裕紀監督率いる侍ジャパン (c) Getty Images
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■内野陣に安定をもたらすベテラン

国際大会ではベテランの存在が必要不可欠だ。特に内野陣に精神的主柱となるようなベテランがひとりでもいると心強い。

このような例がある。2016年のシーズンを迎えるにあたって、それまで主に左翼を守っていた内川聖一(ソフトバンク)が一塁手にコンバートされることになり、同チームの三塁手・松田宣浩は「内川さんが内野に来てくれると心強い。声も出してくれるし、内野陣に好影響を与えると思う」と語っていた。

内川といえば第2回WBCでは打撃でも守備でも連覇に大きく貢献し、ベスト4入りの第3回WBCでも主軸を担った。常勝チームのソフトバンクではシーズンを通して四番に座り、今季も3割をマークし100打点以上を稼いだ。ケガの影響によりプレミア12への出場は辞退していたが、国際大会の経験の豊富さと驚異的な勝負強さは武器になるだろう。

また、ベテランという観点でみれば、広島のリーグ優勝に大きく貢献した新井貴浩もいる。勝負強い打撃であわや打点王になるかという活躍を見せ、チームメートの黒田博樹とともに広島を牽引した。北京五輪で四番を任された経験やWBCへの出場経験も豊富で、明るいキャラクターからムードメーカーとしての役割も担える。

正一塁手を考えれば、小久保監督のこれまでの起用法から中田翔(日本ハム)が一番手と想定されるが、打撃の好不調に波があり、プレミア12の時のような神がかった活躍ができるとは限らない。そういった意味合いからもベテランの存在は重要だ。

中田翔 (c) Getty Images
第3回WBCに内野手として招集され、当初は控え選手ながらも、第1ラウンドの台湾戦で起死回生の同点適時打を放ち、その後レギュラーとして抜擢されチームを支えた井端弘和(当時中日)の存在を思い出してほしい。ベテランの一打はチームの流れを変える。

前述した選手の今季の成績は以下の通り。

内川聖一(ソフトバンク)打率.304/本塁打18/打点106/盗塁3
新井貴浩(広島)打率.300/本塁打19/打点101/盗塁0
中田翔(日本ハム)打率.250/本塁打25/打点110/盗塁2

【次ページ スペシャリストの存在】

■スペシャリストの存在

一発勝負の続く国際大会。犠打や盗塁など、ここ一番で勝負をかけるためのスペシャリストの存在は心強い。複数のポジションをこなせるユーティリティープレイヤーの選抜も重要になる。過去でいえば、宮本慎也(元ヤクルト)や松井稼頭央(楽天)、井端あたりになるか。第2回WBCでは、代走の片岡治大(巨人)がここ一番で盗塁を決めた。

スペシャリストという観点でみれば、今季リーグ優勝を果たした日本ハムにおいて、地味ながらもそつなく仕事をこなし、チームの快進撃を陰で支えた中島卓也相応しい。今季は62個の犠打を決め、今宮健太(ソフトバンク)のパ・リーグ記録に並んだ。

犠打数は2015年の34個から約2倍。日本ハムは今季、怒涛の15連勝を記録したが、中島の連勝中の犠打数は8。得点圏に走者を進める中島の働きは、連勝の大きな原動力となっていた。また、2015年は盗塁王を獲得しており、今季の盗塁も23個。足が使えるという点も大きな魅力だ。

ちなみに中島は2014年には二塁手として、2015年と今季は遊撃手として、規定試合数に到達しており、スローイングの正確性にも定評がある。また、三塁手としての経験も持ち併せており、チームにいれば非常に心強い存在となるだろう。プレミア12でも代表メンバー入りしていたが、今季の活躍を見れば、再び選ばれる可能性は十分にある。

WBCでの世界王者奪回は至上命題。ハイレベルな正二塁手争いはもちろん、6~8名の登録が想定される内野陣をどういった陣容でかためるのか。経験豊かなベテランが入り込むのか、スペシャリストと呼べる選手は選出されるのか。小久保監督率いる首脳陣の戦術と、それに基づいた選手選考に注目していきたい。

菊池涼介(2014年11月18日)(c) Getty Images

菊池涼介(2014年11月18日)(c) Getty Images

中田翔 参考画像(2015年11月21日)(c) Getty Images

中田翔 参考画像(2015年11月21日)(c) Getty Images

内川聖一 参考画像(2014年11月12日)(c) Getty Images

内川聖一 参考画像(2014年11月12日)(c) Getty Images

侍ジャパンの小久保裕紀監督 参考画像(2015年11月21日)(c) Getty Images

侍ジャパンの小久保裕紀監督 参考画像(2015年11月21日)(c) Getty Images