東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は4日目、ドローのボトムハーフのシングルス2回戦と、ダ…

 東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は4日目、ドローのボトムハーフのシングルス2回戦と、ダブルスの準々決勝2試合が行われた。

 第2シードのガエル・モンフィス(フランス)はジル・シモン(フランス)との同国同世代対決を6-1 6-4で制し、第6シードのニック・キリオス(オーストラリア)は、対戦するはずだった予選上がりのラデク・ステパネク(チェコ)が背中のケガで棄権したため不戦勝。第7シードのイボ・カルロビッチ(クロアチア)はツアー一の長身(2m11cm)を生かしたサービス力で、復活途上にある元世界8位のヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア)を7-6(9) 7-6(5)で退けた。

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 30歳のモンフィスと31歳シモンの過去の対戦成績は、シモンの6勝1敗。ジュニア時代の実績は比べ物にならないほどまさっていたモンフィスが、プロになってからはこの華奢なシモンに一方的にやられていた。そんな対戦成績が信じられないような、モンフィスの圧倒的な優勢で進んだ第1セットだった。粘りのシモンに付き合わず、先に攻めきる強気の姿勢が奏功。2度のブレークでセットを先取した。

 しかし第2セットは、なぜ対戦成績でシモンが大きく勝ち越していたのか納得できる展開に。モンフィスが躍起になって攻めるが、ディフェンス力の高いシモンがそれをしぶとく返し続ける。防御のショットはなかなか甘くならず、最後はモンフィスがミスという自滅パターンだ。

 そこへきて、第2ゲームをブレークしたシモンの4-1で迎えた第6ゲームで、モンフィスが左足首を痛めるアクシデント。正確には「痛めたかどうか、検査をしないとわからない」という状態で、ゲーム途中ではあったが、一度ベンチに戻り、トレーナーを呼んでチェックを受けた。メディカルタイムはとらずにプレーを再開したところを見ると、トレーナーの所見で大きな問題はなかったのだろう。

 それにしても、試合の流れは何をきっかけに変わるかわからない。モンフィスのサービスゲーム、40-30での中断だったが、まずはエースを一発決めて難なくそのゲームをキープ。その後のモンフィスの動きは悪くなるどころか、第1セットの優勢を取り戻していった。

 「我慢強くプレーすることと、相手にプレッシャーをかけること、両方のバランスを考えてプレーした」

 フォアハンドのウィナーにボレーにエースと、アグレッシブなプレーでシモンの鉄壁を崩し、結局、中断以降は1ゲームも与えず6-4で試合を締めくくった。

 過去の対戦とは異なる結果に、「今回は何が違ったのか」「何を変えたのか」という質問は記者会見で付きものだ。モンフィスは大きな目を見開きながら、「シンプルに、僕が強くなっているということだと思う」とフランス人らしい柔らかな口調で答えた。

 では、強くなったのはフィジカルなのか、戦術なのか、メンタルなのか------。「その全部です」

 背景には、今年からコーチにつけたスウェーデンの元ツアープロ、ミカエル・ティルストロームをはじめとした、チームの存在がある。今季はモンテカルロ・マスターズで準優勝、全米オープンでベスト4、ワシントンで『ATP500』以上の大会での初優勝などの結果を出してきた。しかし、強化の具体的な内容については、一切語らない。

 そんな堅いことは抜きにしようよと言わんばかりだ。天性のショーマンと呼ばれるモンフィスは、これまでの経緯を言葉で表現する代わりに、明日もコート上のパフォーマンスで〈今〉を存分に見せてくれるに違いない。 (テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)