東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は3日目、シングルス1回戦の残り1試合および2回戦、ダ…

 東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は3日目、シングルス1回戦の残り1試合および2回戦、ダブルス1回戦と準々決勝1試合が行われた。

 日本勢では単複を通して唯一1回戦を突破した錦織圭(日清食品)が、世界ランキング34位のジョアン・ソウザ(ポルトガル)との2回戦を第1セット第8ゲームの途中で棄権。第3ゲームで痛めた臀部が原因だった。今後のスケジュールは検査の結果次第ということになる。

 なお、そのほかのシード勢は、第4シードのマリン・チリッチ(クロアチア)がフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に4-6 7-5 7-5で逆転勝ちし、第5シードのダビド・ゴファン(ベルギー)はイリ・ベセリ(チェコ)を6-3 7-5で退けたが、第3シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)は6-7(7) 1-6で初戦敗退を喫した。

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 思いがけない幕切れだった。「自分でも信じられないし、まだ受け止められていない」という錦織本人の言葉が、突然暗転した状況、会場のムードをもっともよく表していた。

 試合前から不安を抱えていたわけではなく、立ち上がりも絶好調。錦織らしい躍動感が漲っていた。ソウザはしぶといストローカーで、簡単にはポイントが決まらないが、錦織はより厳しいコース、より速いショットで同年代のソウザを追い詰め、一方的にゲームを重ねていた。

 「あんなに出足がいいこともほとんどない」というほどのスタートだっただけに、飛ばしすぎたのかもしれないが、それも結果論だろう。第3ゲームで2度目のブレークをしたあとのエンドチェンジでトレーナーが錦織のベンチに向かった光景は、すぐには信じられないほどだった。

 「急に痛みがきた」のは直前のゲームの最後のポイントだったというのだから無理もない。メディカルタイムを制限いっぱいに使って腰のマッサージなど治療を施したが、それ以降の動きの鈍化は誰の目にも明らかだった。

 第4ゲームこそ2つのダブルフォールトをおかしながらもなんとかキープしたが、第5ゲームはラブゲームでのキープを許し、第6ゲームは最後のポイントをダブルフォールトで失った。難しいボールに対するあきらめが早くなり、第7ゲームでソウザが2本のエースを決めてキープ。続く第8ゲームの15-30で棄権を決断した。

 これまで様々なケガを経験してきた錦織だが、今回の部位に関しては「こんなに痛くなるのは初めて」だったという。痛みそのものに加え、不安が錦織を襲った。来週は上海マスターズ、来月にはパリ・マスターズ、そして出場がほぼ確実なツアー・ファイナルズと、シーズンは終盤とはいえ大事な大会がまだまだ残っている。

 しかし、ホームのこの大会がそうしたビッグイベントに匹敵するくらい大切な大会であったことも事実だ。

 「大事なジャパンオープンでリタイアという最悪の結果になってしまった。申し訳ないし、いろんな気持ちがある」

 デビスカップのあとはしっかり休息をとりながら、理想的なトレーニングができていたという。周囲からの期待も、自分自身の期待も、万全の準備も自信も、こんなふうに裏目に出ることがある。その原因を探ることすらあまりに酷な、突然のアクシデントだった。 (テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)