文 SPOZIUM編集部出典:SPOZIUM 2015年6月17日(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)なでしこジャパンが3連勝で決勝トーナメント進出を決め、徐々に4年前の歓喜の初優勝の記憶が蘇りつつあるFIFA…

文 SPOZIUM編集部

出典:SPOZIUM 2015年6月17日

(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

なでしこジャパンが3連勝で決勝トーナメント進出を決め、徐々に4年前の歓喜の初優勝の記憶が蘇りつつあるFIFA女子ワールドカップ。昨年のFIFA男子ワールドカップに続き、公式動画配信プラットフォーム「Legends Stadium」が、ほぼリアルタイムに近いタイミングでハイライト動画を提供している。スマホで、タブレットで、パソコンで、いつでもどこでもユーザーが見たい時にワールドカップの最新映像やニュースを楽しむことができる。今回は、この「Legends Stadium」の仕掛人である、プレゼントキャストの須賀社長、奥江氏に立ち上げのきっかけや、今後の展望について語っていただいた。

Q:プレゼントキャストは、どのような仕事をしている会社か?

インターネットの発達に伴い、テレビに視聴環境が大きく変わろうとしている中で、テレビというものをより多くの人たちに、楽しんでもらう、役立ててもらうために、テレビ局5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)と 広告会社4社(電通、博報堂DYMP、ADK、東急エージェンシー)の9社で、2006年に立ち上げた会社です。

テレビ情報ポータルサイト『テレビドガッチ』を立ち上げ、2006年のFIFAワールドカップドイツ大会を皮切りに、オリンピック、世界陸上、世界水泳、ワールド・ベースボール・クラシック、サッカー日本代表戦など、各テレビ局と連携し、スポーツコンテンツのハイライト動画も数多く配信してきました。

オリンピックに関しては、2008年の北京オリンピックから、民放の共同サイト『gorin.jp』の制作と運用に関わっており、ここでの取組みは今回の『Legends Stadium』を始め、この数年、僕たちが関わっているスポーツコンテンツのインターネット配信のベースになっています。

Q:「Legends Stadium」を始めたきっかけは?

2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会での取組みは、ただハイライト動画を配信するだけ、という単純なものでしたが、2014年ブラジル大会で、FIFAが本格的にデジタル配信用に動画パッケージを強化してきた、というのが、非常に大きな違いで、もう少し新しい枠組で取り組もうということになりました。

オリンピックにおいても同様の傾向があり、2010年バンクーバー五輪あたりまでは、とにかく動画を見せる、ということが、全面に出ていたと思います。しかし、2012年ロンドン五輪、2014年ワールドカップブラジル大会あたりから、動画の見せ方が変わってきました。もちろん、動画というものは非常に大きな価値を持っているのですが、スポーツを見たい人達は必ずしも動画だけを見たいわけではないというのが見えてきたように感じます。ニュース、スタッツデータ、コラムをどうやって揃えていくのか?それをどうやって動画と絡めて見せていくのか、というのがカギになってきています。

また、サッカーの場合、ワールドカップの度に日本国内のサッカーファンが形成され、どんどん裾野が広がっていくのが実感できた、つまり、日本の中でサッカーファンが根付いている状況が見えてきていました。そこで、彼らが1日24時間というサイクルの中で、テレビ放送のない時間帯にもワールドカップというコンテンツに触れることが出来るような、そして、長期的な時間軸で言うと、4年というワールドカップの周期の中で常に楽しめるようなサッカーの常設サイトを作りたい、という想いのもと、この「Legends Stadium」が立ち上がりました。

Q:初期「Legends Stadium」での成功体験と反省点

やはり、ただ動画を見せるだけではなく、ニュース、スタッツを絡めて総合的にどのように見せていくか、ということにチャレンジできたのが、非常に大きな成功体験でした。また、プレゼントキャストがこれまで関わった動画配信の中で、初めて試合放送中に二アライブで動画を公開しました。つい先ほどテレビの中継で見たシーンが、わずか数分後にインターネットで再確認できる、という機能です。ここは、もしかすると、テキストだけの配信でもよかったのかもしれませんが、テレビで見ながらもう一度見たいというユーザーや、テレビを見る環境にいないユーザーからすると、非常に便利な機能だったのでは、と思います。

その一方で、どんな素材が揃うのか?UIも含めどんなサービスになるのか?という予測が出来ない中で制作を進めなければならなかったので、そういう意味では、もっとUIをこうすればよかった、といった反省点はありますが、とにかく、もがきながらもチャレンジできてよかったと思います。

Q:今回の「Legends Stadium」での新しい機能は?取組みは?

前回の反省点を活かして、サービスの完成度はかなり高い物になっています。大きな改善点は三つ。まず一つ目は、マルチアングルの部分です。前回も色々なアングルで見られるということ自体は画期的だったのですが、今回はそのアングルがどのカメラ位置からの映像かがわかるようなビジュアルに設計しています。

二つ目は、コラムの部分です。動画は我々の大きな武器ではあるのですが、前回やってみて動画の拡散能力の限界を感じました。どうすればユーザーはこの動画を見たくなるのか?ということを追求し、彼らのインサイトをついたコラムを付与し、そのタイミングや出し方を工夫することで、拡散能力を引き上げることに挑戦しています。

そして、三つ目は、PRの部分です。前回はテレビのCM告知に頼っている部分が大きく、ネットに関しては、外部のメディアに記事を書いてもらってユーザーを獲得していました。しかし、今回は、チーム内にライターを入れ、オリジナルの記事を作成し、キュレーションメディアやレコメンドエンジンに記事をばらまき、その記事自体を流入の核とする、という作戦を取っていて、常に1万人ほどのユーザーがサービス体験をしているところからも、CMよりネットで獲得したユーザーの方が、圧倒的に定着率が高いような印象を持っています。また、ヤフー、スポナビとの連携も大きな役割を果たしています。日本のスポーツサイトの中で断トツのトラフィックを誇る彼らと連携することで、多くのユーザー獲得に繋がっていて、大会開始4日目の時点で、前回のUU数を遥かに上回る数値をたたき出しています。

Q:放送局はネットでの動画配信がテレビ視聴率の低下を招くと思っているか?

ここ最近、放送局でそのような印象を持っている人は、もうほとんどいないのではないでしょうか。むしろ、スポーツに関しては、短期間で開催される大会やイベントを、いかに話題にして、認知を一気に高めるかというのが課題になってきていると思います。

そういった意味では、動画や記事をできるだけ多く配信し、SNSなどで話題にしてもらうことがとても重要になり、ネットはその一助を担っていると感じます。ネット上での動画や記事と出会いがきっかけとなり、その結果、ライブで試合を楽しみたいということに繋がっている実感はあります。

オリンピックやワールドカップに限らず、放送局が取り組んでいるスポーツコンテンツでは、こういった取組みが非常に重要ですし、また、大会終了後の期間においても、コラム等のレギュラーコンテンツを用意し、ユーザーを定常的に引き留めて次の大会への興味喚起に繋げることも重要なのではないか、と思っています。

Q:今後、長期的に「Legends Stadium」をどうしていきたいか?

インターネットが発達した現在において、当初思い描いていたサービスの理想型を突き詰めていきたいと思います。具体的に言うと、94年大会のロベルトバッジオがPKを外したシーンを見たい、自分の生まれた◯◯年大会の優勝の瞬間を見たいといったユーザーのニーズに応えることが出来ているのは残念ながら違法サイトのみという現状ですが、こうしたニーズにオフィシャルに応えることのできるサイトにしていきたい、と思っています。

そして、この活動をワールドカップに限定するのではなく、サッカー日本代表との取組みとしても拡げていきたいと思っています。その第一弾として、先日行われた6月11日のキリンチャレンジカップイラク戦や、本日行われる男子ワールドカップアジア2次予選のハイライト動画もこの「Legends Stadium」で配信します。サッカーファンが、1日24時間の中でいつでもどこでもサッカーコンテンツに触れていられる、という状況を作ることで、サッカー観戦文化を作っていきたいと思っています。