プロ野球はレギュラーシーズンの戦いが終わり、今年もクライマックスシリーズ(CS)が間もなく開催される。セ・リーグのファーストステージは、10月8日に東京ドームで2位巨人と3位DeNAが対戦。パ・リーグは同にヤフオクドームで2位ソフトバンクと…

プロ野球はレギュラーシーズンの戦いが終わり、今年もクライマックスシリーズ(CS)が間もなく開催される。

セ・リーグのファーストステージは、10月8日に東京ドームで2位巨人と3位DeNAが対戦。パ・リーグは同にヤフオクドームで2位ソフトバンクと3位ロッテの対戦し、それぞれ開幕する。

そのファーストステージを勝ち抜いたセ・パ両チームが10月12日から始まるファイナルステージで、各リーグのチャンピオンと日本シリーズ出場権をかけて雌雄を決する。

CSの醍醐味といえば、下位のチームでも日本一のチャンスを秘めている、いわば「下剋上」だ。

今回は下剋上という観点からCSについて考察してみる。

■初出場のDeNA、CS常連の巨人に挑む

今年最大の注目といえば、球団史上初のCS進出を果たしたDeNAだ。特に、本塁打と打点で二冠を達成し、侍ジャパンでも4番の有力候補と目される主砲・筒香嘉智の存在はとてつもなく大きい。

プロ野球史上初の3試合連続マルチ本塁打を記録するなど、当たり出したら止められない。筒香だけでなく、シーズン終盤で驚異的な活躍を見せたロペスもいる。特に決戦の場となるのが狭い東京ドームであることも、巨人バッテリーを悩ませることになりそうだ。

ちなみに今季の巨人とDeNAの対戦成績は14勝10敗1分け。DeNAが勝ち越している上、直近の試合で巨人に6連勝を挙げている。その上、2位のチームと比べて3位のチームにはプレッシャーがかからない。失うものが何もないからだ。

巨人にとって唯一の好材料は、東京ドームでの対戦が6勝3敗1分けと勝ち越していることになるか。

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■優勝チームの壁は厚い

過去のCSの歴史を振り返ると、リーグ優勝を果たしたチームがCSを制して日本シリーズへ進出する確率が高く、「下剋上」と言葉にするのは簡単だが、現実は厳しい。これは両リーグを通じて言えることである。

パ・リーグでは、2004年からプレーオフ制度がセ・リーグに先駆けて導入された。これが興行的に成功を収めたこともあり、セ・リーグでも導入に対する待望論が巻き起こった。そして2007年から両リーグでCSが始まった。

下剋上が果たされた年を振り返ってみると、パ・リーグでは2004年にシーズン2位だった西武が日本シリーズへ進出。続く2005年にはシーズン2位だったロッテが同シリーズへ駒を進めた。

2010年にロッテがCS史上初めて、3位から同シリーズへの進出を決めた。これ以外の9シーズンはリーグ優勝を果たしたチームがそのままCSを勝ち抜いている。セ・リーグでも9シーズン中7シーズンはリーグ優勝したチームがCSを勝ち抜き、下剋上を果たしたのは2007年シーズン2位だった中日と、2014年シーズン2位だった阪神のみだ。

今年のセ・リーグを制した広島は、2位の巨人に17.5ゲーム差をつけ、圧倒的な強さを見せつけた。チーム得点力、本塁打、盗塁、打率といったオフェンス面および、失点、防御率といったディフェンス面を含めた全てで他チームより頭ひとつ抜けている。

シーズン終盤に疲れも影響してか、菊池涼介や新井貴浩をはじめ、主力の打撃に陰りが見えたのは気がかりだが、真っ赤に染まるだろうマツダスタジアムの大観衆をバックに息を吹き返すに違いない。

しかし、懸念点もある。広島は対巨人戦を13勝12敗と勝ち越し、対DeNA戦も13勝12敗と勝ち越しているが、数字だけをみればほぼ互角。巨人にもDeNAにも、広島に対する苦手意識はないのではないか。

一方、パ・リーグに目を向ければ、リーグ優勝した日本ハムは2位ソフトバンク戦を15勝9敗と大きく勝ち越し、直近の試合を3連勝している。また、3位ロッテ戦も15勝9敗と勝ち越し。さらに直近の試合では、引き分けを挟んで7連勝を飾っている。日本ハムには、大谷翔平という絶対的な柱がいることもアドバンテージになる。

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■ロッテが果たした「史上最大の下剋上」
「下剋上」を体現し、「下剋上」という言葉を定着させたのが、2010年のロッテの快進撃であることは周知の事実。

この年、シーズン3位だったロッテはファーストステージで西武と対戦。初戦を1-5と4点ビハインドで迎えた9回表、奇跡を起こした。西武のリリーフ陣を攻め立てて1死満塁の好機を作ると、そこから里崎智也らの適時打など打線がつながり一挙に同点。勢いづいたロッテは延長11回表、福浦和也が値千金のソロ本塁打を放って勝ち越しに成功した。第2戦も終盤まで西武にリードされる苦しい展開となるも、再び9回表に里崎が同点弾を放って延長戦へ。最後は井口資仁の適時打で勝ち越してファーストステージを勝ち抜いた。

この神がかった勢いはソフトバンクとのファイナルステージでも続く。1勝3敗とソフトバンクに王手をかけられながらも、そこから怒涛の反撃。当時エースの成瀬善久や渡辺俊介が快投を見せ、ルーキーだった清田育宏らが貴重な一発を放つなど投打がかみ合い、CSを大逆転で制覇した。

この時、ロッテが果たした「史上最大の下剋上」こそ、CSの醍醐味だ。こうした勢いは、圧倒的なアウェーの雰囲気をも凌駕する。上位チームの壁は確かに厚いが、何が起こるか分からないのが短期決戦。

シーズンの最後で日本ハムにかわされて涙をのんだソフトバンクがリベンジを果たす可能性も大いにあるし、上位2チームに大差をつけられたロッテにも一発逆転のチャンスはある。今年のCSも数々の名勝負に期待したい。

横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督 参考画像(2015年10月21日)撮影:五味渕秀行

横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督 参考画像(2015年10月21日)撮影:五味渕秀行

横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手 参考画像

横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手 参考画像

大谷翔平 参考画像(2015年3月21日)(c) Getty Images

大谷翔平 参考画像(2015年3月21日)(c) Getty Images

坂本勇人 参考画像(2014年11月11日)(c)Getty Images

坂本勇人 参考画像(2014年11月11日)(c)Getty Images