文 SPOZIUM編集部出典:SPOZIUM 2015年4月10日(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)昨今の未就学児向けの習い事ランキングではリトミック、体操、水泳、ダンスなど、運動やスポーツに関する習い事が上…
文 SPOZIUM編集部
出典:SPOZIUM 2015年4月10日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
昨今の未就学児向けの習い事ランキングではリトミック、体操、水泳、ダンスなど、運動やスポーツに関する習い事が上位に並んでおり、子供向けスポーツ教育サービスの市場規模は4,600億円弱で右肩上がりの市場であるとも予想されている。その中で教育・出版事業大手の学研が“子どもたちの運動神経を育てる”をコンセプトに、プロトレーナーと開発したオリジナルの運動プログラムを提供する「リトルアスリートクラブ(LAC)」という幼児運動事業を新たに立ち上げた。いわゆるエリートの養成でなく、“運動・スポーツを好きになってもらい、何でも前向きに頑張ることができる子”をたくさん増やすことがこの事業の目標だ。すでに港区三田のプリスクール+アフタースクール「クランテテ三田」にこのプログラムが導入されており、続々と入会者を増やしている。この4月からは東京ドームシティのスポドリ!での開催から関東一円に展開を始める。
本事業の仕掛人である(株)学研パブリッシング コンテンツ事業推進部の宮本光広氏に立ち上げの背景やその想いを語っていただいた。
学研は教育関係の出版社というイメージだが、今回のリトルアスリートクラブという事業を始めたきっかけは何か?
当社は教育系出版社で紙媒体中心に事業に取り組んできましたが、昨今は紙だけではなかなかビジネスが難しくなってきています。そこで社としては紙プラスワンで、紙と何かを組み合わせたビジネスを考えていこうという話が進んでいました。一方で「知・徳・体」の教育の三要素を考えたときに、当社では「知」や「徳」の分野はすでに多くの事業があるものの、「体」に関連する柱となる事業がない状況でした。「体」における紙の部分については保健体育の教科書で当社が全国のシェアをほぼ全ておさえていますが、紙プラスワンのリアルの事業は行なっていませんでした。そこで「体」の分野でリアルの事業を考えていく中でリトルアスリートクラブの構想が生まれました。私自身がもともとスポーツ関係に多くの人脈を持っていたということもあります。
現在の少子化の流れにおいて子ども向けのサービスを行なうことに対してどのように考えているか?
確かに近年は少子高齢化が進み高齢者向けのサービスを拡充する企業さんが多く、当社内でもそのようなサービスを行なっています。ただやはり「学研ブランド」としてはこれまでも未来を担っていく子どもたちを育てるところに力を入れてきていますし、本プロジェクトでは運動を通じてそれを実現していきたいと考えています。
我々が子どもの頃は日常的に野山を駆け回って遊んでいたので自然と運動をしていましたが、今の子どもたちには残念ながらその環境がない場合が多いです。我々はオリンピック選手を育てることが目標ではなく、運動嫌いな子をつくりたくない、少しでも運動を好きな子どもを増やしたい、子どもたちが運動を楽しめる環境をつくりたい、そう考えています。
運動をする機会や場所が少なくなってしまったことで、従来は高齢者の間に見られたロコモティブシンドローム(運動器症候群)のリスクを抱える子どもたちの数も増えています。また、いわゆる“運動オンチ”は遺伝すると勘違いされ、「うちの子もどうせ・・・」と子どもに運動をさせない、運動のさせ方がわからない、というお母さんたちもたくさんいらっしゃいます。このような子どもたちに関わる社会課題に応えるのが学研の使命でもあると考えています。
子どもの人数は減っていくかもしれませんが、だからといって子ども向けのサービスをおろそかにしていいはずがありません。もちろんビジネスとして行いますが、子どもたちが喜んでくれるサービスをつくっていくことを第一に考えています。
リトルアスリートクラブを通じて子どもたちにどういった環境をつくりたいと考えているか?
スポーツというものに興味がない子どもが増えているように思いますが、それはとても残念なことだと思っています。私自身はスポーツが好きなので自分の子どもにもいろいろなスポーツを強く勧めたところ、逆にスポーツに苦手意識をもつようになってしまってとても反省したという経験があります。ですから本プロジェクトでも子どもたちの指導にあたるトレーナーたちにはまず子どもたちが「ここにくるのが楽しい!」と思うような環境をつくってほしいと話しています。楽しく続けていれば技術は後からでもついてきますが、運動が嫌いになってしまってはそこで止まってしまいますので。まずは運動やスポーツを好きだと思う子どもたちが増えてほしいです。
当社はこれまで主に教科書や参考書をつくってきましたが、教えるということにおいてはまず何よりも基礎が大事であると考えています。勉強に限らず運動も同じで、まずは基礎の部分=カラダを動かすことは楽しいということを教えていくことができればと考えています。このことを大事にして本プロジェクトを進めていますが、やはり運動を楽しむ機会を提供させていただくことに対してお客様にもご満足をいただいていると感じています。運動をしているお子さんも笑顔ですし、そのお子さんが運動される姿を見たお父様やお母様も笑顔になってお帰りになられます。
リトルアスリートクラブをどのくらいの規模にしていきたいと考えているか?
ゆくゆくは全国の子どもたちに参加してもらえるようにしたいと考えていますが、まずは関東近郊に注力していきます。現在、B to Bとしては幼稚園や保育園、大手学習塾とお話をしています。特に学習塾においては市進教育グループと協力し、同社が展開されている「桐杏学園」の小学校受験コースの中にこのプログラムを入れて一緒にやっていきましょうという検討を進めていて、一部はこの4月からスタートします。またB to Cとしては東京ドームシティのスポドリ!でリトルアスリートクラブを実施します。
運動をする機会も場所もなく従来お年寄りに多いロコモティブシンドロームになる子供が増えている、また親の運動神経の悪さが子に遺伝すると思い悩んでいるお母様が多い、などの問題意識のもと、遠山トレーナーと身体全体を使うプログラムを開発してきました。このような問題を解決すべく、より多くの方に参加していただけたらと思います。今はまだ関東近郊のみですが、今後その他の地域にも展開していきたいと考えています。
長期的にはこのビジネスをどのように展開していきたいと考えているか?
将来は必ず海外展開していきたいと考えています。具体的にはアジアの中でもまずはマーケットの大きさ、教育熱の高さ、スポーツ熱の高さ、当社の事業所があることなどからマレーシアを想定しています。また、すでにオファーをいただいている国もあります。
2020年の東京オリンピックのムーブメントをどのように活用していこうと考えているか?
オリンピックを活用するというより、その盛り上がりのムーブメントをつくり出すスポーツが好きな子どもたちを輩出していきたいと考えています。当社はオリンピックにスポンサーとして直接は関わっていませんが、リトルアスリートクラブの在校生やその頃には小学生になっている卒業生がオリンピックに積極的に関わるようになってほしいと思っています。テレビで見るだけではなく、沿道から旗をふったり、実際に会場に応援に行ったりしてほしいですね。“スポーツが好き”、いうことがよりオリンピックに積極的に関わろうとする原動力になるのではないでしょうか。リトルアスリートクラブはオリンピック選手を輩出することを目標にしたプロジェクトではありませんが、運動やスポーツが好きという子どもたちを増やすことで、オリンピックの盛り上げにも貢献していきたいと考えています。